Books-Management: 2010年3月アーカイブ

・20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義
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著者のティナ・シーリグはシリコンバレーの中心に位置するスタンフォード大学で、学生に起業家精神を教えるアントレプレナー・センターのエグゼクティブ・ディレクター。「機が熟すことなどない」「早く何度も失敗せよ」「及第点でなく最高を目指せ」「ルールは破られるためにある」。集中講義を書籍化した本書は、たとえ20歳でなくても、挑戦心を焚きつけられるメッセージがいっぱい見つかる。

スタンフォード大のようなエリート養成校で、こうした「異質なこと」をする能力を魅力的に教えるコースがあるということが、アメリカのイノベーション創出能力(アップルやグーグル)の源泉にあることは間違いない。

情熱とスキルと市場が重なり合うあなたにとってのスウィートスポットを探せ、という。それは趣味と仕事の境がない世界。「ライフワークバランス」なんていう軟弱発想とは無縁の世界。

「生きることの達人は、仕事と遊び、労働と余暇、教育と娯楽、愛と宗教の区別をつけない。何をやるにしろ、その道で卓越していることを目指す。仕事か遊びかは周りが決めてくれる。当人にとっては、つねに仕事あり遊びでもあるのだ。」という老子の言葉が引用されている。

自慢話としての成功者の話というのは、すべての経験が今につながるように辻褄が合っているように聞こえるが、現実は当然ながら偶有性の連続だと話す。ガイドブックにない場所、偶然の出会い、やってみたから見えた驚きの事実。旅行と一緒で予定になかったことが一番面白い。

「自分のキャリア・パスは、振り返ってみると、ちゃんと筋道が通っているのです。でも、将来の道はぼやけていて、不確実なことの連続です。視界が開けないとイライラしてきます。それでも、大きなチャンスが巡ってくる確率を上げるように行動することはできるのです。」

人生50年計画を作って自己満足するなど無意味、しっかり目を見開いて今起きていることを見ろ、今あるものでどうにかせよ、自分で自分に許可を与えよ、「機が熟すことなどない」。大人の私もすっかりアジテートされてしまった。

起業家精神というのは世の中の数パーセントくらいの人間が持つ資質だろう。最高の能力を持つ人材となるとさらにわずかだ。潜在的な資質を持ったエリート層を、有名大学において適切に開花させていくシリコンバレーの孵化プロセスの一端が、この集中講義録から見えてくる。

日本でありがちなベタな起業家養成講座(フランチャイズ話とか混ざっている)と違って、ベストアンドブライテストのノブレス・オブリージュと起業家精神を融合させて語るところが凄いのだ。選ばれた人たちの、責任感とプライドのあるシリコンバレー流の起業が日本ではまだまだ少ないと思う。

個人的には、判断に迷ったときは将来そのときのことをどう話したいかを考えて、胸を張って話せるように、いま物語を紡ぎなさい、という話がぐっときたなあ。

・アイデアをカタチにする仕事術
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不況でモノが売れない時代はプロデュース力で売る。

ポニーキャニオンで制作ディレクターや宣伝プロデューサーとして「チェッカーズ」や「おニャン子クラブ」、「中島みゆき」「だんご三兄弟」等の大ヒットを手がけた、現デジタルハリウッド大学大学院教授 吉田 就彦氏が語るビジネスプロデュース、コンテンツプロデュースの理論と秘訣。元デジタルガレージ副社長。最近はテレビでも活躍されている。

「R25」「おくりびと」「相棒」「ALWAYS三丁目の夕日」「モンスターハンター」など有名なプロデューサーたちの名前と成功事例がいっぱい挙げられる。いまどきの売れっ子プロデューサーたちが日々何を考え、行動しているか、具体的にわかるのが魅力の本。

吉田先生の独自のプロデュース理論は、まずHS(ヒットシグナル)をみつけて花開かせるというもの。その過程に「0から1を生む「創造」、1を100に育てる「実現」、 そして、二つのプロセスの「融合」。 ビジネス・プロデューサーとは、「0-1創造」したものを「融合」させ大きくして、「1-100実現」ができる人材、すなわち、アイデアをカタチにできる人材であるという。

ビジネス・プロデューサーの7つの能力として、下記の要素を挙げている。

発見力 チャンスやヒットの芽や新しい人財などを発見する力
理解力世の中の動きや物事の本質を理解する力
目標力ビジョンを描きゴールをイメージできる力
組織力さまざまなビジネス資源を組織して有効活用する力
働きかけ力「人」や組織を励まし、力を吹き込み、目標に向かって育てる力
柔軟力トラブルや環境変化に対応するなど、柔軟に物事を調整する力
完結力さまざまな事を乗り越え実行し、達成して、次への蓄積とする力

幅広い能力が求められる。では、どうすれば能力をそれぞれの開発できるのか?本書ではデジハリ大学院での授業で行われているワークセッションが紹介されている。これがかなり面白そう。

たとえば

・目の前の人に座っている人たちを「立ってください」という言葉だけで立ち上がらせる。

・一人に好きな人、嫌いな人を思い浮かべさせて、残りのメンバーはその顔の表情からどちらを想像しているかを当てさせる。

などなど。

結局、プロデューサーというのは人の心を読み、働きかけて、動かすことが基本なのだと再認識させられた。

・ブログ ヒットコンテンツブログ
http://hitcontentlab.jp/blog/

吉田 就彦氏のブログ。

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