Books-Psychology: 2003年12月アーカイブ
とにかくコンセプトがユニークで類書がほとんどない、気がする。
この本を読むとこんなことが、一杯分かる。コメントしながら、考えを広げる参考URLも探してつけてみた。
■私の発見:新幹線の電光掲示板は6文字、2.5秒の裏づけ
人間が2秒以内で処理できること=瞬間情報処理について、12人の認知心理学研究者たちが、各専門の観点から書き下ろした小論集。第一部では理論、第二部では日常生活に役立てるコツをまとめていく。
例えばこれは私が最近撮影した2枚の写真である。東京駅八重洲口にある大きな電光掲示板と、東海道新幹線のぞみ号内の電光掲示板だ。東京駅のほうは分からないが、のぞみの電光掲示板は横6文字。左端に出た文字が右端へ消えるまでに2.5秒程度かかっていた。こういった掲示板の文字数や流れる速度は科学できるのだろうか。東京ー名古屋間で随分悩んでしまった。
この本によると電光掲示板は、大抵は日本語は7〜8文字、アルファベットならその倍の量が2秒で処理されるように設計されているという。それが人間の平均的な視覚探索能力であるという。
・RSVPにおける眼球運動についての一研究
http://www.sahf.cc/human/thesis/2-11.htm
都内の電光掲示板を調べまくり。文字数や速度の調査結果は?
・RSVPにおける適切な速度と適切なスパンに関する一研究
http://www.sahf.cc/human/thesis/2-8.htm
電光掲示板で読みやすい文章について研究
■息が合う、間
彼や彼女と「息が合う」などというが、実際に計測してみると、対話の相手、歌の歌い手と聴衆の呼吸は同調することが分かっている、という。発声と発声の間の間(マ)が、その呼吸の同調を作り出す。人間の聴覚はは100ミリ秒という瞬間をも認識できる。そのため、その微妙の間のおかしな合成音声と本当の声を聞き分けてしまう。
ちょっと手元のプログラムを使ってこのコラム関連のもうひとつの記事を音声ファイル化してみた。
やっぱり、機械と分かってしまうと思う。逆に、この間の研究と合成の精度が高まると、人間なのか機械なのか分からない音声が作れるということでもある。
・Naunce
http://www.nuance.com/
最先端の音声合成ソフトウェア企業。デモで音声合成の対話例を聞く事ができるが、機械合成とは区別がつかないくらい、活き活きとしている。
・Microsoft Research Asia、感情表現豊かな音声認識で次世代サービス開発中
http://pcweb.mycom.co.jp/news/2002/11/28/18.html
「MSRAの研究では、読み上げる文章を感情的にも分析し、エキサイティングなスポーツニュースなら興奮気味に、重大な犯罪事件のニュースならトーンを落としてといった、よりナチュラルな音声の実現が目標とされている」とのこと。
・Microsoft The Speech Technology
http://research.microsoft.com/stg/default.aspx
■正確なキーボードタイピング
キー押しの間隔は熟練者で平均190ミリ秒。素人で300ミリ秒。正確度は1文章内に5-10文字程度のミスがある場合が多いが、意外なことに熟練者と素人の差は大きくはないのだそうだ。しかし、どちらもマイペースでの入力のため入力速度と正確さのトレードオフ相関は存在する。つまり、普段は間違えてまで早く打とうとしないが、慌てるとミスがでるということ。
・キータイピング練習 e-Typing 腕試しレベルチェック
http://www.e-typing.ne.jp/index.asp?mode=levelcheck
さあ、どうぞ!歴代トップは700点台...。
私もやりました。208pt、B+。45秒58.正誤率97.1秒。「あと一歩で上級者ですよ」とのこと。みなさんも試してコメント欄にでも報告してください。
■読みやすい文章
