Books-Misc: 2012年5月アーカイブ
元気でビルマの難民研究に取り組んでいた女子大学院生が、突然に自己免疫疾患の難病を発病し、生き地獄のような闘病生活へ突入する。絶望のあまり死にたいとさえ考えるが、医者や看護師にも支えらて、なんとか前へ一歩ずつ進んだ日々を振り返った本。難病であるから、簡単に治るわけもなく、今も彼女は闘病中だ。
生きる勇気をもらえる本だ。陰々滅々とした闘病記ではない。気合一発で乗り切る根性本でもない。著者は冷静に自分の苦境を分析して、生きるための戦術を立てる。常時高熱で薬漬けだから、ただ暮らすだけでも重労働なのに、病院外へ決死の外出を試みる。難病同士で恋までしているのは驚きだ。
次々に彼女を襲う悲惨な症状。だがユーモア感覚たっぷりに地獄の日々を語ってみせる。おしりの肉が腐って流れてしまっても「おしり大虐事件」発生だ、我ながらすごい話だな~、とネタ化してみせる。文章も抜群にうまい。ある意味これはエンタテイメントである。読者を勇気づける真のエンタテイナーであると思う。
そして病気のどん底を価値創造の場にしている。どんな崖っぷちでも、後世に残るような仕事を成すことができる例としても、とても参考になった。
実は私、ブログでは黙っておりましたが、4月初めに左足首を骨折して3週間、ギプスと両松葉杖の日々だった。はじめての松葉杖の生活は本当に大変で、気力体力の消耗戦でした。最初の数日は、フィジカルなダメージには弱い自分に愕然とすると同時に、あとどのくらいこの厳しい状況が続くのだろうかと絶望的になった。そんなときに、友人がこの本を読んでみたらとすすめてくれたのだった。
おかげで絶望からはすぐに回復して、この期間にできることをやってやろうと思い、生活を立て直すことができた。仕事も休んだのは1日で済んだ。すべてはこの本"困ってる人"のおかげさまさまである。
今年のベスト本に選ぶかもしれないくらい素晴らしい。感動を通りこして人生に影響を受けた一冊となった。これから困っている人がいたらこれを紹介しようと思う。
#この本を骨折して松葉杖になって落ち込んでいる私に直後に薦めてくれたクォンタムアイディ代表の前田さんに感謝。
金正恩政権になって不気味さを一層増している北朝鮮。
大宅荘一ノンフィクション賞を受賞したこともある北朝鮮事情に詳しいジャーナリストが、金正日時代の知られざる内情を暴く。
著者はまず金正日時代とは、
1 軍事独裁であった
2 核開発をして反政府機運を反米へすり替えた
3 父親・金日成を殺した
4 300万人を餓死を装って殺した
という4つの大きな動きに要約できるとまとめている。かなり刺激的な内容。
金日成は1980年に金正日を後継者として披露して以降、息子に内政のほとんどを任せていたが、それが破たんしていたことを長く知らなかった。権威がない息子に箔をつけえるために核開発を実行し、米国との緊張の駆け引きに持ち込んだ。上に上がってくる報告を信じて、農業はうまくいっていると思っていたが、現実には飢餓で数百万人の人間が死んでいたという。息子正日は飢餓を使って敵対する勢力を大量に殺してもいた。そして米国との関係で意見が対立していた金日成の急死にも金正日が深く関わっていたと著者は断言する。
この本の情報からすると金正恩はかなり危険な人物だ。むしろメディアで放蕩なドラ息子と報じられてきた長男の金正男が教養や正常な判断力を持った人材であるらしい。
「北が通常兵器で攻撃するだけで、朝鮮半島の死者は100万人規模。負傷者はその十数倍。核兵器を使うならばその被害は想像を絶する。」
日本にとっても北朝鮮は大地震と同程度にリスク。どちらもどうなるか予測できないのが共通点。ここに書いてあることがどの程度真実なのかは確かめるすべがないわけだが、やばそうな雰囲気が漂っていることはよくわかった。