Technology: 2004年1月アーカイブ
明日のイベントで松下電器産業様からお借りした電子書籍端末のシグマブックが、オフィスに届きました。発売は2月20日。価格は37,900円とのことです。詳しくは、次のニュースが詳しいです。オフィシャルサイトではマルチメディア、3D技術を駆使したデモがあります。
・松下、電子ブック「ΣBook」を書店・ネットで発売
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2004/01/29/1921.html
・ΣBook(シグマブック)
http://www.sigmabook.jp/
早速、説明書を熟読。仕様は以下の通り。煙草の箱を横に置いて実物を写真に収めました。予想よりずっと、小さいです。
仕様:
液晶:7.2インチ液晶*2
1074ドット*768(XGA) 16階調グレースケール
開けた時の寸法:292 * 205 * 12.7 mm
閉じた時の寸法:154.5 * 205 * 25.4mm
重量:520グラム
特筆すべきは記録型液晶です。電源が切れても表示が残る液晶技術を使って、乾電池2本で3ヶ月も使えるのです。
肝心のコンテンツですが、上記のインプレスの報道によると、
「
同社が運営する「ΣBookサイト」「10DaysBook」で購入できる。当初のラインナップは、マンガ、小説、ビジネス書、実用書を中心に5,000点が用意され、書店店頭でコンテンツ購入が可能になるダウンロード端末の設置も検討されている
」
とのことでいきなり5000冊はすごいですね。
デモ機には、マンガや小説、地図と活用法の書が7冊入っています。
・サイボーグ009
・シティマップる
・1ダースチルドレン
・なつ祭り
・我輩は猫である
・黒
・ΣBookで行こう
インタフェースはシンプルさが気に入りました。モードが書籍を選択する「書棚」と、書籍を読む「書誌」の二つしかありませんが、これで十分です。開発コンセプトの明確さが伝わってきました。
1日使って、満足と不満のポイントを並べてみました。
【満足】
・見開き型ということで手にしっくりくる
・電池が3ヶ月切れない安心感
・絞り込まれたシンプルインタフェースは迷わず使える
・それほど重くない(調べてみましたがハードカバーの厚い本は500グラムを超えます。シグマブックならば500グラムで数十冊を持ち歩ける)
・質感。冷たくなく、スウェードのような表面の手触りは好感
【不満】
・期待していた検索機能がない(コンテンツを画像として扱うため)
・液晶コントラストが不明瞭
液晶については、やはり白は白、黒は黒ではっきりと表示されるといいと思いました。でも、これは技術革新ですぐに実現して、2,3年後にはカラー化されてしまうかもしれません。期待して待ちましょう。検索については規格のもとづくものですがユーザニーズは大きいですから、何らかの形で対応してくれることを望みます。
個人的にはこの端末、発売後に買ってしまうかもしれません。もし自分の作成したテキストを持ち歩けるユーティリティソフトがあれば、間違いなく買いです。
ソニーも対抗馬を準備しているようですから、かつてのVHS対ベータ規格のような熱い業界戦争が繰り広げられるのでしょうか。今年の後半が楽しみです。果たして今年は、電子書籍元年と呼ばれることができるでしょうか?
