Books-Trivia: 2008年6月アーカイブ
軍が兵士に支給する食事、戦闘糧食(レーション)の特集本。ミリタリーマニアではないが、まったく知らない世界をのぞいてみた。
アメリカ軍、イギリス軍、イタリア軍、スペイン軍、オーストリア軍、ドイツ軍、そして自衛隊と各国の兵士たちの食事が写真で紹介されている。基本的には飛行機の機内食みたいなものが多い。スパム缶やM&Mチョコレートなど民間物資を流用しているケースもある。これは手抜きではなくて、兵士が食べなれたものを支給する工夫であるらしい。
レーションは目的に応じて、個人用、特殊任務用、集団用、サバイバル用などが用意されている。最も中身が充実しているのはアメリカ軍で、レトルトパウチ実用化や宇宙食開発で知られる陸軍ナティック研究所での最新のレーション研究開発も取材されている。
「腹が減っては戦ができぬ」といったのはナポレオン・ボナパルトであった(本当)。ナポレオンは軍事行動における食糧補給を重視した結果、レーションの開発史に革命を起こした。
「現在食料保存に用いられている瓶詰だがこれは食品を瓶に詰めて加熱殺菌するもので原理は缶詰と同じ。瓶詰開発の背景には戦争があり、そのきっかけを作ったのがナポレオンだった。彼は軍の食料を現地調達に頼らず確保する方法を模索していたが、イギリスとの戦争で食料保存に不可欠な砂糖(微生物が増殖しない環境を作る)がフランスに入ってこなくなってしまう。そこでナポレオンは農業協会を通じて保存法を公募。これに応募したのが料理人ニコラ・アベールで、彼は瓶に食材を詰め、その中で加熱調理する方法を考案。これが1809年に採用され、アベールは賞金1万2000フランを獲得した。しかし瓶は割れやすいため、イギリス人ピーター・デュランがブリキの缶に食品を詰める方法を考案。1812年から生産が開始されている。」
大勢の人間が異文化と接する戦争では、食文化も交わる。たとえば日本独特のスパゲティ・ナポリタンは、占領アメリカ軍のレーションを、日本人の口に合うようにアレンジしたも。もともとはイタリアのボロネーゼが、アメリカ軍に入ってミートソースになり、日本でナポリタンになったということらしい。
どれもあまりおいしくはなさそうなレーションであるが、宇宙食と同じで一度食べてみたくはなる。ネットで一部販売されている。
・ミリメシ「戦闘糧食II型」仕様 4食セット+1(副食)
「本品は防衛省に実際納品されている民間調達食糧です」とのこと。
最近、バナナを2本食べるとか油を飲むなどユニークなダイエット法が話題になるけれども、ミリメシによるサバイバル・ダイエットっていうのも結構いけるかもね。いけないか。