Books-Misc: 2013年2月アーカイブ
インタビューの面白さがたっぷり味わえる傑作。
鳶、クレーンオペレーター、鉄骨工、サッシ取り付け工、宮大工など、建設業で働く現場の労働者37人にインタビューして彼らの素顔に迫った。「この仕事のやりがい?そういうものは、なければないで一向に構わないんじゃないですか」。血の気の多い荒くれ者の集まりというイメージがあるがという問いに「うん、実際そうでしょう(笑)」と答える鳶。飾らない建築現場のオヤジ達の肉声が聞こえてくる。
「昨今、いかに川下から川上へさかのぼれるか、使われる側から使う側へ立場を逆転させるか、そんな"成功法則"を説いた書物が書店の棚をにぎわしているが、少なくとも彼らの心的傾向に、そうした「成りあがり」的上昇志向は見当たらない。いつもの場所で、いつもの仕事を、いつものように完璧な状態にまで仕上げていくだけ、それ以外には関心はないかのようである。」
仕事にプライドを持っている人もいるが、持っていない人もたくさんいる。年配の人が多いので、身の丈以上の夢を抱かない。現場の厳しい上下関係や理不尽に慣れており、自分のできることをできる範囲でやるまでだと覚悟している。
上昇志向で意識の高さを競うようなビジネスの世界と違った就業観が新鮮に思えた。働き方を考えるうえで「ワークシフト」と並んで読んでおくべき一冊ではないかと思う。
●目次
■鉄であれコンクリートであれ
鉄骨鳶(湯本春美)「思いやりで仕事が回る」
クレーンオペレーター(千葉清和)「勝負は一本目の柱で」
鉄骨工(池田章)「中途半端な人間が必要なときもある」
非破壊検査(小正雄)「コンパニオンのように」
鳶・土工(井上和之)「ちゃんと働いていれば、ちゃんとした生活ができる」
解体工(村上文朗)「とにかく近所の人を大事にしてる」
型枠大工(佐藤豊)「親方の仕事は雰囲気づくり」
ALC建て込み(小堺恒昭)「子供に見せられる仕事って」
ほか・・・・・
■裏か、表か
給排水設備(小池猛)「一本一本心臓から血管をつないでいくように」
電気設備(保坂和弘)「『最後』の仕事」
石工(関田嗣雄)「伝説の親方」
タイル工(高橋政雄)「それから、劇団に入団しました」
左官工(浜名和昭)「必ず誰かが見ている」
ガラス工(三本正夫)「機関銃はダメだけど」
塗装工(ロバート・マティネス)「『遊びながら』がちょうどいい」
建具吊り込み(田辺敏之)「未知のものを目の前にしたとき」
カーペット張り(樋口仁朗)「膝が命」
畳張り(浜崎和馬)「いろいろ誤解されているようで」
ほか・・・・・
■木と伝統に魅せられて
素材生産(塩野二郎)「大事なのは人間の中身だからね」
林業(田中惣次)「誰が山を守ればいいのか?」
製材(沖倉喜彦)「いま、木がものすごくよく見えてきている」
木挽き(東出朝陽)「何が見えてくるかは、まだ分からない」
曳家(飯嶋茂)「どんな建物にも急所ってもんがある」
洗い屋(海老沢博)「クスリで洗ってるんじゃないんだよ」
宮大工(金子浩晃)「やりたい気持ちをどこまで抑えられるか」
宮彫師(渡辺登)「たとえ金儲けはできなくとも」
社寺板金(本田三郎)「リズムをつくって叩くだけ」
ほか・・・・・
・MMR-マガジンミステリー調査班-(1): 1 (少年マガジンコミックス) [Kindle版]
出版社がつける電子書籍化の優先順位は謎である。
なんでこれが...。『ムー』好きとしては衝動買いしてしまった。
少年マガジン編集部のマガジンミステリー調査班ことMMRが、UFOやUMA、超能力、心霊現象などの超常現象の謎に迫る。キバヤシ・ナワヤ・タナカ・イケダ・トマルという実在の編集部員をモデルにした隊員たちが、遭遇した不思議に対して、最初は懐疑的に接するが、だいたい最後はオカルト肯定で終わる。私はすでに成人していたが、少年マガジン連載だから、子供に与えた影響は結構大きかったのではないかと思われる。
