Books-Religion: 2008年1月アーカイブ
1882年、ケンブリッジ大学トリニティカレッジで(英国)心霊現象研究協会 (The Society for Psychical Research)は設立された。初代会長は哲学者ヘンリー・シジウィック。幻像、サイコメトリー、テレパシー、テレキネシス、エクトプラズム、ポルターガイスト、降霊術など、心霊現象や超常現象を科学的に解明しようとする組織であった。本物のゴーストハンターたちの会なのだ。
心霊現象研究協会の主な歴代会長のリストを見ると、首相やノーベル賞学者を含む錚々たる顔ぶれが就任している。
1882-1884 ヘンリー・シジウィック、哲学者
1892-1894 A.J.バルフォア、イギリスの首相、バルフォア宣言で有名
1894-1895 ウィリアム・ジェームズ、心理学者、哲学者
1896-1897 ウィリアム・クルックス卿、物理学者、化学者
1900 F.W.H.マイヤース、古典学者、哲学者
1901-1903 オリバー・ロッジ卿、物理学者
1904 ウィリアム・フレッチャー・バレット、物理学者
1905 シャルル・リシェ、ノーベル賞受賞生理学者
1906-1907 ジェラルド・バルフォア、政治家
1908-1909 エレノア・シジウィック、超心理学者
1913 アンリ・ベルクソン、哲学者、1927年にノーベル文学賞受賞
1915-1916 ギルバート・マリー、古典文学者
1919 レイリー公、物理学者、1904年にノーベル賞受賞
1923 カミーユ・フラマリオン、天文学者
1926-1927 ハンス・ドリーシュ、ドイツの生物学者、哲学者
1935-1936 C.D.ブロード、哲学者
1939-1941 H.H.プライス、哲学者
1965-1969 アリスター・ハーディー卿、動物学者
1980 J.B.ライン、超心理学者
1999-2004 バーナード・カー、ロンドン大学の数学、天文学の教授
・出典 Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BF%83%E9%9C%8A%E7%8F%BE%E8%B1%A1%E7%A0%94%E7%A9%B6%E5%8D%94%E4%BC%9A
1985年にはアメリカにも協会が発足し、本書の主役であるハーヴァード大学教授のウィリアム・ジェイムズが初代会長に就任する。彼らは大真面目に幽霊屋敷や超能力者を調査し論文を書いて発表した。趣味的活動ではあったかもしれないが、高名な科学者である彼らは失うもののある人たちであった。多くの挑戦はかなり本気だったようなのである。
心霊現象や超常現象に対して懐疑的な意見もあれば、肯定的な意見もあった。科学者たちは宗教や迷信から離れて議論していた。懐疑派は「たとえば幽霊を見たと称する人々はほぼ例外なく、死者はきちんと服を着ていたと言う。なぜそうなのか?エレナーの言葉を借りれば、なぜ「服の幽霊」が出るのか?幽霊とは死者の霊ないし霊エネルギーの現れであ、とは言えるかもしれないが、シャツやスカートにも死後の生があるとは考えにくい。なぜ服もいっしょにもどってくるのか?」といった。いやはや、そんな問題の立て方があるとは感心したのだが、肯定派は識閾下のコミュニケーションが超常現象の正体なのだと主張したりもした。
本書は19世紀末~20世紀初頭の、最初の心霊研究ブームの熱狂を伝えるドキュメンタリである。高名な学者や作家が次々に登場して心霊現象を語っている。表の歴史書には決して出てこない、もうひとつの科学史、偉人伝として面白いのである。