Books-Psychology: 2008年3月アーカイブ

・心の科学 戻ってきたハープ
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不妊治療を受けている女性を二つのグループに分け、一方のグループは他者からの祈りを受ける、他方は受けない。被験者及び現場の治療スタッフはこの実験が行われていることを知らない。二つのグループの妊娠率を計測した。すると「実験の結果は驚異的だった。祈りを受けた女性群の妊娠率は、受けなかった女性群の二倍に近かった。数値はそれぞれ50%と26%で、このようなことが起こる確率は0.0013未満。非常に意味のある統計差だ」。

こんな実験もあった。被験者を画面の前に座らせて好きなときにボタンを押させる。すると数秒後にランダムに「感情的を揺さぶる写真」か「静かな写真」が表示される。被験者は手に電極をつけて生体反応を計測される。「これまでの実験には131人の参加者がいましたが、それで判明したのは、感情的な写真を見る前は、静かな写真を見る前よりも、わずかに汗をかく量が増えることです」。こうした実験では、その予知のタイミングを調べると、コンピュータが乱数発生回路を使って、次に出す内容を決める前に、生体反応が検出されるという。

著名な心理学者が、祈りの効果、虫の知らせ、ジョー・マクモニーグルらの未来予知、行方不明者や遺失物を発見するダウジング、テレパシーなどの超常現象を徹底分析する。昔から科学者によってこうした実験が行われてきたが、多くの驚異的な結果報告は、非科学的であるとされて科学の表舞台に出る前に排斥されてきた事実を著者は事例を多数挙げて解説する。

心理学者が書いた本らしい興味深いロジックがあった。それはゲシュタルト認知のあり方を、科学と超心理学の関係になぞらえた次のような記述だ。(認知心理学の実験でよく使われる、見方によって複数の解釈ができる影絵が挿絵にある。)

「もう一つ、ゲシュタルト心理学者によって明らかになったことがある。それは見える絵......たとえば杯か横顔か......を切り替えるのは、慣れれば上手くできるようになっても、両方を同時に見ることはできない、ことだ。つまり、杯と横顔は同時に前景にはなり得ない。一つの見方で知ったこと、もう一つの見方で知ったことを統合できれば役立つことがわかっていても、同時に二つを見るように知覚を働かせることはできない。」

異なる宗教を持つ人の世界理解にも同じことが言えそうである。ある世界観を持つということは、別の世界観を見えなくしている。重要なのは二つの世界観が両立するメタ世界観を確立すること、二つの見方ができる眼を持つことだ。

超能力や超常現象の報告を詳細を調べもせずにすべてナンセンスだとして排斥してしまうのは、合理的、科学的な考え方とはいえないと思う。99%以上はナンセンスなのだろうけれども、科学の歴史は本流の科学者の考え方を異端とされていた研究がひっくり返す歴史でもあった。

あとがきで訳者がこう書いている。「ある面で、これに不思議はないかもしれない。なぜならテレパシーや予知、透視や念力などの体験は、人類に共通しており、古今東西、あらゆる文化圏において普遍的に報告されているからだ。」。

・幽霊を捕まえようとした科学者たち
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/005228.html

・サイレント・パワー―静かなるカリスマ
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社会的に中堅になるとペラペラ自己主張をしゃべることが必ずしもプラスに評価されなくなるものだ。実力も実績もあって当たり前。安定や落着きこそ求められる。この本は静かなカリスマが持つオーラ「サイレント・パワー」とは何か、どうしたらそれを身につけられるかを語る、スピリチュアル要素50%の指南書。

他人と違う雰囲気、自然に惹かれる魅力を持った人は何が違うのか。それはまず心の持ち方が違うのだ、寄りかからないことが大切なのだと著者は次のように最初のステップを教える。

1 自分のものでないものに寄りかかるのを止めること
2 未来に寄りかかって、いつも先のことばかり話すのをやめること
3 他人に何も要求しないですむような人生を設計しよう

そして寄りかからないためには、個人的なことはあまり詳しく人に話さないようにすること、心理的に相手の下に入るようにしてみることが重要なのだという。

「だから、人と張り合わないように、会話に気をつけることだ。誰かがフランス旅行に行った話をしてきたとしよう。もしあなたがフランスに二十年間も住んでいたことがあったとしても、そのことは口にしないことだ。ただ、相手の話を聞けばいい。そう心がけることで、あなたはだんだんと、人の下に入る会話スタイルを身につけることができるようになる。」

ただのしゃべらない人と、サイレントパワーのある人の違いは、内に秘めたエネルギー量の違いらしい。この本ではスピリチュアル用語の「エーテル」として説明されている。科学的にはともかく、自信があるかないかは、しゃべろうがしゃべるまいが自然に態度に現れてくるというのはわかる気がする。

「最大の防御は、他人に対する批判や判断をできるだけ控えることだ。恨みや、憎しみ、反感を持たないようにしよう。防御すべきものを持たないことこそ、最大の防御だ。」

隙をなくして、ゆったりと構えよ、そういう人にサイレントパワーは備わるということみたいだ。「カリスマ性」という言語化しにくいものを、感覚的にとらえることができる面白い本である。