Books-Misc: 2010年10月アーカイブ
面白い本は対話の中で記憶の古層から発掘されることって多い。「最近読んだ本で何が一番よかったですか?」なんて漠然と聞かれてもなかなか出てこないのだが、本好き同士であんなのもあるよ、こんなのもあるよとやると、芋づる式に引き出されるものだ。
書評家の岡野宏文氏と豊崎由美氏が小説家になるための必読書を教える対話式ブックナビ。特別ゲストに桜庭一樹氏。
「ファンタジー小説が書きたかったら、得意分野をひとつ持て!」
→ハリポタのJKローリングに学ぶ
「巧みなプロットを立てたかったら、分析する目を持て!」
→「アヒルと鴨のコインロッカー」伊坂幸太郎に学ぶ
「コミック・ノベルが書きたいなら、自分は笑うな」
→「太陽の塔」の森見登美彦に学ぶ
「うまい比喩を使いたかったら、言葉を知れ」
→「博士の愛した数式」 小川洋子に学ぶ
など、各章では一つの小説のテクニックとお手本になる一人の作家を論じる、はずなのだが、どんどんキーワードが芋づる展開していって、多様な分野の面白そうな本がいっぱいあがってくる。
そもそも岡野氏と豊崎氏は書評家であって、小説家ではないわけだから(書いたことがあるかもしれないがメジャーとはいえないでしょう)、ここにある言葉通りにしても人気作家になれるわけではないと思う。だが、これらの本が人気作家になるために役立たないはずもないように思えて、作家志望の私はとりあえずまた10冊ほど買ってしまった。
大人も楽しめる絵本、というか、大人でないとよさがわからないのじゃないだろうか。とてもサイズが大きい超大型本。イギリスの絵本作家キャスリーン・ヘイルが1942年に描いた。農場の経営者になった猫とそこに住む動物たちの物語。
ねこのオーランドー一家は、ピクニックの途中で見つけた荒れた農場を買収して自分たちで再建を図ることに決める。最初の仕事は家に入りこんだ動物たちを外へ追い出すこと。客間のソファーには豚がのソフィーねているし、牛はかべに顔を突っ込んでいるし、メンドリは台所のお皿の上ですわっている。馬のバルカンはわらの屋根をむちゃむしゃ食べている。無理に追い出そうとしても難しそう。
そこでオーランドーたちは、みえっぱりな馬のひげをとかし蹄をみがいてやる。するといいところをみせたくなって外へでかけていく。きれい好きの豚には豚小屋をおおそうじをしてやると喜んで小屋へもどっていく。鳥小屋にラジオをおいて音楽番組を鳴らすと、メンドリたちはたまごをうみはじめる。
みんなが働くために気持ちの良い環境をつくる。ひとりひとりの性格や長所を考えて、それぞれのモチベーションを引き出すのが、マネージャーのオーランドーの仕事なのだ。多様な動物たちは、種が違うわけだから、どうしたって勝手ばらばらに行動しがちだ。どうにかこうにか調整して、最大の生産をどうやって達成するかが経営者の腕の見せ所。
なるほど1942年の作品かと思うのは「農場を買う」というタイトルからもわかるように、実にわかりやすい資本主義の構図があること。ご主人(正体不明)から資金調達をして農場を買収したねこのオーランドー一家は資本家で、買収された農場に住みついていた動物たちは労働者である。そして、はたらくみんなを幸せにしながら、最大利益を達成する有能な経営者の仕事がテーマなのだ。
とはいっても、そんな難しいことは一切言葉では書かれていない。最初から最後までオーランドーと動物のドタバタ喜劇だ。子供に経営の醍醐味を、経営用語を一切使わずに、興味を持たせることができる内容。会社のマネージャー研修で題材にしてもいいかもしれない。
ビストロパパ滝村さんが料理本を出版した。
「橋本さんは料理はしますか?」という話になって、「たまにですが、最高級のオリーブオイルと輸入パスタを選んできてスペシャルなパスタを作ったり、巨大な焼きプリンをつくったり...」と答えたら「男の趣味ですね」とばっさり斬られた。
デジタルハリウッドの役員として忙しかった滝村さんが、料理に目覚めたのは長女の誕生がきっかけ。「家族と一緒においしいご飯をお家で食べたい」と思って見よう見まねで料理を始めた。技術的にはきちんと計量することだけを意識して。
私のように自分が食べたいものを、自分の都合で作るのは男の趣味料理なのだ。時間がかかるし油や塩分がたっぷりで毎日食べたら問題がある料理。一方、ビストロパパが目指すのは「自分のお腹が減っていなくても、家族のために作る、お父さんの料理」。家族に喜ばれて感激される料理だ。作る過程に"子手伝い"も参加させる。大人は"アト辛大人味"で。ビストロパパの料理は家族のコミュニケーションメディアでもある。
この本にはパパだけでなく料理が苦手なママにも役立つ71のレシピが紹介されている。
どれもこれも写真がおいしそう。
「ごま塩油でキャベツ」「ほうれん草のお浸し」「卵焼き」「焼き魚」「牛ステーキ」などといったキッチンパパ(Level1)
「ハンバーグ」「カレーライス」「チャーハン」「炊き込みご飯」「天ぷら」など定番が多数登場するエプロンパパ(Level2)
「パエリア」「ピザ」「ミネストローネ」 などビストロパパ(Level3
と3段階の難易度で分類されていて、LEVEL1と2は手順は4つしかないシンプルさ。計量をちゃんとして、この通りに進めれば、おいしくできてしまうのだ。私は何度かビストロパパの料理を御馳走になっているので、おいしさは太鼓判を押せる。
「パパが料理を作り、食卓が笑顔にあふれる」世界を作るために、パパ料理文化のエバンジェリストになった滝村さん。テレビ出演やイベント登壇の情報がブログに日々掲載されています。気になった人はのぞいてみてください。
ビストロパパのブログ
http://blog.livedoor.jp/tuckeym/