Books-Misc: 2008年10月アーカイブ

ヒミズ

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・ヒミズ
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ヒミズ=モグラに似た小動物。落ち葉の下や浅い地中に棲息し、昆虫やミミズを食べてくらす。日の当たらない場所で一生をすごすから「日見ず」と呼ばれる。トガリネズミ目モグラ科に分類される哺乳類。日本固有種。(Wikipediaで調べた。)

ギャグ漫画「行け!稲中卓球部」の古谷実が、うってかわって、暗いシリアス路線で描いた傑作。

・ヒミズ2
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中学生3年生の住田は川べりで貸しボート屋を営む母親と二人で住んでいる。両親は離婚しており、だらしない父親は金の無心のときだけたまに訪れる。母親には別に男もいて、家庭の居心地はよくない。

住田は決して大きな夢を見ない。望まないようにしている。特別を嫌う。ただただ自分は平凡な人生を普通に生きたいと願う。友人との交流もほどほどにして目立たぬように生きるつもりでいる。しかし、普通でありたいと思う彼の視界には、ときどき存在するはずのない怪物が見えることがあった。

・ヒミズ3
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住田と仲の良い中学3年生の夜野 正造はスリの常習犯だ。ついつい手が動いて人の財布を盗ってしまう癖がある。仲間のいじめられっこ赤田 健一は、従兄弟で漫画が上手い小野田 きいちに影響されて、自分も漫画家を目指してみるが才能はない。同級生の茶沢 景子は大人びたクールな性格だが、内に熱いものを秘めている。住田に内心惹かれている。

住田らは、それぞれが不幸な事件を通して、殺人や犯罪に巻き込まれ、絶望的な状況へと追い込まれていく。親に逃げられ一人住まいとなった住田のボート小屋まわりには、ヤクザやホームレス、変質者などが現れて不穏な雰囲気が濃厚になっていく。

・ヒミズ4
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絶望がテーマのダークな中学生日記。心の闇の中に写るものをストレートに描き出している。全4巻。大変読みごたえがある。おすすめ。小説化、舞台化された。

・津山三十人殺し―日本犯罪史上空前の惨劇
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岡山県苫田郡西加茂村大字行重部落。昭和13年5月21日午前1時40分頃、農業 都井睦雄(22歳)は寝所から起きだすと、黒詰襟の服を着込み、足にはゲートルと地下足袋、頭に二本の懐中電灯をとりつけた。猛獣狩用猟銃を持ち、日本刀を腰に下げて、外に出ると、まず村の電線を断ち切り村を停電させた。世界的にも類例がないほどの単独犯による大量殺人事件の始まりであった。

犯人は最初に自分の祖母の首を斧ではね体に銃弾を大量に撃ち込んだのを皮切りに、次々に恨みのある家々を襲撃してまわり、深夜2時間ほどの間に村人30人を惨殺していった。何人かには逃げられたが、周到な予定通りの復讐を完了すると犯人は山に隠れて長い遺書を綴った(この本にはその全文も引用されている)。そして「もはや夜明も近づいた、死にましょう」と書き上げると自らの胸を銃で撃ち抜いて自殺を遂げた。

これは「八つ墓」のモデルとなった津山三十人殺し事件のドキュメンタリだ。捜査資料の精査と関係者へのインタビューを積み重ねて、事件の真相を解明していく。大昔の話とはいえ不謹慎を承知で感想を書くが、この本は読み物として最高レベルで面白かった。情報の整理と語りの順序が完璧で、物語のような進行感がある。よくできたドキュメンタリとはこういうものかと感心した。

前半は客観的な事実と村人の証言によって事件当日起きたことが明らかにされる。後半では丹念な取材情報を使って犯人の22年間の人生を振り返る。この二つのアプローチによって事件のリアリティが生々しく感じられる。事件は起こるべくして起きたのだと。

犯人は幼くして両親を亡くしたが祖母によって大事に育てられた。子供時代は優等生であった。しかし青年期からは病弱な体質と弱い性格が災いして、世間との折り合いが悪くなる。年を重ねるごとに内面に鬱憤を蓄積していく。村の女性達との関係悪化がきっかけで遂に心が決壊し、村人皆殺しの決意に至る。犯人自身が決行の前後に遺書を書いており本人の心情も明らかになっている。

