Books-Management: 2010年8月アーカイブ

・スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン―人々を惹きつける18の法則
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この本は「現実歪曲フィールド」の異名をとるジョブズの伝説的なプレゼンの数々を徹底分析した著者が、その極意を一般人にやさしく解説する本だ。

イベント発表用プレゼンなのに情報を盛り込み過ぎて印、刷用文書のようなスライド=「スライデュメント」をつくってしまう失敗は、誰もが経験したことがあるのではないだろうか。その対極にあるのがシンプルに研ぎ澄まされたスティーブ・ジョブズのプレゼンである。

あの驚くべきわかりやすさと強烈なインパクトはどこからくるのか。この本にはジョブズとゲイツのプレゼンを平均単語数、語彙密度、難解語、難読指数、言葉の複雑度で比較するという興味深い試みと納得の結果が示されている。ジョブズのプレゼンのキレはデータ解析でも示せるものだったのか。

ジョブズ流の基本は

・計画はアナログでまとめる
・一番大事な問いに答える
・救世主的な目的意識を持つ
・ツイッターのようなヘッドラインを作る
・ロードマップを描く

という5つの方法。それらを実現するためのたくさんのテクニックが紹介される。プレゼンの作り方、話し方ももちろん大切だが、アイコンタクト、しゃべる姿勢、手振りなどノンバーバルコミュニケーションも重要な要素だ。

そして何より納得したのはジョブズが5分間のデモのために数百時間の練習をしていること。そこに書かれた文字を読み上げるようなプレゼンをしてはいけない。そのためには台本を捨てる、徹底的に頭に叩き込む、だからシンプルなスライドになる、ということなのだ。

実践すれば誰でもジョブズとはいかないが、とりあえずプレゼンのキレのよさを身につけたい人にはよい本だ。だいたいジョブズ流のコツが形式知としては理解できた。あとはMac、iPod、iPhone、iPadのような製品を連発できる会社のCEOになるだけだ。

・ザッポスの奇跡 The Zappos Miracles―アマゾンが屈したザッポスの新流通戦略とは
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これは今年初めに読んで、感動して「いいよ」と何冊も周囲に配った本です。

2009年に米国アマゾンに900億円で買収された靴のオンラインストア ザッポスの伝説。同社はCEOをはじめ500人以上の社員がツイッターでコミュニケーションをしているソーシャル戦略の会社としても有名ですが、この本はもっとザッポスにとって本質的な"人の力を主電源とする感動サービスの仕組み"を描いている。ツイッター戦略はその戦略からでてくるものだ。

CEOのトニー・シェイは90年代後半バナー広告交換コミュニティとして大成功を収めてマイクロソフトに買収されたリンクエクスチェンジの創業者でもある。私は最盛期のリンクエクスチェンジの米国オフィスを訪問したことがあるが、ユーザーからの熱烈なファンレターをオフィスにたくさん貼りだしていた様子を思い出した。顧客満足に重心を置いた経営は出発点から変わらない。

お客様に感動を与えるために「顧客を満足させるためなら、ほとんど何をやってもよい」ほど大きな裁量権を与えられたコールセンターのメンバーたち。彼らが作りだすドラマは、ソーシャルネットワークに紹介されて増幅される。

「「ザッポスのCLT社員は、もし仮に顧客が求めている靴が、ザッポスに無かった場合に、必ず他社のサイトを最低三個はチェックして、その靴を入手できるところがないかどうか調べるように、教育されています。」とCEOのトニー・シェイは言う。」

顧客は今回は他のサイトで買っても、次回も必ずザッポスに電話をかけてくる。目先の利益ではなく、長期的に熱烈に顧客に愛されることを優先する。ザッポスではコールセンターが会社のコアを形成している

徹底したカスタマーフォーカスと同時に徹底した従業員フォーカスも特徴だ。企業は本来、運命共同体であるはずなのに、経営トップや投資家ばかりが甘い汁を吸って、社員に還元されないこれまでの企業とはまったく異なる。従業員が幸せでなければ、お客様を幸せにできない。