日本語文書は一般的には、漢字が25%〜45%。かなが45%〜65%、残りがカタカナ、数字、記号。読みやすい文章を作るには、漢字使用率を30%程度にしつつも、大事な用語は図として認識できる漢字で書く、句読点はなどの科学が紹介されている。速い読み手は。眼球運動が最適化されていて、1行を165〜170ミリ秒で認識し、1分間に1200字を読むことができる。
・キャプションと来館者 −展示メディアにおける文字情報の評価−
博物館展覧会調査研究センター
http://www.museum.or.jp/IM/report/pdf/MD51-45.pdf
博物館の展示の解説の文章はどうあるべきか、文字量、配置、配色など。世界の博物館の経験から学べる。Web制作でも参考になるはず。
・ネットなんぱマニュアル>E-Mail基礎編>5.国語のオベンキョ?文章の印象を考える5-2) 硬派文とナンパ文
http://www.tako.ne.jp/~a3-mori/netn/e-mail_kiso/kiso_5.02.htm
「優しい丸い雰囲気を醸し出したければ、「ひらがな」を多く。知的に見せたければ「漢字」を大目に。ちょっとあか抜けた捻った雰囲気を醸し出したければ、「カタカナ」を上手に織り交ぜると良いでしょう。」など異性接触に最適化。実例多数。
このほか、野球のバッターが本当にボールの縫い目が見えている可能性や、自動車運転時の一瞬の情報判断を最適化するための科学的ノウハウなど、著者が多いだけに盛りだくさんの内容となっている。著者の数が多いこともあり、全体として、ひとつの方向性には収束しないのだが、瞬間でできることのバリエーションを知ることは、情報やインタフェースのデザインに効果的につなげていくことができそうだ。
■ナッシュ均衡とパレート最適
ゲーム理論で有名なケースは、メリル・フラッドとメルビン・ドレッシャーによる囚人のジレンマである。この本にもゲーム理論の代表例として登場する。
囚人Aと囚人Bがいる。
1 二人とも黙秘すると懲役1年ずつ
2 二人とも自白すると懲役2年ずつ
3 一人が自白し、一人が黙秘すると、自白した方は釈放、黙秘した方は懲役3年
この状況で、あなたが囚人Aだった場合、自白すべきか、黙秘すべきか、を考える。
有名な理論にはナッシュ均衡とパレート最適がある。ナッシュ均衡は、囚人同士が利己的に考え、自分の損得のみを合理的に考え必死になっている(均衡点)状況での、非協力ゲームを前提としている。この本での定義は「自分以外の全プレイヤーが均衡点の戦略をとるとき、自分もそれをとらないと得にならない」状態のことである。
ナッシュ均衡の戦略を両者が取ると、裏切りあうことで「自白ー自白」になる。結果として両者共に2年の懲役に服すことになる。
経済学者ビルフレート・パレートが考えたパレート最適とは、この本の言葉では「全員の状態を動かしてかまわない」条件下で、「自分の利益を増やすには、他人の利益を減らすしかない」ような状態のことである。つまり全体にとっての合理性を目指す。
パレート最適の戦略では、協調することになり「黙秘ー黙秘」になる。その結果、両者共に1年の刑に服すことになる。これ以上にどちらか片方が得をしようとすると相手を裏切り、自分だけが自白する必要がある。まさにそういう状況に落ち着いている。
結局、必死に自分だけの利益を考え相手を裏切ると両者ともに懲役2年になるが、全体の合理性を考えて両者が協調して行動すると、懲役1年で済む。
■Webで囚人のジレンマを体験してみる
この囚人のジレンマは一回だけではこれといった戦略を考えるのが難しいが、何度もゲームを繰り返すプロセスでは、相手のこれまでの出方から相手の戦略、信用度などが推測できるようになる。
本から少しはなれてWebで囚人のジレンマを体験できるサイトを紹介する。(Javaアプレット)
・The Prisoner's Dilemma
http://www.xs4all.nl/~helfrich/prisoner/
このサイトでは囚人のジレンマで、以下のような報酬を設定する。報酬は高いほど良い(懲役年数が少ないということ)。ユーザはJavaAppletでbの値を上下させる。つまり裏切る場合の報酬を設定すると、相手との間で、協調と裏切りがどのようなパターンで発生するかをアニメーションとして、確認できる。
opponent(相手) | |||
---|---|---|---|
