Books-Management: 2012年1月アーカイブ
レスペクトしているブロガーの堀さんが本を出した。堀さんは独立行政法人海洋研究開発機構所属の科学者で、デジタルツールをばりばり使いこなすことでも知られる。お話しするたび、彼の情報分析の確かさに感心してしまう。
・LifeHackong.jp
http://lifehacking.jp/
堀さんのブログ。このブログと内容的に相性がいいのでご存じの読者も多いかも。
目標を明確にして、毎日ToDoリストを更新して、というGTD的なノウハウは苦手だが、この本のクラウド知的生産術には惹かれるところがあった。整理が下手、ものぐさでもいいのだ。
「たとえば、本人が手を動かさなくとも自動的に電子メールを整理するフィルターをつくるのに必要な時間はほんの数分です。それが毎日のメール処理の手間を10分ずつ軽くしてくれるだけでも、年間で60時間、8時間労働の出勤日7日分の時間を生み出すことが可能になるのです。」
この考え方に深く共感した。自動化できる処理は極力自動化しておく。それでうまれる自由時間を人間にしかできない作業に使う。そういうことが世間よりも少し先にできている人が、ツールを"使いこなしている人"なのだと思う。
・自動的にキーワードにマッチする論文が手元に届くしくみ
・アイデアをなくさない情報整理法(エバーノート&リメンバーザミルクなど)
・テンプレート準備で時間の節約
・ちょっとずつ論文を仕上げていくクラウド活用の論文作成法
などなど、最新のクラウドサービスとスマートフォンを、研究に活用するノウハウがいっぱいある。
理系の研究者のための情報処理環境をつくることが主眼だが、論文を企画書や報告書と読み変えれば、ビジネスマンでも情報収集と整理の効率化に役立つ知識が多い。
基本的にはやさしく書かれた入門書なのだが、中級者以上でも参考になる内容がある。私は多くのクラウドサービスを使っていたが、
・Dropboxは使っているけどファイル共有のやり方を知らなかった
・Gmailは使っているけど詳細な検索オプションがあることを知らなかった
・MP3の音声ファイルとPPTをあわせて音声付プレゼンをスライドシェアでできるとは驚き・いくつかの未発見のサービス
などたくさん発見があった。
IT中毒に陥った組織に、ITを断つ時間を強制的に設けて、良質なアナログ時間を取り戻す「IT断食」を推奨する本。「ノーPCデー」「ノー電子メールデー」を実施して、ITとアナログの最適なバランスを見出そうという話。
情報の肥大化と行動の弱体化。メールするより電話や対面で話す方がよいのではないかと疑ってみた方がいい。ウェブで延々と検索するより、専門家に話を聞いたり、専門書を一冊じっくり読んだ方がよい結果になることは多い。
なかでも会議の日程調整にメールは向かないという指摘は、本当にその通りだ。メールで複数の候補予定をやりとりしていると、調整が完了するまで、その時間帯がロックされてしまう。そしていつ調整が完了するかも読めない。それで著者は対面や電話でアポをとりなさいとアドバイスしている。現状ではそれが確かにベストなのだが....
スケジュール調整。確かにメールは向かないのだが、本来はITが活躍してしかるべき用途であると思う。スケジュール調整ツールというのはいくつもある。カレンダーを見ながら参加者が空いている時間を登録して探す。飲み会などの予定調整で私はしばしば使っている。
・調整さん
http://chouseisan.com/schedule
・伝助
http://www.densuke.biz/
・調整くん
http://www.hotpepper.jp/doc/chousei/
こういうツールは便利だなあ、みんなが仕事使えばいいのにと思うのだが、一向にそうはならない。多くの企業で社内のスケジュールはデジタルで共有されているのに、企業間ではなかなか難しいことになっている。日本の場合、大企業が率先して使えば広まっていくのではないかと思うのだが、なかなか始まらない。IT経営の研究者が、メールによるスケジュール調整を専用ツールで行った場合の損得計算を数字で弾いてくれるといいのではないかと思うのだが。