Books-Sociology: 2008年2月アーカイブ
1967年から版を重ねて110万部突破のロングセラー。日本のタテ社会とは何かを分析している。タテ社会というのは「伝統的に日本人は「働き者」とか「なまけ者」というように、個人の努力さには注目するが、「誰でもやればできるんだ」という能力平等観が非常に根強く存在している。」というように、みんなが平等という前提で、できてきた社会だという。そして誰でも上へ行く道が開かれている。
「どんな社会でも、すべての人が上に行くということは不可能だ。そして社会には、大学を出た人が必要であると同様に、中学校卒の人も必要なのだ。しかし、日本の「タテ」の上向きの運動の激しい社会では「下積み」という言葉に含まれているように、下層にとどまるということは、非常に心理的な負担となる。なぜならば、上へのルートがあるだけに、下にいるということは、競争に負けた者、あるいは没落者であるという含みがはいってくるからである。」。
しかし、この日本の伝統的タテ社会は、能力評価による競争が行われているわけではない。必ずしも仕事ができるからといって認められて出世するわけではないのだ。「論理より感情が優先し、それが社会的機能をもっていること」が特徴であると著者は指摘する。
「他の国であったならば、その道の専門家としては一顧だにされないような、能力のない(あるいは能力の衰えた)年長者が、その道の権威と称され、肩書をもって脚光を浴びている姿は日本社会ならではの光景である。しかし、この老人天国は、決して日本人の敬老精神から出てくるものではない。それは、彼がその下にどれほどの子分をもっているか、そして、どのような有能な子分をもっているか、という組織の社会的実力(個人の能力ではない)からくるものである。」
なんと痛快なタテ社会批評!
・「おしゃべりな人」が得をする おべっか・お世辞の人間学
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001413.html
・世間の目
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002046.html