「決行するにはしたが、うつべきをうたずうたいでもよいものをうった、時のはずみで、ああ祖母にはすみませぬ、まことにすまぬ、二歳の時からの育ての祖母、祖母は殺してはいけないのだけれど、後に残る不びんを考えてついああした事をおこなった、楽に死ねる様にと思ったらあまりみじめなことをした、まことにすみません、涙、涙、ただすまぬ涙がでるばかり、姉さんにもすまぬ、はなはだすみません、ゆるして下さい、つまらぬ弟でした、この様なことをしたから(たとい自分のうらみからとは言いながら)決してはかをして下されなくてもよろしい、野にくされれば本望である、病気四年間の社会の冷胆、圧迫にはまことに泣いた、親族が少く愛と言うものの僕の身にとって少いにも泣いた、社会もすこしみよりのないもの結核患者に同情すべきだ、実際弱いのにはこりた、今度は強い強い人に生れてこよう、実際僕も不幸な人生だった、今度は幸福に生れてこよう。」

犯人は自己中心的で弱い性格だが、数ヶ月前より周到に計画を準備し、犯行後も長文の遺書を書く判断力や冷静さを持っている。昭和初期だから舞台設定は今とは異なるものの、現代の、通り魔大量殺人事件の犯人らの精神構造と似通ったものを感じる。

・快適睡眠のすすめ
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国民の50%が起床する時刻を調査したところ、60年代には曜日にかかわらず朝は6時起床、夜は10時に就寝していたそうだ。ところが、この35年間で起床も就床も30分から1時間遅くなり国民全体で夜型が進行しているという。

同時に睡眠時間は60年代に8時間13分だったのが1時間以上短縮された。国際比較によると日本人は1日当たりの平均睡眠時間が453分(7.6時間)で、世界でも目立った短眠民族である。(特に家事や育児に忙しい40代の日本女性が睡眠時間を切り詰めて世界一級とのこと。)

・平均睡眠時間
日本 453分
カナダ 489分
アメリカ 496分
イギリス 511分
オランダ 492分
デンマーク473分
フィンランド496分

個人レベルでみると朝型・夜型、短眠型・長眠型には一長一短の特徴があるそうだ。朝型人間は生活習慣の堅さが強く融通性がなく、夜型は生活パターンの変化に耐性を持つ。長眠型は内向的で非社交的、神経質な傾向が強く、短眠型は外向的で活動性に富み、こまかいことに無頓着な傾向がある。

実は短眠型の睡眠は効率がよく、深い徐波睡眠もレム睡眠も、長眠型と同量にとっているそうだ。長時間寝ることが健康によいとは限らないのである。眠るために横になった時間と正味の睡眠時間の割合を睡眠効率という。この数字は20代まではほぼ100%だが、年齢が上がるにつれて減っていき60代以降では70~80%まで下降してしまう。眠りの質も大きな問題だ。

夜にわずかにしか眠らず、1日中短い睡眠を繰り返す「多相性睡眠」という睡眠傾向の人もいる。エジソンやナポレオンがそうであったと言われる。1日の睡眠を4時間ごとに15分とって1日の睡眠時間が合計90分でも人によっては大丈夫らしい。実践者の話が紹介されていた。競技中のヨットレースの乗組員たちは多相性睡眠が一般的だともいう。1日中夢うつつな意識で過ごすのだろうか。

睡眠中の脳と身体のはたらきが詳細に解説されており勉強になる。睡眠中にも意識は目覚めている「見張り番メカニズム」は興味深い事実だ。レム睡眠では刺激の意味によって反応の正確さが変わる。たとえば雷が鳴っても起きない母親が、子供の泣き声ですぐに目覚める。睡眠中でも特定の音が聞こえたらボタンを押すという反応も可能のようだ。

身体には時計も内蔵されている。人間はあらかじめ何時に起きようと決めて眠ると時刻ぴったりに起きることができるものなのだという。これは私もよく体験していたから納得した。重要な予定のある日は目覚まし設定時刻の数分前に起きて、鳴る前に止めることが多い。体内で時刻がカウントされているのだ。不思議なことである。