今、私は学生向けプログラミングコンテストのアイデアを考えて、と言われている。ThinkQuest、ロボコンや鳥人コンテストみたいに、成功するコンテストってなんだろう?。参加ハードルが低くて、知的好奇心を刺激され、工夫次第で無限の可能性があるもの。
1998年にビデオジャーナリストの神田さんと一緒に取材した「猿岩石」企画で、米国マクロメディア本社を訪問したときに、階段が巨大滑り台になっていたり、サッカーのゴールポストが室内にあったりしたことに驚いた。発想を刺激するインテリアがあちこちに。でも、一番クリエイティブな印象だったのは、壁一面に張り出された折れ線グラフ。プログラムのソースのサイズが、開発努力によってどんどん小さくなっていく図だった。(開発の世界では、同じことをするプログラムならばサイズが小さい方が良いとするのが一般的)。
・1998年 インターネット猿岩石(マクロメディアのレポート含む)
http://www.gabby.net/expo/us-venture98/index.html
二人で米国シリコンバレー、アレイを突撃取材した記録。ネットバブル真っ只中の雰囲気。
私の文体も恥ずかしいほどノリノリ。若かった。
(妙な英語版があるのは旅行中、米国のPCショップFry'sで何十ヶ国語を翻訳できるという怪しい翻訳ソフトを見つけて買い込み、それを使ってでっちあげたもの、だったと思う。)
■富豪的プログラミング
搭載メモリの量が多くなって以来、小さくコードを書くことの重要性は薄れてきた。逆に大きくても良いから、開発者が読みやすく、保守しやすいものを大切にする文化もある。典型的なのは、著名な研究者の増井俊之氏が提唱する富豪的プログラミングである。
・富豪的プログラミング
http://pitecan.com/fugo.html
増井俊之氏 (富豪化理論研究家) による解説。
「
・メモリや実行効率を気にしないでお気楽にプログラムを作る
効率を重視したプログラムは作るのが大変ですし、ちゃんと動かすにはデバッグも大変です。富豪的プログラミングでは一番単純で短いアルゴリズムを使います。
・条件が変わる度にすべての計算や表示を行なう
再表示が必要な場所だけ書き直ししたり、出力のバッファリングをしたりする貧乏性な工夫はバグのもとになるので行なわず、条件が変わる度に計算を再実行したり全体を書き直したりします。
」
コンポーネントプログラミングだとか、オブジェクト指向と言われる最近の開発ポリシーは、どちらかというと、富豪的アプローチな部分もある。どちらが効率が良いかは一概には言えない。アルゴリズムの研究を読んでいると、どうやらプログラムの効率には3つの考え方がある。
プログラムの3つの効率
1 速度効率
高速に動作するプログラムほど効率が高い
2 メモリ効率
使うメモリが少ないほど効率が高い
3 開発効率
コードの読みやすさや保守しやすさが高いほど効率が高い
小さなプログラムは、上記3つの効率のうち、1と2を満たすことが多い。小さくする価値はある。
■小さなプログラムへの挑戦
自然言語で複雑な説明を書くときと一緒で、コードも短く書く方が一般的には難しく高度である。富豪的な時代になっても、世界中に小さなプログラムへの挑戦者たちがいる。
・256b.htm Competition
http://wildmag.de/compo/
256バイトのHTML(含むJavaScript、CSS、GIF)でどこまで面白いWebページが作れるかのコンテスト。動く、動く。
・web4096
http://www.message.sk/web4096/index.html
4096バイトでのHTML、Flash、Javaアプレットのチャレンジ。
・The5K
http://www.the5k.org/
5キロバイトでのチャレンジ。
・THE 1KB 6502 PROGRAMMING CONTEST
http://oric.ifrance.com/oric/microtan/6502contest.html
1980年の古いPC(メモリ1キロバイト)で動作するプログラムのコンテストが第8回。
・7行プログラミング作品集
http://www.isl.cs.gunma-u.ac.jp/~shingo/make/7line/7line.html
7行のJavaScriptでテトリスやぷよぷよができるなんて!。
小さいという意味が異なるがこんなものもある。
・4th BUTE International 24-hour Programming Contest
http://www.challenge24.org/main.php?main=
24時間で与えられたテーマのプログラムを開発する国際コンテスト。時間のスケールが小さい。
・Guimp
http://www.guimp.com/
物理的に世界一(タテヨコ)サイズの小さいWebサイト。ちゃんと表紙、ブログ、ゲームなどのコンテンツがある。入り口でFlash版とHTML版が選べる。
オリジナル
4倍で拡大
フラッシュでパックマンが動く!。
・パックマン
http://www.guimp.com/pacman_flash.html
オリジナル
4倍で拡大
参考URL:
「対になる世界一、日本一」
http://www.hatena.ne.jp/1065668104
「例えば、【世界一高い山】【世界一低い山】というように、コメント欄に両データを「併記」する形でご紹介ください。最高・最低、最長・最短、最多・最少、最大・最小などなど、ジャンルは問いませんから、できるだけたくさん、必ず併記でお願いします。」面白い!
