Books-Misc: 2010年12月アーカイブ

加害者家族

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・加害者家族
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連続幼女誘拐殺人事件、神戸連続児童殺傷事件、和歌山毒物カレー事件、長崎男児誘拐殺人事件、秋田児童連続殺人事件、英国人女性殺害事件、地下鉄サリン事件、山梨幼児誘拐殺人事件、名古屋女子大生誘拐殺人事件、死亡ひき逃げ事件、5000万円恐喝事件、子猫虐待事件...。

凶悪事件の加害者の家族や親戚たちも、相当に悲惨な生活を強いられているという実態を、個々の事件で明らかにする。加害者の逮捕の直後から、家族に対する誹謗中傷、個人情報の流出、私生活の暴露が始まる。そして失職、転居、離婚、高額の損害賠償請求などありとあらゆる不幸が降りかかってくる。あまりの絶望やストレスによって自殺する家族も少なくない。

そして現代において凄まじいのが、インターネットによる個人情報の流出や、2ちゃんねる、まとめサイトなどによる加害者周辺情報の暴走である。「祭り」の「燃料」として投下される加害者の周囲の情報はあっという間に集約されて、家族の個人情報が特定される。「電凸」(電話による突撃)や中傷記事、写真の公開といった悪意が、加害者家族を襲う。

日本と米国における加害者の家族の比較が興味深かった。米国でも日本でも、加害者家族には大量の手紙が届くのだが、日本ではもちろん内容は、家族が起こした事件への非難と攻撃である。ところが米国では、あなたたち家族のために祈ります、のような激励が多いらしいのだ。罪は個人にあって家族にあるわけではないという個人主義の文化が背景にあるようだ。

「身内から逮捕者が出ることによって、家族は混乱し、崩壊の危機に直面する。その家族を支援することによって、逮捕者が出所する時の受け皿とすることができ、ひいては再犯のリスクを減らすことになる。」と、著者は身内の犯罪で生き地獄に落とされる日本の家族を救うしくみがないことを問題視する。

凶悪犯罪が起きるとワイドショーや週刊誌は加害者家族の動向も報道する。だが、それもネタとして視聴者が飽きるまでの短期間に過ぎず、その後に彼らがどういう生活を送るのかは、知られてこなかった。その悲惨な実態の記述に、日本は加害者家族への風当たりが本当に強い国なのだということを改めて実感した。

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