Books-Misc: 2010年9月アーカイブ

しおんの王

| | トラックバック(0)

・しおんの王(8) <完>
512-B3WMxWL__AA300_.jpg

久々に夢中で読んだ将棋漫画。

幼い時、目の前で両親を惨殺されたショックで口をきけなくなってしまった少女紫音(しおん)は、棋士の家で大切に育てられて、今は女流プロ棋士を目指している。財閥令嬢で名人に弟子入りしている二階堂沙織、賞金稼ぎのため女装してまで将棋を指す斉藤歩などライバルたちとの運命的な出会いから全8巻の幕が開く。

両親を殺した犯人は将棋に縁があるものらしく、棋界で頭角を現した紫音をつけまわし脅迫メッセージを送ってくる。紫音は犯人をみつけるためにも、一生懸命にトーナメントを勝ち進む。紫音の将棋人生と殺人事件の犯人探しが同時進行で進むスリリングな構成。

難しい状況にも明るい顔で果敢に立ち向かう紫音の健気さが最大の魅力。振り返ってみると設定にはやや無理もあるわけだが、脇役含めて、キャラクターの魅力で最後まで引っ張っている。だれずに面白かった。

各話の間に物語内の対局の棋譜解説がついている。作者は実際の将棋の局面をストーリーに反映させているのだ。将棋に対する愛を感じる作品であり、私はこの漫画に感化されて最近、将棋の実況番組を見るようになってしまった。将棋は内面のドラマだ。

テレビアニメ化された人気作品らしい。まだ観ていませんが。

・視えるんです。 実話ホラーコミックエッセイ
51ZTXMFljSL.jpg

実話怪談の漫画家による体験談。雑誌『幽』掲載の書籍化。

・伊藤三巳華ブログ
http://ameblo.jp/itoumimika/

私は子供のころから怪談大好きで、自分でも幽霊見たい、見たいと思っているのに、全然見えません。この作者はオバケ団地で育ったせいで見たいというわけではないのに見えてしまう体質。でも見えるだけで祓うことはできないので一方的にからまれてばかり。だから、やりすごし方には長けています。たとえ見えても見えないふりをしていると心霊に絡まれないものなんですね。見えても無視するのが吉。ほんとか?。

この本には、アシスタント時代に大物漫画家のオフィスで体験した出来事や、怪談イベント、旅先で起こった怪異など、自らの体験をベースに、16篇の漫画が収録されています。ちなみにあまり怖くはないです。見えるだけで祟られたりしないからです。

顔だけ大きい黒髪の女の人、スルスルと降りてくる首をつった女、白袴で仁王立ちの武士、布団をめくったら寝ているおばあさん、深夜の温泉で聞こえてくる歓談の声。禍々しい体験が盛りだくさんですが、なんでもネタととらえるたくましさで乗り越えていきます。ホラーですがコミカルです。

・てにをは辞典
51jBpKf-rmL__SL500_AA300_.jpg

コラムやエッセイ、創作など、自己表現する文章を書く人を支援する本。「逆引き頭引き日本語辞典」の小内一氏編纂。

「空が晴れる」なら「空」と「晴れる」。

「を」「が」「に」「の」を介して結びつく言葉の辞書。

近現代の大衆小説・時代小説・純文学・評論など250名の作家の作品から、編者が20年かけて採集した語例が60万語。主に文庫になった本から選んでいる。

「言葉は単独でもつかわれますが、多くの場合、二つ以上の言葉が結びついて使われます。この結びついた形を、本書では、「結合語」と呼ぶことにします。国語辞書は言葉の意味と文法的な解説を主とするので、紙面の制約上、わずかしか結合語の例を載せられません。 本書には、言葉の意味と文法的な解説はありませんが、のべ六十万語の結合例を載せています。本書は、国語辞書を補完する一冊として使っていただくと、より力を発揮すると思います。」

実際、ちょっと開いただけで、インスピレーションが広がることがある。

たとえば「告げる」を引くと、

「つげる【告げる】▼愛を。秋の深さを。ありかを。ありのままを。意志を。暇を。裏切りを。噂を。大売出しを。おおよその見当を。おさらばを。思ったままを。おやすみを。開演を。開始を。外出を。額を。火災を。可能性を。勘定を。危機を。危急を。季節の到来を。吉兆を。決まりを。気持ちを。急死を。旧姓を。急変を。曲名を。苦しさを。苦労を。決意を。結果を。決別を。結末を。心持を。事柄を。事の次第を。言葉を。最後を。作戦を。さよならを。死を。事件を。時刻を。自殺を。事実を。事情を。失踪を。辞任を。終焉を。終局を。襲撃を。住所を。終了を。正午を。症状を。承諾を。承知した旨を。消滅を。職業を。職場名を。進捗状況を。姓名を。接近を。注文を。早春を。存在を。誕生を。地名を。注文を。電話番号を。到着を。逃亡を。到来を。永の別れを。名前を。妊娠を。発見を。発車を。春のおとずれを。番号を。番地を。病状を。病名を。不在を。無事帰還を。本当のことを。目的を。行く先を。夢を。要件を。用事を。容積を。容態を。来意を。来客を。来訪を。理由を。臨終を。別れを。臆した声で。あからさまに。あらわに。確実に。世界に。全員に。手短に。控えめに。ひそかに。墓前に。明白に。いちいち。おずおずと。きっぱりと。さらりと。粛然と。すらすらと。せわしなく。誰にともなく。たんたんと。力強く。はっきりと。ぼそりと。ぽつりと。運転手に行き先を。鶏鳴暁を。仕事が一段落を。鶏が時を。一日も早く。(饗宴が・結婚生活が)終わりを。(戦雲・風雲)急を。▲暁を~(鐘の音・鶏の声)」

告げるに接合するリスト、まるでひとつの詩みたいだ。

▲は結合語の前に、▼は後に来る例である。ぴったりの言葉や表現をさがす、似た言葉を探す、違和感を覚えたときに直す、など、言葉に詰まったら、ちょっと開いてみると、状況を打開できたりする。

・究極版 逆引き頭引き日本語辞典 名詞と動詞で引く17万文例
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/11/17.html

このアーカイブについて

このページには、2010年9月以降に書かれたブログ記事のうちBooks-Miscカテゴリに属しているものが含まれています。

前のアーカイブはBooks-Misc: 2010年8月です。

次のアーカイブはBooks-Misc: 2010年10月です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

Powered by Movable Type 4.1