・kisrael.com | gamebutton arcade
http://kisrael.com/features/gb.htmlテーマはずれますがWebフォームのボタン上で動く小さなゲーム。発想がユニーク。
■脳には生まれつき顔を認知する機能がある
プロデューサのW氏と仕事の打ち合わせ。アイデアマンのW氏は話題が豊富。いつも必要なことを決めてしまうと、後は話題は脱線して、延々と話してしまう。私とW氏は過去に24時間不眠休憩なしでぶっつづけの企画会議をやった過去がある。話は尽きない。この人とは雑談から生まれたアイデアが仕事になってきた過去もあり、今日も気合をいれて雑談する。
彼の会社はビデオカメラで顔のパーツの配置を機械的に読み取り、似顔絵を描く技術や、顔写真にお化粧を施すリアルタイム合成技術を企画開発していたりする。名刺と名前が一致しないという話題から、顔にまつわる話になった。ちょうど私も人間の顔について考えていたのだ。
私は記憶力があまり良くない。特に顔は苦手で、パーティなどで会った人、過去の取引先の担当者の顔を忘れる。こちらは分からないのに、相手は分かっている。この非対称な関係はビジネス上で、それだけで大変弱い立場に立たされてしまう。名刺など差し出そうものなら「あれ?何か変わられましたか?」と返されて、深手を負うこと間違いなし。
昔読んだ記事に、ある著名ホテルのドアマンは1万人以上のお客の顔と名前を一致させることができ、20年以上その記憶を保持し続けるという話が載っていた。そういうことができれば私の営業力もだいぶ違っているんだろうなと羨ましく思う。
だが、ComputerSocietyに掲載された論文を見て、それもやがては機械が解決してくれるかもという希望も見えてきた。
・DegitalDoorman Argus
http://www.computer.org/intelligent/ex2001/pdf/x2014.pdf
「デジタルドアマンシステム」のArgusは、ドアを通過する人物をカメラで認識し特定する。撮影角度や風貌の多少の変化があっても見分ける、アルゴリズムを試験している。私の眼鏡にこの機能が搭載されれば、もう大丈夫だ。
さて、実現の遠い冗談はさておき、人間の顔認識力を使った今使える応用技術は幾つかある。
■チャーノフの顔グラフ
グラフ表示の多彩さで定評のある統計処理ソフトにSTATISTICAがある。このソフトは科学的なデータを、さまざまな統計計算手法を使って分析し、グラフ化するものだが、出力オプションのひとつにチャーノフの顔グラフ形式がある。
・STATISTICA
http://www.statsoft.com/base.html
これが、顔グラフである。顔のタテヨコの大きさ、目や鼻の大きさ、口角や眉毛の傾き、輪郭種などに各データの数値の大きさを割り当てることができる。顔の表情の違いは見分けやすいから、平均顔の中に、特異な顔があればすぐ見つかるという脳の顔認知特性を使ったグラフ化手法だ。
さて、どう使うか?。例えば学校の試験の科目別成績を考えてみる。各科目を顔のパーツに割り当てる。国語はクチの大きさ、数学は目の大きさなど。すべての科目で平均点を取った生徒のデータは、すべての顔のパーツが中くらいになるから平均的なタマゴ型の特徴のない顔になる。逆に得意、不得意がはっきりしている生徒の群は、同じように偏った顔になるだろう。全校の生徒の全科目の成績分布の散らばり具合、集団の別れ具合を把握できる。
と、書いたが、本当は私の説明はあまりよくない。さらにうまく使うと、理想的なデータはニッコリ微笑み、良くないデータは泣いた顔になるように割り振るとさらに人が認識しやすくなったりもする。
統計のプロの事例として次のページがある。ここでは居酒屋の見栄えや価格や味に顔のパーツを割り当てて顔グラフを効果的に使っている。
