Books-Misc: 2010年2月アーカイブ
知っていれば、助かるかもしれない。
秋葉原無差別殺人事件、十四歳少年バスジャック事件、池田小児童殺傷事件、阪神大震災、和歌山毒カレー事件など日本を震撼させた数十の殺人事件や事故、災害における死を検証して、どうしたら生き残れるかをアドバイスする内容。著者は30年間東京都の監察医をつとめ二万体もの変死者の検死解剖を行った人物。
刃物でいきなり刺されたらどうするか?。とりあえず腕の外側で防ぐ。出血したらまず色を見る。黒ずんだ血なら静脈をやらてたのであわてなくてよい。鮮紅色の赤だったら早急に対処しないと危険。動脈の位置は知っておけ。
人質として首にナイフをつきつけられたら、喉を切られても即死しないが、頸動脈を切られると死ぬと考え、万が一でも耳の下を切られないように意識せよ。プロの殺し屋は喉笛をかき切ることはしないのだそうだ。
私が年に1回くらいで危険を感じる将棋倒しでは、
「満員状態におけるエスカレーターの急停止や逆走は本当に危ない事故だ。それで将棋倒しがおきてしまうと呼吸ができずに圧死してしまう。もし助かりたいと思ったら瞬間的に腕で胸をかばうようにするといい。呼吸ができるように胸の動きを確保するのである。あるいは肺を守るために、身をかがめるような姿勢を取るといい。」
というアドバイスがある。
火事にあったら。海に投げ出されたら。熱湯や薬品がかかってしまったら。誤って毒を飲んでしまったら。有毒ガスが発生したら。動けない状態で放置されたら。拳銃を向けられたら。喧嘩に巻き込まれたら。
そもそもそうした状況に陥らない予防と、遭遇してしまった時の対処法が書かれている。結果的に死んでしまった人たちを調べた研究成果なので説得力がある。いざというときに生き残る確率を少しでも増やすための知恵がいっぱいである。
・死なないための智恵
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/05/post-757.html
感動した。連作短編集だが全作が傑作ではずさない。
スキエンティアはラテン語で「知識」という意味。クローン、ロボット、惚れ薬など、未来の禁断の科学技術が、人々の生活にどんな影響を与えていくかを描いたサイエンスフィクション。基本はSFなんだけれども、とてもヒューマンドラマしている。
「ボディレンタル」
「媚薬」
「クローン」
「抗鬱機」
「ロボット」
「ドラッグ」
「覚醒機」
クローンにしても人工知能介護ロボットにしても、ここで取り上げられる技術は、人間心理の微妙な領域に入り込んでくるものばかり。生と死、性、家族、恋愛などを変革するイノベーションが登場したとき、私たちはそれをどう受け入れて行くか、あるいは拒絶するかのシミュレーション。
一話目。四肢が動かなくなった大富豪の老女が、人生をもういちどやり直すために、若い女の身体を借りる「ボディレンタル」。映画『アバター』みたいな設定だが、こちらの設定では、二人の意識はひとつの身体に同居する。起業家としてパワフルに生きてきた老女と、何事にも流され気味だった女の、二人の心がせめぎあう。
どの話も人間の命や尊厳と関わっていて、重たく切ない内容なのだが、すべて希望をもたせる終わり方をするのがいい。ほろっ、じわっ系。どらえもんの未来技術とブラックジャックのヒューマニズムを足して2で割って、絵はちょっと諸星大二郎的劇画調。
連続ドラマ化されたらいいなあ。
・著者 戸田誠二氏のサイト
http://nematoda.hp.infoseek.co.jp/