Books-Presentation: 2005年10月アーカイブ

・一瞬で信じこませる話術コールドリーディング
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占い師の「人の心を読む」話術を暴露し、営業や日常生活への応用をたくらむ本。

■バーナム効果、ストックスピール

まずは、ほとんどの人がそうだと思えるセンテンスを多数用意する。これをストックスピールと著者は呼んでいる。

バーナム効果、フォーラー効果と呼ばれる心理学の実験では以下のようなセンテンスが使われる。


外向的で愛想がよく、付き合いがいいときもある半面、内向的で用心深く、ひきこもってしまうこともある

外見は自信があるように見えるけれども、心の中はくよくよしたり不安になってしまう面がある

これが自分に該当しているかを問うと、被験者は5ポイント中、4.3ポイントという高い率でYESと答える。

著者のサンプルでは、


あなたは自分に対して厳しすぎることがある

あなたはどんなに頑張っても本当の悪人にはなれない人です

あなたのこれまでの人生はもらうよりも与えることの方が多かったですよね

のようなものが例示される。

我の強いMeタイプと協調性重視のWeタイプの2種類に大別し、それぞれにヒット率の高いストックスピールやそれを誘導する質問群を用意しておくのが秘訣らしい。

■当たったことが強く印象に残るセレクティブメモリ効果

傑作だと思うのは「あの、あなた左利きじゃないですよね?」という質問。これを会う人、会う人に投げかけてみる。これは一種の賭けであるが、失敗のリスクは小さい。

もし相手が右利きなら「そうですよね」「どうしてですか?」「いや、ここのところ、会う人が自然とみんな左利きだったんですよ。まさか今日は違うよなと思って」などとやり過ごせばいいという。結局、人は当てたときのことが強く印象に残るセレクティブメモリのおかげで、はずれたことは無難にやりすごせれば、印象に残らない。

もしも本当に左利きだったら「え、なんでわかるんですか!」と信じ込ませるための第一歩を踏み出すことができる。

相手から間接的に答えを誘導する質問や、当たったことになる予言、「あなたは普通の人よりも....」という人が信じたがる言葉のテンプレートがこの本にはいっぱい紹介されている。営業やコンサルに応用できるかもしれない。

ただ、この手の話術は詐術に近いこともあって、この技術だけでは信頼されない気がする。信頼のベースがあって、より一層満足度を高めたり、顧客を安心させるために、こうした小手先のテクニックを駆使して、お化粧するというのが正しい使い方である気がした。

愛読ブログの俺100にも紹介されていた。

・[俺100]:幻のセミナーの音声ファイルをスペシャルプレゼント :なぜ、占い師は信用されるのか? 「コールドリーディング」のすべて石井裕之著
http://blog.zikokeihatu.com/archives/000822.html
著者はテレビで活躍中らしい。
・[俺100]:一瞬で信じこませる話術コールドリーディング
http://blog.zikokeihatu.com/archives/000684.html

以下、「話術」関連書評。

・「心理テスト」はウソでした。 受けたみんなが馬鹿を見た
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003417.html

・人を10分ひきつける話す力
hhttp://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003857.html

・ワルに学ぶ「実戦心理術」
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003180.html

・NYPD No.1ネゴシエーター最強の交渉術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003031.html

・トップに売り込む最強交渉術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000324.html

・心の動きが手にとるようにわかるNLP理論
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000609.html

・「できる人」の話し方、その見逃せない法則
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000445.html

・悪の対話術
hthttp://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002109.html

・ハーバード流「話す力」の伸ばし方!―仕事で120%の成果を出す最強の会話術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000228.html

・パワープレイ―気づかれずに相手を操る悪魔の心理術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000150.html

・ソリューション・セリング―賢い売り手になるための10の戦略
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000145.html

・外見だけで「品よく」見せる技術 ファッション、しぐさ、話し方
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003381.html

・話し方の技術が面白いほど身につく本
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001029.html

