Books-Management: 2010年11月アーカイブ
デジタルメディア研究所の橘川幸夫さんが書いた社会起業家指向の仕事人に贈ることば集。ベンチャーやNPOの中の人だけでなく、メディアやマーケティングの仕事をしている人にもおすすめ。
「仕事とは、あなた自身の欲望を社会化すること。」
のような短いメッセージが69本ある。
そして解説が裏ページにつく。
「仕事とは客観的なことではありえない。自分が必要と感じたもの。魅力と感じたものの延長に自分の仕事があるのだ。自分の欲望から外れたところで、「儲かるから」「安定しているから」などという客観的な要因で仕事を選ぶと、仕事を頑張れば頑張るほど、本来の自分と仕事をしている自分が分離していく。社会とは自分の延長線上にあるのだ」
私が好きな言葉のベスト6をつくってみた。
1位 「仕事とは、あなた自身の欲望を社会化すること。」
2位 「空気が読めないのは、そいつが違う空気を吸っているからかもしれない。」
3位 「何よりも必要なマインドは「すがすがしさ」である」
4位 「個人の力は最大限に使え。組織の力は最小限に使え」
5位 「やってみなけりゃわからん」ことだけが楽しい
6位 「自分がやらないで人にやらせた方が10倍儲かる。人にやらせないで自分がやった方が10倍面白い」
まえがきには橘川さん自身の仕事人生のふりかえりがある。「学生時代に働きはじめた」で始まる。いろいろなアルバイトをした後、音楽雑誌『ロッキング・オン』を友人らと立ち上げ、自身が初めてサラリーマンになったときは『ポンプ』創刊編集長だった。やりたいことを仕事にして、「本来の自分と仕事をしている自分」が重なる仕事人生だった。こういう人生って幸せだよなあと思う。
今の日本では、就職情報サービスが提供する既存メニューから、やる仕事を選ぶ、入る会社を選ぶという職業"選択"が普通だ。橘川さんの場合、自ら雑誌を宝島社に提案して創刊させて編集長に収まったそうだ。こういう風に自分がやりたい仕事を創るというスタイルの人はこれまでは極めて少なかった。
でもこの10年くらいで、インターネットやソーシャルネットワークというインフラをベースに、やりたい仕事をつくろうという若者は、私の周りには結構出てきた。就職せずにいきなりベンチャー、NPO、フリーランスとして、これまでにないジャンルを創りだして活躍している人がいる。
ありきたりな職業選択へのアドバイスではなくて、やりたいことを仕事にしてきた職業創造の先駆者が語る希望の仕事術。やりたいことがあるけど、やりたい仕事がない、入りたい会社がないという20代の人、読んでみてください。
・正しく決める力―「大事なコト」から考え、話し、実行する一番シンプルな方法
冒頭で2つの問題が掲げられる。
旭山動物園が大成功した本当の理由は?
ケータイ小説が成功した理由は?
こういうオープンクエスチョンは好きなので、ページをめくる手を止めて、あれこれ考えてみたが、著者の答えはそのどれでもなくて誰もが納得の本質的シンプル回答だった。あれこれじゃだめなのだ。これだというのが本質なのだなと思わせる鮮やかなツカミ。
まず人間は大事かどうかではなく差があるかどうかに目が行ってしまって、大事なコトをとらえそこなうのだ、という。正確さを大切にするエンジニアや、細部に神が宿ると感じるアーティストは、こういう本質思考を苦手とする人が多いと思う。でもマネジメントにはこの本に書かれている大事なコトをとらえる訓練法こそ最重要だ。
ボストンコンサル、アクセンチュア出身でビジネススクール教授をつとめる著者が、長年のコンサルティング経験のエッセンスを
考える = 『重要思考』大事なコトから三段階で考える
議論する = 『Q&A力』大事なコトを問う、答える
実行する = 『喜捨法』捨てることを強制する、楽しくする
という3つの段階で語っている。
大事じゃない枝葉をいかに刈り取るかを教えてもらった気がする。
ビジネスの意思決定では、複雑な物事を簡単明解にする必要があるが、正しいやり方で簡単化しないと誤ってしまう。シンプルな理解は自信にもつながるものだ。
「割と短時間でできる、良いシミュレーションゲームを見つけよう。別に小難しいものじゃなくていい。楽しく「トレードオフ」を学べるはずだ。」として、昔MBA時代に徹夜で遊んだという『信長の野望』を勧める面白い先生でもある。わかりやすくて楽しく読める本だ。