Books-Media: 2011年6月アーカイブ
テレビ、ラジオ、新聞、インターネット、書籍・雑誌、携帯電話。日本人のメディアへの関わり方がどう変化してきたか、ネット世代のメンタリティ変容、メディアの未来はどうなるか。日米のメディア研究の最新データを参照しながら、俯瞰的重層的にメディアと情報行動の激変を考察する。
テレビの力を象徴する紅白歌合戦の視聴率は、
1970年 77.0%
1980年 71.1%
1990年 51.5%
2000年 48.4%
2010年 41.7%
と過去40年間減少してきた。これに対してネットやケータイは急成長を遂げてきた。しかし、これは単純にネットやケータイがテレビを食ったわけではないと著者は複雑な現実を解説する。
テレビを長時間見る人とぜんぜん見ない人が分化してきていること、メディア行動が多様化していること、そして年齢層による情報行動の中身が大きく違うこと、さまざま調査データが引用されている。同一人物でも、在宅時間が長くて時間に余裕のある日はPCネットやテレビを長く利用し、そうでない日は利用しないというのは納得の発見である。
「年々、情報メディア環境は複雑さの程度を増していき、若年層ほど行動パターンが多彩である分、テレビに割く時間の比率が減少するのである。」というが、特に10代のデジタルネイティブと呼ばれる若者たちの情報行動パターンは特徴的だ。彼らのメディア接触におけるメンタリティを分析している。
ネットが与える心理的な影響は研究がだいぶ進んできているようだ。たとえばインターネット利用頻度が高いほど、外向的な人はより社会的参加が活発化し、内向的な人は孤独感が増して社会的参加が少なくなるという結果は面白い。若年層では自意識が高い人ほど利用時間が長いという。ネット利用のマタイ効果と呼ばれるが、メディアは人間の本質を増幅拡張するものなのだろう。
そして「インターネットには、家族や同世代の仲間の絆を強める働きがある半面、家族や世代内のつながりのなかに、モザイク化した多くの孤島をつくりだしてしまう危険性をはらむ。」と述べている。ネットの光と影がよくわかる研究解説書。