・居酒屋チェーン店のアンケートデータをマイニングする
http://www.doyukan.co.jp/kigyou/datama/datama.04.pdf
■顔によるパスワード認証
こんな実用的な使い方もある。RealUserは、人間の顔記憶の強さをパスワード代わりに使う製品である。
・RealUser
http://www.realuser.com/
ユーザはパスワードの代わりに、5人の見知らぬ顔の組み合わせを設定する。最初に3×3の升目グリッドに無作為に9人の顔が表示されるので、そのうちの1人をPassfaceと決める。これを5回繰り返し、5人のPassfaceを選び、記憶する。練習セッションが終わって記憶が確認できたら、Passface認証が使えるようになる。
ユーザはシステムにログインしようとすると、9人の顔から1人のPassFaceを選ぶ作業を5回連続で試され、5回とも連続して当てれば認証される仕掛けだ。
一見3×3のグリッドパターンは単純すぎるようにも思えるが、実際には、3×3のグリッドからPassfaceを5回、無作為に選んだだけでは59049回に一度しか認証をパスすることはできない。これならば日常的な認証機構としては十分に使えるレベルのセキュリティを持っている。また3×3のグリッドは数字入力キーに割り当てることが可能なのでインタフェースとしてもちょうどよい大きさである。 デモで体験できるので試してみると面白い。
・RealUserの科学的根拠論文
http://www.realuser.com/published/ScienceBehindPassfaces.pdf
このペーパーには、
・人間の赤ん坊は生後1時間で顔を認識できる
・生後2日で赤ん坊は母親の顔を見分けることができる
・人はよく知っている人の顔は20ミリ秒で認識できる
・ある実験では35年ぶりの同窓会で90%の参加者が顔を正しく認識できた
といった事実が述べられており、顔を見る能力は生得的なものであり、他のモノを見るときとは異なる特別な能力であるという。
他の脳科学の本を読んでも、人間にはうまれつき顔に対しては特別な認知モジュールがあると書かれている。生物は生存のために環境に適応するが、進化した人間にとっては人間社会こそが生存環境であり、そこでは顔を見分ける能力は必須といえる。だから、人間の顔認知と記憶の能力は突出していると言われる。
■似顔絵をランダム自動作成するフリーソフト
こんなものもある。
・モンタージュ似太郎
http://www1.mahoroba.ne.jp/~matumoto/soft.html
似顔絵作成ソフト。線画でまるで警察の手配モンタージュのような似顔絵を作成できる。福笑いのように目鼻や口のパーツを配置するのだが、楽しいのは顔を指定人数分ランダムに合成してしまう機能。一定間隔で次々に、どこかにいそうな顔が表示される。
絵心がある人間でないと、福笑いで誰かに似た似顔絵を作るのは難しいものだが、何百人も似顔絵をランダム合成していくと、そのうち似た顔が見つかる。そのデータをベースに似顔絵を整形していくと目的の顔が出来上がるから便利。
と、幾つか紹介してみたけれどまだまだあるので顔面技術第2弾をそのうちに。
そーいえば、お札が道端に落ちているとすぐ気がつきますね?(守銭奴か私は...)。この認知も特別なものだとしたら、何か応用はないかな?。
参考URL:
顔といえば顔のウィルスに気をつけてください。ところで誰なんでしょう?彼女。
・メール本文に女性の顔写真を表示するウイルス「BackDoor-AWQ.b」
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2004/01/08/1690.html