ザッポスはコミュニティ的な企業だ。どんな会社を作るのかということを全員で考え続ける企業だ。考え続けることが経営戦略なのだ。そうすることで共同体としての企業の力を引き出している。「カルチャーを創造できれば、ルールをゼロにできる」のだ。

"企業文化が強み"というのは本来は日本の大企業のお家芸でもあったはずだが、成果主義やリストラを濫用して、すっかりその強み、信用が失われてしまった。当面の失地回復は難しそうだ。むしろ、皆でオールを漕いでいる感覚のでるベンチャー企業の方が、企業風土は信憑性を持ちやすいと思う。トニー・シェイみたいに、コミュニティ型リーダーシップで経営センスを持った人が日本でもそろそろ登場してくるのではないか。

翻訳ではなくて日本人が書いているのも驚き。

・日本語作文術
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「本書は、高望みはせずに定型的な文章を書くことでよしとする。一定の言い回し(表現の型)を踏まえれば、誰にもそこそこの文章が書ける。文章を書くとは一定のマニュアルに従って定型表現をつなぎ合わせることだ。世の文章指南書のお勧めやタブーにあちらこちらで異を唱えながら、本書が説くのは「型」を重視する「パッチワーク的文章術」だ。」

読みやすい、分かりやすい、説得力がある"達意"の文章を書くための指南書。

・一文を短く書く

・使い古された言い回しを上手に使いこなす

・主観的、曖昧な日本語を、英語のように客観的、論理的に書く

・文の単位は長い順で並べる

といった指導がある。わかりやすく、誰でも実践できる方法論ばかりだ。

特に曖昧さ回避で、わかりやすくは基本だと思う。

川端康成『雪国』の「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。」は、主語として「汽車」が省略されていると著者は指摘する。英訳ではちゃんと"The train came out of the long tunnel into the snow country."になっているそうである。日本語は述語以外はいくらでも省略可能なので、あいまいになりがちであるから、「和文和訳」のつもりでわかりやすくを心がけなさいとすすめる。

意味を伝達する達意の文章は、表現で感動をうむ文章とは違うから、書いていて味気なく感じる。そこで、味を出そうとして、ヘンな味になって、不味くなっているのが多くの素人の文章なわけだ。下手に味を狙わずに、まずは無味無臭で機能的な作文を心がければ、文章力の基本ができて、さらに上を目指せる。この新書はそうした基礎固めのガイド本である。

・<不良>のための文章術
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/07/post-1275.html

・アートを書く!クリティカル文章術
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/02/post-1152.html

13日間で「名文」を書けるようになる方法
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/01/13-1.html


・言語表現法講義
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/01/post-1144.html

・文章をダメにする三つの条件
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/10/post-860.html

・文章は接続詞で決まる
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/10/post-856.html

・文章読本 (三島由紀夫)
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/09/post-837.html

・自家製 文章読本
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/07/post-797.html

・文章のみがき方 - 情報考学 Passion For The Future
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/04/post-737.html

・自己プレゼンの文章術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004915.html

・日本語の作文技術 - 情報考学 Passion For The Future
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/10/post-641.html

・魂の文章術―書くことから始めよう - 情報考学 Passion For The Future
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/05/post-564.html

・「バカ売れ」キャッチコピーが面白いほど書ける本
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004702.html

・「書ける人」になるブログ文章教室
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004805.html

・スラスラ書ける!ビジネス文書
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004499.html

・全米NO.1のセールス・ライターが教える 10倍売る人の文章術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004488.html

・相手に伝わる日本語を書く技術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003818.html

・大人のための文章教室
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002489.html

・40字要約で仕事はどんどんうまくいく―1日15分で身につく習慣術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002286.html

・分かりやすい文章の技術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001598.html

・人の心を動かす文章術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001400.html

・人生の物語を書きたいあなたへ ?回想記・エッセイのための創作教室
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001383.html

・書きあぐねている人のための小説入門
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001082.html

・大人のための文章法
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000957.html

・伝わる・揺さぶる!文章を書く
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002952.html

・頭の良くなる「短い、短い」文章術―あなたの文章が「劇的に」変わる!
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003740.html

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