Books-Psychology: 2005年6月アーカイブ

・「心理テスト」はウソでした。 受けたみんなが馬鹿を見た
4822244466.01.MZZZZZZZ.jpg

世間で広く使われている心理テストの多くが根拠のないニセモノで当てにならないことを説明してくれる本。誰もが就職の適性検査や性格診断で一度は受けたことがあるような有名なテストが次々に槍玉に挙げられる。

そうか、やっぱりあれは嘘なのかと納得。

■統計的に嘘だらけの心理テスト

1 血液型で性格を分類する「血液型人間学」

2 インクのしみを見た感想で精神状態を分析する「ロールシャッハ法」

3 単純な大量の足し算の出来具合から性格を分析する「内田クレぺリン検査」

4 質問にYESかNOで答えさせ性格を分類する「YGテスト」

5 血液型人間学が嘘というのはもちろんわかっていたが、

こうした心理テストは意味がないのだと著者ははっきりと述べている。血液型人間学でA、B、O、AB型はそれぞれの特徴的な性格を持つとされる。だが、実際の性格特徴と血液型の相関関係を調べてみるとほとんど一致しない。ただし、調査数が多いとたまに有意度5%の相関が見出せることがあるが、これは当然の確率で発生する誤差に過ぎない。

スポーツ選手や政治家にO型が多いというような調査データにもとづく、職業と血液型の証明についても、毎年調べると、その年が例外であったことがわかる。血液型人間学の支持者たちはたまたま多かった年度だけを取り出して根拠としているだけなのだ。

血液型人間学や占星術のようによく知られたテストでは「知識の汚染」も発生する。被験者が既にA型らしさやてんびん座の性格を知っているために、答えが誘導されてしまう。就職試験では望ましい答え方を受験者は知っている。本当の性格がテストに現れないことが多い。

■バーナム効果のまやかし

YGテストのように

「あなたは人に好かれ、尊敬されたいという強い欲求があります」
「あなたは自分自身を批判する傾向があります」
「あなたには使われていない潜在能力がたくさんあります」

というような記述に自分が当てはまるかどうかを答えさせる心理テストは多い。

そこでは誰もが当てはまるような一般的な性格記述を自分だけに当てはまるとみなしてしまう現象が起きる。占いの診断結果を信じてしまうのと似ている。

明らかに間違っている心理テストがなぜか現場では当たっているように思われる理由のひとつが、誤診率と基礎確率の問題にある、という説明は面白い。たとえば70%の誤診率で精神病者を見分ける心理テストがあったとする。そのテストを精神病院が採用し、90人の精神病者と10人の正常者がやってきてテストを受ける。

すると27人の精神病者が正常者と診断され、3人の正常者が精神病者と診断される。3割は誤診である。一方、心理テストを使わず100人全員を精神病者だと決め付けた場合、誤診は1割である。バーナム効果を持つテストを使うと、全員がイエスと答える結果になるわけだから、決め付けたときと同じで高い精度のテストのように見えてしまう。

ポイントは精神病院には高い基礎確率で精神病者がテストを受けに来ることにある。そのような環境では自分だけに当てはまるように思える一般的記述のテストは、成功しているように見えてしまう、まやかしが生じる。これをバーナム効果というらしい。

テスト業者が儲けるのはともかく、こうした無根拠で当てにならない心理テストで、就職や昇進が左右されるのは大きな問題だと著者は指摘している。