インターネットがなかった頃は、雑誌などのマスメディアの信ぴょう性は今よりずっと高かった。そこに描かれる超能力者の真偽について調べようがないわけで、MMRみたいに肯定的に描かれると、信じちゃう子供もいたはずである。罪作りな漫画だと思う。今だったらちょっと検索すればわかるけれども。
政府機関の陰謀や世界を裏から操る秘密組織がつぎつぎに登場して、続き物のストーリーとしても結構楽しめた。和製のドタバタXファイルみたいなものだった。この漫画は連載期間が1990年-1999年だったこともあり、ノストラダムスの予言は最大のトピックでもあった。そして予言とともに連載終了。知る人ぞ知る迷作といえる。
感動したコミック。大傑作。
卯月妙子(うづき・たえこ)の自伝的近況報告的な漫画。
「1971年、岩手県生まれ。20歳で結婚。しかし程なく夫の会社が倒産し、借金返済のためにホステス、ストリップ嬢、AV女優として働く。排泄物や嘔吐物、ミミズを食べるなどの過激なAVに出演。カルト的人気を得る。その後夫は自殺。幼少の頃から悩まされていた統合失調症が悪化し、自傷行為、殺人欲求等の症状のため入退院を繰り返しながらも、女優として舞台などで活動を続ける。さらに自伝的漫画『実録企画モノ』『新家族計画』(いずれも太田出版)を出版し、漫画家としても活躍」
という過激なプロフィール(これ以外にもステージ上で首を切って自殺を図ったり、立派な彫り物を背負っていたり...)の女性漫画家が、居酒屋で趣味があった還暦過ぎじじいのボビーに交際を申し込む。3度結婚に失敗しているが、人格的にも経済的にも余裕のある大人の男ボビーは、そんな彼女のすべてを真正面から受け入れる。純愛。二人は真剣に結婚を考えるようになる。
春が来そうなムードだったのに、彼女の統合失調症が悪化して、事態は急変、言葉を失うような悲惨な地獄へ堕ちていく。どん底からボビーをはじめ周囲の暖かい支援を受けながら、回復へと向かう長い長い道のりを300ページ超の大作として描いた。
生き地獄のような絶望や、統合失調症の見せる強迫観念的な幻覚を、リアルに伝えているが、絵柄は明るくユーモラスなタッチで描く。軽いタッチで重い現実を描く。この境遇にして、この才能が発揮された。笑いながら涙が出てくる。
なんといっても大人の男ボビーの包容力がかっこいい。日常のダメな部分も描いてリアリティを出しつつも、彼女が危機の正念場になると、これ以上ないくらいの優しさと真面目さで恋人を守り続ける。たぶんこの作品は著者からボビーへのラブレターでもあるのじゃないかと思った。
面白いな、これ。子供って無邪気に殺すという言葉を使うけれども、大人の漫画家が本気で殺すという言葉で遊んだら、どういう作品ができるか。かなりいい線いっているぞ、1巻読んでその後の展開がとても気になる。
"僕等は殺し屋。標的は、先生。"
最高時速マッハ20で動き回り、再生変形能力を持つ謎の超生物は、先日、圧倒的な破壊力で月の7割を蒸発させた。来年には地球も同じようにしてやると各国首脳を脅迫しているが、一般人はまだ超生物の存在を知らされていない。
なすすべもなく戦慄する首脳陣に対して、タコみたいな超生物は日本の椚ヶ丘中学校3年E組の担任に赴任したいと申し出てくる。目的が意味不明だが、担任になればマッハ20で逃げ回られずに済む。毎日30人の生徒たちが"先生"を殺すチャンスがある。卒業までに先生を殺せなければ地球が滅亡するという秘密任務をおって、毎日教室では先生の暗殺が試みられる。
普段の"殺せんせー"はめちゃくちゃ強いので、とても手が出ないのだが、熱心な教師でもあるため、生徒と心が通った隙に油断をみせるので、それにつけこんで暗殺のチャンスがあったりする。
シュールなギャグ漫画。ひたすら先生を殺す話なのに殺伐とはしておらず、むしろ、教師と生徒の真剣勝負を通して、良い教育とは何かを考えさせられたりして、ひきこまれるいい作品。
暗殺教室 少年ジャンプ 公式サイト
http://www.shonenjump.com/j/rensai/ansatsu/