Books-Trivia: 2010年9月アーカイブ
「現実にないものを内なる眼で見て、思い浮かべる人間の想像力、つまり"幻想"から生まれた美術」
自分が興味を持つ絵画の多くは幻想美術と呼ばれるジャンルだとわかったのだが、幻想美術というのはどういう美術なのか、どういう作家がいるのかという全体像が、このカタログ的な解説本でやっと把握できた。
近代以前から現代まで62人の画家による幻想絵画をカラー写真で紹介していく。
15世紀のヒエロニムス・ボス、アルブレヒト・デューラーに始まって、20世紀のキリコ、ダリ、マグリットまでを代表作をひとつ選んで解説を加えていく。美術史的には有名な作家も多い。歴史的背景や評価、周辺キーワードなどで立体的に作品が理解できる。
絵画の主題となるのは、夢、幻覚、無意識、眠り、恍惚、神秘、不可思議、秘密、謎、ビジョン、メタモルフォーシス、宇宙、無限・永遠、夜、闇と光、廃墟、迷宮、死、妖精、童話的世界、楽園天国、地獄など。現実と非現実の中間世界。「熱に浮かされたような」「狐につままれたような」瞬間を絵にしている。
しかし、完全に表現者があちらの世界にいってしまっているアウトサイダーアートとはかなり異なる。見る者を幻想に惑わすための設計がなされているなあと感じることが多い。神秘であると同時に知的な芸術なのだ。
「幻想美術の巨匠たちは、本来なら大自然の秩序、ヒエラルキーの中に定位置を占めているこれらのイメージを解放、解体し、我々には想像もつかないような形で組み合わせ、合成したに過ぎない。彼らが創造したかに見える不可視の超現実、超自然、つまり幻想の世界も、常識や理性、偏見にとらわれない自由かつ柔軟な感性と、豊かな想像力の産物であった。」
鑑賞用としても知識ガイド本として非常によくできた本だと思う。
近年、都内に増えている高級ショコラ店が気になっていた。
日本でも老舗のゴディバくらいは知っているわけだが、「ピエール・マルコリーニ」「クリスチャン・コンスタン」「ミッシェル・ジョーダン」と聞くとよくわからない。そもそもゴディバはベルギー王室御用達で、他の御用達ブランドにはノイハウス、ヴィタメール、メリー、コートドール、ガレーがあるなんていうことはこの本で初めて知った。この十年で日本の高級ショコラ市場が盛り上がってきたらしい。アパレルブランドであるはずのブルガリやアルマーニもショコラを出している。
「チョコレートやココアの香りには、集中力や記憶力を高める効果や、リラックス作用があります。また、カカオ豆に含まれるテオプロミンには、脳を活性化して集中力や記憶力を高める効果があります。テオプロミンの名前は、カカオの学名「テオプロマ・カカオ」からつけられました。カフェインに近い成分ですが、興奮作用はずっと穏やかです。」
なんていうチョコレートの効能や歴史、用語解説、業界事情といった専門的な蘊蓄とともに、楽しむための、国内と海外のショコラ専門店の網羅的なガイドと選び方、味わい方(ボンボン・ショコラは、鋭利なナイフで二等分して半分味わったら、軟水を飲んでから、残りを食べる、など)が紹介されている。実用性があって、とてもよかった。
さっそく丸の内のショコラティエ・パレ・ド・オールという店に行ってきた。
クラシックな看板ショコラのセットとこの店の名物ショコラ・ネスパ?!を注文。カカオ豆の透明なエキスを炭酸で割った冷たいドリンクで、ソーダののど越しだけれどもしっかりチョコレートの味がする。おいしい。店やショコラの知識があることで一層楽しめた。
ちょっとお茶のつもりで親子3人でいったら五千円くらいの出費になった。まあ、"高級"ショコラだから仕方ないか。失敗しないためにもガイドブックが必要なのですな。