Books-Misc: 2011年8月アーカイブ
東北の地で神様を探す。いがらしみきお渾身の大作漫画 第1集。
大傑作になるかもしれない。断定しないのはまだ序盤だから。だがここまでは完璧。
昭和29年、宮城県の田んぼだらけの田舎の村に生まれたイサオは、酒乱の叔父に虐待されながら豚小屋で育てられた。不気味な雰囲気を持ついじめられっ子のイサオは小学5年生の時、その叔父が謎の死を遂げて身寄りを失う。そして河原で独り暮らしをするが、生き倒れになって、医師の家に引き取られる。その家の長男で同い年の雅彦がもうひとりの主人公。
雅彦は一緒に育てられるうちに、イサオの特異な能力にきがつく。イサオは触れたものの魂を乗り移らせるような不思議な現象を起こすことができた。見えないものを見る力を持っていた。幼少のころから魂とは何かに強い関心を持っていた雅彦は、イサオに強く惹かれて、二人で家出の旅にでる。イサオがうまれたときに見たというカミサマ「トモイ」を探すために。
第1集発売記念として『いがらしみきお特別インタビュー』という紙がはさまれていた。
ここで「宗教というものは科学と同じで、いつも「1」から始まってると思うんですね。でも、私がずっと問い続けているのは「0」のことなんです。」と著者は言っている。
キリスト教の「○○はこういうふうに言った」ではなくて、科学の「宇宙はビッグバンで始まった」でもなくて、じゃあ神様やビッグバンが世界を創造する前はどうだったのだ?というレベルで、存在論に近い探究が、雅彦とイサオの行動によって描かれていく。
東北仙台在住で被災者でもある著者が「幼い頃からずっと考えてきた、生と死のこと。命の意味。その先にある"答え"を、今なら描ける気がする」と満を持しての表現であり、壮大な予告編的な第1集のつづきが大変気になる。