Books-Media: 2012年4月アーカイブ
博報堂、電通、グーグルでマーケティングを手掛けてきたコミュニケーションプランナーの高広伯彦氏が書き下ろした新しいマーケティング・プランニング思考法。5つの章からなる。社会学やメディア論など幅広い分野の研究成果も引用しながら、表層ではなく「本物の変化」に迫る。5本の濃い講演のような本。
広告業界で稀有な経歴を持つ高広氏はこれまでの広告と、これからの広告のあり方をどう考えているのか。そして近年のソーシャルやクチコミをどう見ているのか。すべて書かれている。
「現在「クチコミマーケティング」といわれて業界内で提供されているものの多くは「人を媒体枠として」売っているものである。 「ブロガーに書かせます」「Twitterユーザーにつぶやかせます」などなど......。」
広告枠、媒体枠として消費者のクチコミを買うようなプランナーは、従来のマス広告屋の悪弊が抜けていない。クチコミされるためにどういうシカケやシクミを企むか、が次世代プランナーの仕事なのだと高広氏は、昨今ありがちな安易なソーシャルメディアマーケティングを批判している。
「「コミュニケーションプランニング」とは、商品と消費者がいかに「コミュニケーションするか」を企てることだ。その手順はまず、商品・サービスがどういった「コンテクスト」に埋め込まれるのかを考えることから始まり、そして、さまざまな種類の「顧客接点」を駆使する。」
要するに広告人はもっと頭を使うべきだし愛を持つべきということを言いたいのだと受け取った。ネット環境では、グーグルの広告みたいに、数量的には自動で最適化された検索広告枠を市場で売り買いすることができる。業者に頼めばブロガー何百人に自社の提灯記事を書いてもらうことができる。だが、その先にいるのは人間だ。カネで丸ごと枠を買って出すだけのメッセージに愛はないのだから、炎上やトラブルが待ち受けている。
メッセージが生きるには「コンテクスト」を作り出さねばならない。クチコミが活性化するにはシカケやシクミが必要だ。どれも頭とハートをフル稼働させなきゃつくれないよと、熱く語るのがこの本のメッセージだと思う。
この言葉が印象的だった。
「広告は人々のアクティビティを後押しするもの」
これからの時代において、広告は企業が消費者にモノを買わせるとかブランドイメージつくるだけのものではないのだ。コンテクストプランナー、コミュニケーションプランナーというのはネットワークでつながった世界中の人たちに連鎖反応を引き起こす野望に満ちた仕事ということになる。次世代の広告業界を展望できた気がした。
デジタルコンテンツやマーケティングにかかわる人は必読。