・人生を変える黄金のスピーチ〈上〉準備編―自信と勇気、魅力を引き出す「話し方」の極意
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001456.html

・人生を変える黄金のスピーチ〈下〉実践編―自信と勇気、魅力を引き出す「話し方」の極意
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002404.html

・人を10分ひきつける話す力
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著者はベストセラーメイカー斉藤孝氏。毎月のように新刊を出すためか、この人の本は玉石混交な印象があって、買うときに警戒しているのだが、この本はあたりだった。

この本では、話で人をひきつけるには、意味の含有率、ライブ感、ネタの豊富さ、身体性の4つが重要なポイントである、とまとめている。

話すときの語数は、文章量に換算すると1分間で400字一枚程度。5分で2000字、10分間では4000字相当になる。3分間を超える話は、「意味の含有率」は相当濃くないと、仲間内の会話ではノリの良さでごまかせても、パブリックな場所では通用しないという。

そしてライブ感の重要性。著者は次のように表現している。


今ここで、自分たちを目の前にしているからこそ湧き出ている言葉だと思ったときには、聞き手は積極的に受けとる姿勢を持つ。

ライブ感を重視すると意味の含有率が低くなりがちであるが、逆に事前に原稿を準備しすぎるとライブ感を失う。このジレンマを乗り越えた向こうに「最高の話」があるようだ。日頃からネタを豊富に用意した上で、


話すときには、頭を二分割することが必要だ。もちろん、今話している話に一つの頭を使うが、もう一つの頭では、次に何を話すかを考えるのだ。

という冷静な判断で適宜、適材適所な持ちネタを使って、ライブを組み立てるのが極意である。人の記憶に残るには身体性を強調しなさいというのも参考になる。


私は、話の基盤には、つねに身体性を置いている。あるいは、技、コツなどから絶対に離れない工夫をしている。すると、その場が盛り上がったか、盛り上がらなかったかとはまた別に、聞いた人に影響を与える可能性が高い。

「人の心に種子を蒔く」べきだという。話の内容が難しくても行動や習慣を変えるアドバイスが入っていると、その部分だけは聴衆に伝わり、長く記憶されているものだという著者の経験談がある。

さすがに売れっ子の話し手であるだけに、実践者のノウハウと達人の境地がいっぱいで参考になる部分が多かった。

まだ10月だけれども、私が今年取り組んだ能力開発は「話す技術」だったなあと思う。大学で一回り以上年下の集団(しかも彼らはこちらが気を抜くと遠慮なく寝てしまう)に毎週教える機会があって、随分勉強になった。特にライブ感は鍛えられたなあと思うが、まだまだで、年初にこの本を読んでおきたかった気もする。

・デジハリ大学「リサーチ&プランニング」 
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003657.html

授業やイベントでは、たくさんのゲストをお呼びしてきた。数十人のゲストのトークを見ていて思ったのは、もうひとつ「個性、人柄」というのも大切な要素としてある、と感じている。

事前の準備と完璧なテンプレートに従って自己の表現を徹底管理する「MBA的な話し方」はビジネスシーンでよく見られるが、あまり記憶に残らないことが多い。意味は伝わるが、心に残らない。スポーツで言えば「記録に残る」プレイであって、「記憶に残る」プレイではないと感じる。

身近でみたゲストスピーカーでは、アイデアマラソンの樋口健夫さん、「メール道」の久米信行さん、の話し方が、うまく個性、人柄がにじみ出るお手本だったと思う。お二人とも「MBA的」とは違う、人肌感が残る話をされていた。

・デジハリ大学「リサーチ&プランニング」 第6回講義録
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003521.html

・無敵会議第8回 「Re:会議」 満員御礼に感謝 報告第2弾
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002081.html

私も10年、20年後になって学生に「あのときの話が今も印象に残っています」と言われるような話をしたいなあと思う。これには場数と経験が必要なのかもしれない。

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