Books-Misc: 2006年10月アーカイブ

・ムーミン谷の名言集―パンケーキにすわりこんでもいいの?
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今年もデジハリの学生から誕生日プレゼントをもらった。感謝。

昨年は「Encyclopedia Prehistorica Dinosaurs:Dinosaurs」だった。

・Encyclopedia Prehistorica Dinosaurs:Dinosaurs
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003915.html

今年はムーミンの名言集。本選びのセンスがいい。

子どもの頃からムーミンってカバだと思っていたが、実はトロールという妖怪の一種であるらしい。そう言われても、どう見てもカバなのだが、これがなかなか良いことを言っている。ポヨヨンとしたカバたちのいうことなので偉い先生がいうことよりも、素直に心に入ってくる。

「パンケーキにジャムをのせて食べるひとがそんなに危険人物であるわけがありません」
「夜中のサンドイッチってやつは、いつ食べても、いいものだねえ」

なんていう平和な気分にひたる名言もあれば、スナフキンの哲学語りもある。

「ものは、自分のものにしたくなったとたんに、あらゆるめんどうがふりかかってくるものさ。運んだり、番をしたり......。ぼくは、なんであろうと、見るだけにしている。立ち去る時には、全部、この頭にしまっていくんだ。そのほうが、かばんをうんうんいいながら運ぶより、ずっと快適だからねえ......。」

「おだやかな人生なんて、あるわけがないですよ」とスナフキンがワクワクしながらいいました」

深い言葉がある。ムーミンの物語のどこでこんな名言が使われていたのかと驚く。

「わたしは、ひとりめの友だちを見つけたのでした。つまり、わたしは、ほんとうの意味で、生きることをはじめたのでした。」

「初恋と最後の恋のちがいをご存知?初恋はこれが最後の恋だと思うし、最後の恋は、これこそ初恋だと思うもの。.......なのよ」

「あるところに、遊園地ではたらいているヘムレンさんがいました。だからといって、このヘムレンさんが、とびっきり楽しい人生をおくっているかというと、そうもいかないのです。彼は入場券が1枚の切符で1度しか入れないように、切符にパチンと穴をあける仕事をしていました。そんな仕事を、一生やっていなければならないっていうだけで、それだけでもう、ひとはゆううつになるものなんです。」

ムーミン作者のトーベ・ヤンソンはスウェーデン系フィンランド人の挿絵画家、風刺漫画家、短編作家。第二次世界大戦終結とともにムーミンシリーズを世に出し、児童文学に新時代をもたらした。この名言集は原作の小説から引用されている。社会風刺あり、ユーモアあり、人生哲学ありの背景を知るとアニメのムーミンをもっと見たくなった。

・Yahoo!動画 - アニメ - 楽しいムーミン一家
http://streaming.yahoo.co.jp/p/t/00032/v00156/

ムーミン谷へようこそ! ムーミンたちと一緒に夢の世界へ!! 全104話。

・死刑のすべて―元刑務官が明かす
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元刑務官が明かす死刑現場のリアリティ。衝撃の一冊。


囚人の体は、ロープを軋ませる大きな痙攣の後、手足がグイッと引っ張られるような痙攣が来た。体重が死までの時間と関係があると、二十数回、執行人として立ち会った看守部長が言う。この男は六十五キロだから、二十分近くかかるのだろう。

新しい死刑囚が入所すると刑務官は、自然と囚人の首に注意が行ってしまうそうだ。その首はやがて彼ら自身が吊るさねばならない首である。死刑囚と長い時間を過ごす刑務官は自然と彼らと心を通じ合う関係になる。

死刑囚の中には執行時には罪を反省し、更正して真人間に戻っているケースもある。任務とはいえ、執行時に囚人が暴れないように身体を押さえつけ、足を縛り、苦しみながら息絶えるまでを注視しなければいけない彼らの苦悩は深い。思い悩んで自殺してしまう刑務官もいるという。

死刑執行の現場を、劇画や短編小説という表現を織り込んで、強烈に生々しく描いている。死刑は囚人にとって事前の告知はなく、ある朝に突然執行されること(昔はそうではなかったそうだ)、奥さんが妊娠中だったり家族が病気で入院中の刑務官は執行担当を免除されることが多いこと、死刑囚の1日のスケジュール(たまにテレビ視聴が許可されている)内容の公開などなど、知らなかったことばかりだ。

刑務所の官僚組織についても大変詳しく、批判的に語られる。出世のことばかりを考えるキャリア出身官僚と、現場の改善を考えるノンキャリアの対立。死刑囚に弱みを握られ、やりたい放題にさせてしまう看守の腐敗。高官の接待攻勢や官舎での奥さん同士のつきあい方など。そこには極めて官僚主義的な刑務所業界の姿がある。

凶悪事件で最高裁で死刑が判決されると、その問題は、結論が出て終わったと私たち一般人は考えるものだが、刑務官にとってはそこから先に、苦悩の日々が待っている。制度がある以上、誰かがやらなければならない仕事である。悲しい仕事である。

国家権力が人を殺すという死刑が必要かどうかの考察も書かれている。先進国では死刑を廃止する国が増えている。日本では凶悪事件があるたびに世論は割れる。まだ当面、廃止というわけにはいかない気がする。刑務官の苦労は続きそうである。