Culture: 2013年5月アーカイブ

映画『図書館戦争』公式サイト
http://www.toshokan-sensou-movie.com/index.html

図書館戦争を観てきた。ファンタジーと恋愛。気軽なエンタメ映画としてはよかった。のんびりした図書館と激しい戦闘という組み合わせが意表を突いた。続編があれば観るだろうな。実は私は原作は読んでいない。図書館ものだから読まなきゃなと思いながらもずるずるときて映画で内容をようやく把握。

舞台は昭和の後の元号が「正花」となった平行世界の日本。メディア良化法の施行によって表現の自由が制限されている。書籍の検閲が強化されており対象図書の範囲が大きく拡大されている。書店や図書館側は、法に基づいた対抗組織の図書隊に望みを託す。良化特務機関と図書隊は武装を認められており、警察権力は両者の争いには介入しない方針をとっている。表現の自由をめぐる戦争の物語。

作中に出てくる「図書館の自由に関する宣言」は現実の日本図書館協会の綱領だ。この宣言については知っていたが、まさか映画でこんな地味な内容にスポットライトが当たるとは...。

---
「図書館の自由に関する宣言」
 図書館は、基本的人権のひとつとして知る自由をもつ国民に、資料と施設を提供することを、もっとも重要な任務とする。この任務を果たすため、図書館は次のことを確認し実践する。
第1 図書館は資料収集の自由を有する。
第2 図書館は資料提供の自由を有する。
第3 図書館は利用者の秘密を守る。
第4 図書館はすべての検閲に反対する。

図書館の自由が侵されるとき、われわれは団結して、あくまで自由を守る。
---

最後の一文がしびれる。この宣言を起草した人たちは学生運動の闘士みたいな人たちだったのだろうか。この宣言から妄想が広がって戦争につながったのだろうか?


映画のアナザーストーリーがウェブで公開されている。

図書館mini戦争 | Angle Pictures
http://toshokan-mini.anglepic.com/

・夢売るふたり
51aD621dRXL._SL500_AA300_.jpg

西川美和監督作品。一筋縄ではいかない、相互依存する男と女のドロドロ関係がたまりません。女優 松たか子最高。

幸せになるか不幸になるかは別として長年連れ添えるのは、相互依存する夫婦なんじゃないだろうか。それは互いの足りないところを補完し合うなんてキレイごとじゃなくて。

片思い、両思いという言葉が恋愛初期にはある。でも、二人の関係が長く続くと、単純な片思いの双方向化では説明できないはたらきが生まれる。泥沼みたいなどうしようもない場の引力が創発して二人を穴に引き込む。

お前、俺の稼ぎが少なくてハズレつかんだと思っているだろうと夫は妻をなじる。妻は別にそんなことは思っていないのだが、否定しても肯定しても、夫はそうに決まっていると自分を追い詰めていく。妻はそれを見て、だめな男に尽くす自分に生きがいを感じる。

阿部サダヲもいいんだけれど、松たか子の暗い表情が、喜怒哀楽の分類に収まらない複雑な心情をとらえている。前半で浮気されて食パンをむさぼり喰うシーンはわかりやすい修羅の表情で良かったが、話が進んで事情が複雑になるにつれて彼女に求められる演技は難しくなっていく。愛憎や損得の相互依存の表情を見事に計算して表現してみせた。出てきた頃は良家のお嬢様みたいなキャラだったのに凄い女優になったなあと思ったら、この作品で彼女は、2013年 第36回日本アカデミー賞 優秀主演女優賞をとっているのだった。

サラの鍵

| | トラックバック(0)

・サラの鍵
51JH0JzV2HL._SL500_AA300_.jpg

第二次世界大戦のパリ。ドイツ軍に予告なく家を訪問され収容所に連行されるユダヤ人家族。姉のサラはアパートを出る時、とっさの判断で幼い弟を納戸に閉じ込めた。その鍵をサラは握りしめて過酷な日々を生き抜いた。ドラマはその60年後、そのアパートを所有する女性ジャーナリストが、サラの足跡をたどるところから映画は始まる。

これは好きな映画だ。終盤にいたるまで誰のための何の話なのか読めない。ありきたりな起承転結ではないから、見ている間、この話はどこへ落としてくれるのだろうという吊り上げられ感がある。だがミステリー仕立ての緊張感を持った展開が続く、そして登場人物も魅力的に描写されていくので、飽きることがなかった。そして何よりラストではちゃんと受け止めてもらえた。メッセージを受け取れた。それはアウシュビッツに至るユダヤ人迫害の記録であり、傷ついた少女の話もであり、現代を生きる子供たち家族の再生の物語であり、多元的な展開が見事につながっていった。