cooperate(協調) | defect(裏切り) | ||
player(あなた) | cooperate(協調) | 1点 | 0点 |
defect(裏切り) | b点(設定) | 0点 |
b=0の例 これだと裏切る意味がないので協調(青)ばかり
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b=1の例 この段階でも協調の方がリスクが少ない
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b=1.85の例 裏切り(赤)が限りなく活性化している
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b=2の例 裏切りばかりが圧倒優勢
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b=3の例 ひたすら裏切るのがよいので勢力全開
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では、次に一回一回の戦略を体験できるアプレットもある。
・Repeated Prisoner's Dilemma Applet
http://www.gametheory.net/Web/PDilemma/Pdilemma.html
こちらでは、Collude(協調)とCheat(裏切り)を毎回選択する。相手はこちらの戦略を学習して、対応してくる。協調が続けば相手も協調し続けるが、こちらが裏切ると相手も裏切ってくる。また初回は何を出すか分からない。
報酬表は以下のようになっている。
opponent(相手) | |||
---|---|---|---|
Collude(協調) | Cheat(裏切り) | ||
player(あなた) | Collude(協調) | あなた20:相手20 | あなた0:相手30 |
Cheat(裏切り) | あなた30:相手0 | あなた10:相手10 |
25回の選択を5ラウンド繰り返し、コンピュータに勝てるかどうかを競う。だまされたらだまし返して、やられっぱなしでは終わらないことを示す「しっぺ返し」戦略の有効性や、初回から協調を続けて25回目の最後で裏切って逃げる戦略などが考えられるがみなさん勝てるだろうか。結構難しく、単純な囚人のジレンマも奥深いことがわかってくる。
・GemeTheory.Net
http://www.gametheory.net/html/applets.html
このサイトには囚人のジレンマほかさまざまなゲーム理論シミュレーションのアプレットが公開されていて遊べる。
■ゲーム理論の展開
囚人のジレンマはもちろん基本中の基本なのでこの本ではさらに複雑な事象も広く触れられている。
ゲーム理論は株価分析と投資の決定や、取締役会の多数決、政治の選挙などの戦略に応用されている。この本でも投資にゲーム理論を使って巨額の富を得たジョージソロスの話や議席を減らしたことで逆に影響力を高めた日本の政党の例などが紹介されている。
著者は、数式を限りなく排除し、文系の人間向けにゲーム理論の応用範囲の広さや、面白さを、分かりやすく説明することに成功している。他の難解なゲーム理論の本と違って話題の選び方がとっつきやすく、理論の説明が無駄をそぎ落としており、シンプルである点が高く評価できる。
理論の解説を終えた後半の章では、ベンチャーの新規市場参入の戦略や、日本、アジア、世界経済の動きの読み方、企業のモラルハザード回避の仕組み、戦争と平和など、ゲームから見た現代の読み解きが行われる。ここも秀逸である。
評価:★★★☆☆
参考URL:
ところでナッシュ均衡を考えたナッシュ教授は苦難の人生に悩まされながら、晩年ノーベル経済学賞を受賞した、このアカデミー賞映画の主人公になった人である。
私はかなり感動してしまいました。見てない方はお正月におすすめ。見るのであれば解説は読まないほうがいいです。
Neuro Linguistic Programming(神経言語プログラミング)の本。人間を幾つかの理論で、タイプに分けて、コミュニケーションや交渉の対応策を探る。
