Books-Misc: 2013年5月アーカイブ
元経済企画庁長官の堺屋 太一は、通産省時代に日本万国博覧会を成功させたことで知られる。大阪で開催された万博の入場者数は6422万人で、日本人口の6割相当が訪問したことになる。まさに日本を代表するイベントプロデューサーは、イベントをこう定義している。
「臨時的な装置と演出によって
非日常的な情報環境を創造し、
多数の人に対して
通常では感じられない心理的肉体的な刺激を与え、
特殊な情報伝達状況を生み出す」
臨時的、非日常性、多人数対象、心理的肉体的刺激、情報伝達がポイントだ。成功したイベント、失敗したイベントを取り上げて何が間違っていたか、批評する。
それにしても国民の6割の来場者数は凄い。万博は後半の入場者数の加速があったそうだが、そこには日本人の集団心理があったのではないかと分析あれている。社会科学の実験で「みんな持ってるよ」「みんな食べてるさ」の「みんな」とは5%のことという説もあり、この閾値を超えると意思決定コストが下がる。みんなが行くならば自分は行くか、行かないかではなく、いつ行くかの問題になるのだ。
企画においては「芸術と文化に多数決はない、決断と説得があるのみ」が信条で「ブレインストーミングが個性と独創を阻む」。自らが責任を取り直接管理する科学的プロデュースこそ重要であり、前例の模倣などありえない、なぜなら聖なる一回性こそ、みんなが参加する最大の動機づけだから。
6つのアトラクティブス
歴史
フィクション
リズム&テイスト
ガール&ギャンブル
ショッピング
サイトシーイング
このうち3つを選んで重点開発するといいのではないかなど、独自のイベントプロデュース論を展開している。
堺屋氏は若い頃に万博を企画できたことを振り返って、ひとつには日本には関ヶ原の戦いを起こした石田三成のように「偉くない人が大事業ができる」伝統があるという。そして「年功序列の厳しい日本で、なぜ万国博に限り20代30代の若者が大活躍できたのか。それは「万国博がこれほどの大行事とは誰も思わなかった」からだろう。と述べている。
若者が活躍できたインターネットも同じかもしれない。