モデルになったのはフランスのパリで発生したディヴェール大量検挙事件。ユダヤ人の悲劇はドイツだけではなかったのだ。初めて知る残酷な事実に衝撃を受けた。真実を知ることは時として残酷だけれど、真実を乗り越えていかなかったら、本当の人生はない。そういうメッセージかなと私は受け取れた。いい映画見たなあとしみじみ思える良作。

映画『サラの鍵』公式サイト
http://www.sara.gaga.ne.jp/

原作小説は300万部のベストセラー。

孤高のメス

| | トラックバック(0)

・孤高のメス
41CWnWjnvtL._SL500_AA300_.jpg

DVDで『孤高のメス』(2010)を観た。久々に大感動した。当時劇場に行かなかったのを後悔。

「やっぱりこの俳優(女優)はうまいなあ」と思わせる程度では凡庸なのだ。登場人物が俳優であることを忘れさせ、芝居であることを忘れさせるくらいのリアリティを作り出す映画こそ一流だと思う。そういう意味でこの映画は一流だと思う。生真面目な看護婦役の夏川結衣による迫真の演技にすっかりやられた。踊るとか相棒とか見ている場合じゃないぞ、と。次元が違うから。大傑作『八月の蝉』の成島出監督作品。

日本初の生体肝移植。法を超えて命を救うことに全身全霊をかけた医療現場のハードコアドラマなのだけれど、私が感動したのは大義名分の美しさではなくて、厚みをもって描かれた人間像。尊敬できる医師が赴任してきて、現実に疲れていた中年看護婦が生気を取り戻していく。医師にメスを渡すときの「ハイ」の一言が以前とまるで違うものになってしまう。「ハイ」一言で内面の成長を感じさせてしまう夏川結衣の演技力が凄い。

それから、私はこの映画は社会派作品というよりも本質は大人の恋愛物語なのだと思う。病院が舞台なので役者たちは化粧っ気がないし、筋立てにもラブストーリーに必要な要素がほとんど登場しないにも関わらず、人を好きになるということを純粋に描いた傑作だと思う。

この映画は大傑作だがひとつだけ難点がある。リアリティ追求のために、手術シーンも、開腹した内臓をアップで写すのだ。血液や内臓のビジュアルが苦手な人(私ですが...)は、鑑賞中にその手のシーンになると、画面の端っことか天井に目を向けながら横目でちらちら見ることになる。しかも手術内容は物語の筋とも関係があり見逃すことはできない因果なつくりになっている。

『孤高のメス』 予告編 - YouTube

企画展「波瀾万丈!おかね道―あなたをうつし出す10の実験」を日本科学未来館でみてきた。一見、地味な展示なのだが、知的好奇心を満足させる内容で面白かった。すいているときにいって、じっくり考えながら体験するのがおすすめ。

・企画展「波瀾万丈!おかね道―あなたをうつし出す10の実験」
http://www.miraikan.jst.go.jp/sp/okane/
946692_10151581564664082_996128571_n.jpg

お金の使い方をめぐって自分自身を明らかにする脳科学、心理学、ゲーム理論、物理学、経済学の実験が10個。たとえば見知らぬ相手と対面に座って取引。相手がどう出るかによって、自分の所持金が変化するゲーム。社会的ジレンマや認知的不協和、損失回避傾向、現在バイアス、アンダーマイニングなどを体験できる。選択肢がおかね手帖に記録されるので一緒に行った人との違いが見えて楽しい。ちなみに私は現在バイアス強くて認知的不協和があって公平です。最後に10の実験回答の統計があって、え、それはみんなのそんなに?と意外な項目もあり。

こうした内容を先行体験できるアプリが公開されている。

8713047931_90fe2084dc.jpg

展示はこのような構成だがいくつかをアプリでも体験できる。

実験場(1) 「ホモエコノミカスの実験場」 ~まずは自分の合理性をチェック!
実験場(2) 「ヒューリスティクスの実験場」 ~待った! その買い、間違えていませんか?
実験場(3) 「同調伝達の実験場」 ~あなたのその判断が、バブル経済を起こす
実験場(4) 「認知的不協和の実験場」 ~お金=満足=幸せ?
実験場(5) 「アンダーマイニングの実験場」 ~ごほうびとやる気の深い関係
実験場(6) 「現在バイアスの実験場」 ~計画だおれの理由、ここにあり!
実験場(7) 「プロスペクトの実験場」 ~確実をとるか、リスクをとるか?
実験場(8) 「ベキ分布の実験場」 ~ウォール街のデモはなくならない
実験場(9) 「社会的価値志向性の実験場」 ~不公平との終わりなき闘い
実験場(10) 「社会的ジレンマの実験場」 ~協力を生みだす意外なヒケツー