この本は睡眠の研究者が、眠りの科学とそれに基づく睡眠の質改善のためのアドバイスが解説する内容。健康とのからみだけでなく、生産性と睡眠という観点からも興味深い事実が満載。たとえば眠気を測る技術として眠気スケールというものが紹介されている。

・スタンフォード眠気スケール

1 やる気がある、活発、頭がすっきりしている、はっきり目ざめている
2 よく目ざめているが最良の状態ではない、物事に集中することができる
3 ゆったりくつろいでいる、まあまあ目ざめており、物事に集中できる
4 やや頭がボーっとして気がぬけている、横になりたい気分
5 頭がボーっとしていて気が散りやすい、目ざめているのがむずかしい
6 眠い、横になりたい、頭がぼんやりしている
7 まどろんでいる、起きていられない、すぐに眠ってしまいそうだ

この自覚的評価法でもある程度は再現性のある測定ができるものらしい。これは個人差もあるが一般的には「眠気のていどは二時間リズム、十二時間リズム、二十四時間リズムと強くなり、眠気のピークは早朝の四から六時がもっとも強く、つぎに午後の二~四時が眠い。」。交通事故や重大ミスの発生時間はこのパターン通りに発生する。

眠気、居眠りによるミスを防ぐには、早い午後にコーヒー、緑茶、紅茶、チョコレートを摂取して、20分ほど仮眠するとよいと教えている。20分なら本格的な睡眠に入らずに起きることができ、カフェインの効き目は30分後にあらわれるから目ざめやすいそうだ。今度やってみよう。

・Magic Moving Images: Animated Optical Illusions
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これは久々にヒットの錯覚錯視系の絵本。

イメージが縞模様状に重ねあわされた図の上に専用のフィルムをスライドさせると、不思議なことに絵がアニメーションのように動き出す。掌の中で画像が動くというのはiPodやゲーム機と一緒ではあるのだが、動き方が全然違って印象的だ。


YouTubeにアップされていたMagic Moving Imagesの動画。

この方式でヒットしているのがGallop!だ。上のMagic Moving Imagesは専用フィルムを本の上で動かす必要があるのだが(原理理解にはよいのだが)それが少し面倒だった。Gallop!は本のページ自体にフィルムを組み込んでしまっており、普通にページをめくるだけで動き出す。こどもびっくり。

・Gallop!
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こちらもYouTubeに動画があった。

サブダの立体絵本に続いてヒットの兆しがある錯覚アニメーション絵本。

・この写真がすごい2008
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コンセプトがナイスな写真集。特定のフォトグラファーや特定のテーマではなく、編者が「すごい」と思ったという視点で、雑誌や広告、写真展、投稿写真などあらゆるメディアで目にとまった写真をピックアップしている。写真の横にはどこがすごいかの短評がある。文章は読まなくてもすごさは一目瞭然のインパクトがある作品ばかりだが。

凄いと言っても芸術的にとか、ナショナルジオグラフィック的に凄いというのではない。ほとんどはおバカだったり、怖ろしかったり、シュールだったり、雰囲気ありすぎだったり、どれもこれもヘンな方向に凄いのだ。芸術性ではなく娯楽性に富んでいる。バラエティ番組みたいに楽しい写真集。

こういうやり方で写真集を構成するには、本来は紙ではなくて、インターネットが一番適しているはずだ。Flickrやフォト蔵にある大量の写真の中にも、凄い写真はたくさんみつかる。コメントをつければ他力本願ギャラリーができあがる。

実は私、2年くらい前からFlickrで、これはすごいと思った写真をお気に入りに登録している。ただしこれは「すごい美しい」の意味。この本のようなヘンな写真はない。いつのまにか200枚近くになった。短評をつける作業は大変でなかなか手が出せないわけですが...。

・私がこれはすごいと思ったお気に入り写真一覧
http://www.flickr.com/photos/datasection/favorites/

そのうちせめてこれらの写真にタグくらいつけて、自分が何を美しいと思うのかを分析してみようと思っている。

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