Books-Trivia: 2010年10月アーカイブ
これは相当やばい...本気の本だったか。
「昆虫料理の世界へようこそ。本書を手に取られたあなたの好奇心に敬意を表します。さあごいっしょに、おいしく楽しい昆虫料理の扉を叩きましょう。 本書では昆虫食よりも昆虫料理という用語を多く使っています。昆虫食と聞くと佃煮を思い浮かべられる人が多いでしょう。でも昆虫にはもっとさまざまなおいしい食べ方があるはずです。肉料理や魚料理があるように、昆虫料理と言うジャンルがあってもいいのではないでしょうか。」
どういう料理かというのはアマゾンのなか身!検索があるので一目瞭然(これほどなか身検索!が効果的な本はあるまい)。バッタ、カマキリ、キリギリス、コオロギ、カイコ、アブラゼミ、タガメ、ナメクジ、イナゴ、スズメバチ、ゴキブリ、ジョロウグモ、ミールワーム、カブトムシ、クワガタムシ、カミキリムシ、ナナフシ、ムカデ....など多数。
え、カブトムシ?
食べるのです。どういう味か全種類の昆虫について記述されています。
「カブトムシは樹液をなめている成虫に限ります。幼虫は腐葉土を食べるため臭みが強く食材に向きません。さなぎの段階でもまだ腐葉土臭は強烈に残っています。成虫はアルミホイルに包んで焼くのが一番です。殻は硬いので割って中身を食べます。飛翔筋の発達した赤身の胸肉に旨味があります。」
ジョロウグモはお腹の糸の元のところがおいしいとか、ナナフシを揚げてチョコレートコーディングすると「小枝チョコ」そっくりだとか、虫にも旬があるとか、毒のあるのはこれだとか、とにかく本気の人が経験に基づいて語る昆虫料理のレシピ本、ノウハウ本なのです。
ファーブル昆虫館長の奥本大三郎氏との対談では、あまりに日常として昆虫料理が語られるために、だんだん普通のことかなと思い始めるのですが、やっぱりカラー写真を見てしまうと、私にはムリムリ、セミまでは食べたけどゴキブリやナメクジは絶対に嫌と現実に戻ってきます。
大量に本格的な昆虫料理のレシピが掲載されていますが、作る人は果たしてどれくらいいるものなのでしょうか。実際に食べないでも、非常に本気で丁寧に書かれているので、奇書珍書の逸品としてかなり楽しめます。
すごい虫131―大昆虫博公式ガイドブック
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/10/131.html
・ご当地「駅そば」劇場―48杯の丼で味わう日本全国駅そば物語
全国各地の駅のそば屋(立ち食いが多い)のうち、地域の特色を出している48店を写真入りで紹介する新書。著者は全国1500店を巡っている駅そば研究の第一人者。
駅そばって私も好きなんです。お腹がすいているときに、濃いそばのにおいがするとたまりませんよね。ちゃんとした時間にちゃんとしたご飯を食べなきゃといけないと頭では思っていても、ついつい欲望に負けて、おやつや夜食に一杯食べてしまう。週に1,2回ですが年間にしたら50回とか100回になる。結構利用しているなあ、私。
駅そばって稀に大当たりの店があって、コシのある十割そばや、からっと揚げたての天ぷら、煮詰まっていないうまい出汁が出てくることがある。立ち食いなのに、町のそば屋よりうまかったりする。同じチェーンでも大きなばらつきがあったりしますね。私の経験では駅周辺そばであることが多いですが、小諸そばのほんの一部に大当たりがある。
で、この本の著者はそういう普通の駅そばの名店発掘は前の本で終えていて、今回は御当地そばにこだわっています。広島のかきそば、静岡のはんぺんそば、福岡のふくそば(フグの天ぷら入り!)、小田原の梅そば、ほか。その地域でしか食べられない御当地そばの名作をうまそうに紹介しています。ページ48種類。ページをめくるたびに「え、こんなのもあるの?」と駅そばの多様性に驚かされます。
「天ぷらそば」は地域や店によってのってくる具が違うとか、濃い口醤油のカツオ出汁と薄口しょうゆの昆布だしは、関ヶ原に境界線があるだとか、東の白ねぎと西の青ねぎはそれとは境界がずれているとか、実地検証で結論しています。
お腹がすいているときに読むと大変うまそうですが、実際にはひとりで地方へ出張に行った時って、なかなか駅そばには入りません。せっかくだから御当地名物をと思って、普通のお店に入りがちです。まさか著者みたいに駅そば目的で旅行するということはない。著者のレポートは、自分ではなかなか味わえない味覚世界の広がりを知ることができて貴重でした。
このブログ始まって以来の交通新聞社新書の本ですが、このシリーズは鉄道系のマニアックな嗜好の本ばかりで面白いです。他のも読んでみよう。
虫が嫌いな人は無視してください。なんちゃって。(本日誕生日で自他ともに認めるオヤジ年齢になりました。)
9月5日まで江戸東京博物館で開催されていた大昆虫博の公式ガイドブック。生きた虫は嫌いだが、標本を眺めるのは好きな私はずっと気になっていたがとうとう行けなかったので、この本で我慢することにしたわけです。
でも、この本、本物の標本展示より凄い(エグい)かも。大型本なわけですが、虫をカラー写真で実物の何十倍にも拡大して掲載しています。虫の複眼とか綿のような毛とかが大写しにされて、実物大以上に不気味なことこの上ありません。あきらかに自分とは異質な生き物の質感。私は好きですが、嫌いな人は鳥肌が立つでしょう。
全生物種の6割を占める昆虫は、数の上では地球の生物の主役。100万種もいると、とてつもなくヘンなのがいっぱいいて感動します。拡大しておぞましいのはやはりゾウムシでしょうか。体内で化学反応を起こして100度の高熱臭気ガスを発するミイデラゴミムシとか、ありえない真っ青のルリボシカミキリとか、ペットボトルサイズになるサカダチコノハナナフシとかも、ブルっときました。
養老孟司、奥本大三郎、池田清彦など虫マニアのお宅訪問。養老先生はおそらくバカの壁の印税で虫趣味に浸るための別荘(バカの壁ハウス)を建てているんですね。この先生方は皆、家の冷凍庫に虫を入れていて時間が空くと標本にしているようです。
すごい虫131を選んだこのカラーのガイドブックは、展覧会の趣旨である生物多様性を、虫だけではありますが嫌と言うほど学べる内容になっています。虫の嫌いな人は間違って開くと危険です。