8714170810_8e24f9db57.jpg

ただ何も知らないで体験した方が新鮮な驚きと学びがあるので復習コンテンツとして使う方がいいかもしれない。

波瀾万丈!  おかね道 - National Museum of Emerging Science and Innovation (Miraikan)

国宝 大神社展
http://daijinja.jp/
480361_10151577746129082_921729639_n.jpg

国立博物館の国宝 大神社展をみてきた。神社庁と全国の神社パワー結集の神道美術展。国宝と重要文化財が160件。二度と見られないかもしれないという御開帳百連発的な企画。最終コーナーの神像勢揃いが凄い。一体一体が神社に戻れば貴重なお宝、ご神体。百済王が倭王に贈った七支刀(国宝)も実物が見られて感激。音声ガイドには説明のBGMに御神楽や雅楽が収録されていておすすめ。

グッズコーナーでは「ジンジャー飴」とか「ジンジャークッキー」が売られている。極め付けは「神社エール」だった。

ところで国立博物館は最近完了した東洋館とミュージアムショップのリニューアルもみどころだった。

長期間の工事だった東洋館改装の第一印象は、以前と同じような内部構造で大きく変わっていないというものだったが、展示作品に対する照明がとてもよくなっており、国立博物館らしい品格が備わった気がした。

インパクトが強かったのが新ミュージアムショップ。すっかり明るくモダンな雰囲気になった。

東京国立博物館 ミュージアムショップ
http://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=125
tohakumuse01.jpg

こんなのを買ってきた。

土偶と埴輪のミニオブジェのセット
8711302276_55b0c8257e.jpg

これは机の横に並べるのにちょうどよいサイズ。

土偶の金属製ブックマーク
8711281764_05916b26ed.jpg

金属製のしおりは本を傷つけやすいので敬遠しがちですが、これは一目ぼれ。

225767_10151577979429082_361032951_n.jpg

2013年NHK大河ドラマ 特別展「八重の桜」。江戸東京博物館でみてきた。5月6日で終了で今後は福岡と京都で開催。

ドラマは毎週見ている。にしゃは、なじょすて、くなんしょ、など独特の会津弁をだいぶ覚えた。視聴率は伸び悩んでいるがこの展示は大人気。音声ガイドはドラマと同じ草笛光子なのが素晴らしい。

松平容保が肌身離さず持ち歩いた孝明天皇の御宸翰や、鳥羽伏見の戦いの時の瓦版、山本覚馬の建白書など、今回の展示は手紙モノが多いのだが、地味なのに歴史を実感できるものばかりで感動した。新島襄が妻の八重に当てた手紙が長文で2メートルもつれづれ話を書いていたり、長生きした八重が晩年に襄の書と同じ「心和得天真」という文言の書を書いていたり。この二人はかなり仲が良かったのだな。川崎尚之介との離婚の詳細は不明、ドラマではどう描かれるか。

今後のドラマで出てきそうなモノがいっぱいあって今後も確実に最後まで観るであろう私のような熱心な視聴者は行く価値がある。

なぜ会津がぼろ負けする話を大河ドラマにしたのだろうと疑問におもっていたが「戊辰戦争の敗戦から立ち上がる人々の姿を通して、復興へのメッセージを伝えていく」という趣旨だったのか。しかし、敗戦後の八重は京都に行ってしまい同志社や篤志看護婦として活躍するわけで、復興フェイズの福島が描かれないような気がするのだが、後半の展開が気になる。

・2013年NHK大河ドラマ 特別展「八重の桜」
http://www.nhk-p.co.jp/tenran/20120926_171430.html

八重の桜 前編 (NHK大河ドラマ・ストーリー)
http://www.ringolab.com/note/daiya/2013/01/-nhk.html

・新島八重 明治維新を駆け抜けた才女
http://www.ringolab.com/note/daiya/2012/11/post-1732.html

・新島八重 愛と闘いの生涯
http://www.ringolab.com/note/daiya/2012/11/post-1731.html

・幕末銃姫伝―京の風 会津の花
http://www.ringolab.com/note/daiya/2012/07/post-1677.html

このアーカイブについて

このページには、2013年5月以降に書かれたブログ記事のうちCultureカテゴリに属しているものが含まれています。

前のアーカイブはCulture: 2013年2月です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

Powered by Movable Type 4.1