Books-Philosophy: 2013年6月アーカイブ
いかにもフランス人らしい哲学的な前衛マンガ。
ある日、住民登録所で「名字も名前も神です。一般には神と短く呼ばれています」と答える人物が現れる。さまざまな取り調べや尋問にあっても神であることは疑いないことが判明して世界は騒然とする。そして群衆は巨大な裁判所を立てて、神の責任を問う「永遠の裁判」が開く。神の責任とは何か。神の能力とは何か。あらゆる職業の人々がディスカッションをする。
神は世界を創造した後、すぐに舞台裏に引っこんで、自分が発明した因果律に支配された世界の出来事を観察している存在だという見方が弁護側のスーパーの従業員から提示される。しかし、そんなことは許されない放任であって有罪ではないかと原告団は返す。終わらない議論。神は裁判官をじっとみつめて、全知であるとはどういうことかをたとえ話で説くと、裁判官は無言で退場する。神をめぐる議論をメタ視点から俯瞰する。
裁判後にはメディアによって顔写真が広められてアイドル化する神。ゴッドランドというテーマーパークができて、天国や地獄のアトラクションにキャラクターグッズ。本や映画、テレビでも神は大人気のタレントであり、コンテンツになる。神様降臨という大儲けのチャンスに誰もが群がる。現代における神を風刺している。古今東西の哲学や小説などから多数の引用や言葉遊びが仕掛けられており、読む側の教養が求められる。