Books-Management: 2012年4月アーカイブ
論理的で立派な文章ではなく、読者を楽しませカネになる文章を書くにはどうしたらいいかを指南する本。堀井憲一郎。この人には、ディズニーが絶対に公認しないであろう超濃密ディズニーランドガイドにまず魅了され、話芸の本質をとらえた『落語論』でまともに感動し、タイムリーにでた『いつだって大変な時代』にはその通りと膝を打った。真面目で不真面目、粋な文章を書く、私がレスペクトしているライターの一人。
自分の言いたいことをいったん曲げてでも、読者に楽しんでもらう精神をもて。極めて不親切な読者、不熱心な読者を指定せよ。とにかく読者本位になれと何度も主張している。プロの書き手になれるかどうかの資質は「さほど熱心でない読者をこちらに振り向かせる工夫が好きかどうか」。ライターはサービス業なのだ。
小難しいことを語る面白くない文章は著者が一番嫌いなものだ。こんな辛辣な、しかし的を射た指摘をしている。ブログによくあるんだ、こういうのが。私もときどきやっちゃうけど。壁に貼っておこうかと思うくらい素晴らしいアドバイス。
「「社会的発言」こそが、文章を書くときの大きな敵である。もちろん政治経済社会教育について発言するな、ということではない。ただ、いきなり現政府よりも上の立場に立って、悪いところを指摘して、改善する方向を指し示せば、それで事足れり、一丁あがり、と言ってるのは、たぶん言ってる本人はすごく高いところから発言していて気持ちいいんだろうけれど、でもそんなところからは人を動かす何かは絶対に生まれてこない、ということである。意味がなさすぎる。」
そしてこの本で最も斬新だと思ったのは「立って書く」「踊りながら書く」というノウハウである。これは考えたことがなかった。著者は一冊丸ごと立って、踊って書き上げたことがあるそうだが、腰を落ち着けずに書くことで、自然に書きながら考えるようになるという。退屈な文章を書かない秘訣でもあるらしい。
書きながら考えることで、自分自身の自然体が出てくる。才能を信じて自分なりの文体をつくっていけということなのだろう。だからいますぐ書け、である。
・いつだって大変な時代
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/08/post-1488.html
・落語論
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/08/post-1050.html
・東京ディズニーリゾート便利帖
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/07/ix.html