例えば、人間には、
VAK代表システム(五感のこと):
Visulal 聴覚
Auditory 聴覚
Kinesthetic 体感覚(味覚、嗅覚、触覚)
の3タイプがいる、という。
ビジュアル重視な人は出来事をまず絵や画像としてとらえ、話すときには目の前に何かがあるかのような表現で話す。聴覚重視の人は、頭を傾け耳に触れて音を聴くように話す、体感覚派の人は、胸に手を当てて体と会話するように話す。相手がどの代表システムを重視しているタイプ化を、使う言葉や態度から推測し(カリブレーション)、同じような表現をすると意思疎通がうまくすすむ、というのが主なNLPの考え方である。
また、質問によって、相手が8種類ある成果や目的(アウトカム)の種類のうち、どれを重視するかで、以下のような分類アプローチを行ったり、
タイプ名(重視すること)
目的型(〜へ向かって)
回避型(〜しないように)
内的型(自分に焦点)
外的型(他人に焦点)
経過型(手順・方法)
結果型(到達視点)
大枠型(詳細よりも概観)
詳細型(細かく理解)
能動型(積極的)
受動型(受身的)
時間軸のどれを重視するか、によって、
未来型、現在型、過去型
のように分類してみたりする。
人間をパターンに分類して対応策を考えるというのは、面接作業や営業など、毎日のように新しい人と会う仕事では、ある程度必要な、思考のような気がする。NLPで一番、面白かったのは、相手がどのタイプかを読み取る方法論である。
「NLPでは、右上が「未来を作る位置だといわれています(左右が逆の人もいます)。プレゼンや企画提案の時、相手の視線をそこに誘導して、「もしもできたらどんな感じですか?」と問いかけてみましょう。ラポールが十分にとれていれば、相手の意識を未来に向けることができます」
相手が、どちらの方向に目を向けて話しているかで、
右上:未来のこと、つくりごとをイメージしている
右下:体感覚を感じている、感覚を再現している
左上:記憶されたイメージを思い出している
左下:自分と会話している
のように判断できるという。
確かに私自身が、過去と未来を考えるときには、それぞれ左下と右上に目がいきがちなので、なるほどね、と参考になった。
評価:★☆☆☆☆
■未来は右上という発想のブラウザー
なぜ方向と時間軸が結びついているのかは以前非言語コミュニケーションの本で読んだ。
英語も日本語も文字は左から右へ書く。だから、左に過去、右が未来なのだ。そして人間の体の上部に、アタマがあるので、良いこと、重要なこと、理知的なことは上に表現されやすいそうだ。「より上の地位へ上がる」だとか「地に落ちる」とか「上からの指示」といった表現は世界中に共通して、あるらしい。
経営者のよく使う「右肩上がりの成長」も、未来は右上にあるべきことを意味している。成長率を表すグラフも大抵は右上へ向かって伸びて行くグラフを書く。逆に作るとわかりにくくなる。
Browse3Dというユニークなブラウザーがある。このブラウザーは立方体の内側の各面にWebを表示する。
・Browse3D
http://www.browse3d.com/
・分かりやすいデモムービー
http://www.browse3d.com/downloads/Browse3Dhigh.wmv
正面に今見ているWebページを表示し、左右にも別のWebページを表示する。向かって左側には直前にみていたページ(履歴)が表示され、右側には今見ている正面のページからリンクされている「次に見るページ」候補がサムネイル表示される。これなど、まさに未来=右の理論を実装していると言えそうだ。
立方体の状態をブックマークとして保存することができるので、関連するページのセットを一度に上下左右のエリアに呼び出し表示させることができるて便利である。似たようなアプリとして2CEがある。
・2CE
http://www.2ce.com/
参考URL:
人をタイプで分類と言うと、
・ネットピープル分類学 その傾向と対策
http://namazu.org/~satoru/pub/handout/shibuyapm4/
ネット業界の問題人物系を分類。いますねいますね。ってオマエも該当するだろというツッコミはなしで。。。