Books-Presentation: 2005年12月アーカイブ
(独)情報通信研究機構本庄情報通信研究開発支援センター長。郵政省通信総合研究所長、埼玉大学教授、日本工業大学教授を歴任。音声情報処理の第一人者が書いた音声技術の本。理系の学部生くらいが対象に思われる。
「ヤマダ タロウ」と「オオヤマ ダイザブロウ」では、選挙で連呼されたとき、後者が聞き取りやすさで有利という音素の話。秘密は音量の差、発声のしやすさ。同じ大きさで話したつもりでも、母音の/i/と/u/は振幅が小さく、/a/と/o/は大きくなるそうである。だから大声コンテストで叫ぶと有利なのは「馬鹿ヤロー」「家事だ!」は適切とのこと。
早口言葉などの研究を通じて、言葉のいいやすさも解明している。母音では/i,u/ 子音では/ch,ts,k,sh,g/が多く含まれると発声しにくく、音量も小さくなってしまうらしい。こうしたノウハウは、企業名や商品名のネーミングにも活かせそうだ。
カラオケ採点機で高得点をあげる方法と言う、長年知りたかった章もあった。カラオケの採点アルゴリズムの説明がある。結論的には、
・できるだけスローなテンポの曲を選ぶこと
・上手に歌おうとせずに、音程とテンポを重視すること
という指南があった。
「昴」―谷村新司 あたりの曲を何の思い入れもなく、淡々と歌うと良いと言うことか。嫌がられそうだが。
こんな実用的なTipsや、ヘリウム空気を吸うとドナルドダックの声になるのはなぜ?、いっこくどうの腹話術はどうなってるの?といった日常の疑問に答えるトリビアも多いが、音声認識や音声合成の技術的な仕組みや研究の課題も、技術用語を使って説明されている。興味を持った人の、研究のとっかかりになるように書かれているようだ。
・大語彙連続音声認識システムJulius
http://julius.sourceforge.jp/
オープンソースの音声認識エンジン。Windowsでも動作するので試してみると楽しい。
・7秒のイメージ・マジックであなたの声はもっとよくなる―相手を説得する、声の印象が変わる、気持ちが伝わる
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003015.html
・怪獣の名はなぜガギグゲゴなのか
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001944.html
・話し方の技術が面白いほど身につく本
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001029.html