Books-Management: 2009年6月アーカイブ

・本は10冊同時に読め!―本を読まない人はサルである!生き方に差がつく「超並列」読書術
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これは個人的には凄く面白かった。元マイクロソフト社長の成毛眞氏による多読のすすめ。書評ブロガーとしても著名な方である。

・成毛眞ブログ
http://d.hatena.ne.jp/founder/

強烈な個性の本であるため、アマゾンのレビューは賛否両論である。

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こんなことが書かれているからである。

「たとえば「趣味は読書、最近読んだ本はハリポタ、セカチュー」という人は、救いようのない低俗な人である。また、ビジネスハウツー書ばかり読む人も、私から見れば信じられない人種である。まず、『金持ち父さん、貧乏父さん』系の本を読んでいる人、こうすれば儲かるという投資本や、年収1500万円を稼げるといった本を読んでいる人は、間違いなく「庶民」のまま終わるだろう。できる社員系の本を読んでいる人も同じである。なぜならば、他人のノウハウをマネしているかぎり、その他大勢から抜け出すことはできないからだ。」

成毛さんをレスペクトしている読者は、歯に衣着せぬ物言いにしびれる。そうでない人たちは「この人って何様のつもり?」とあきれる。この本自体がノウハウ本という矛盾もある。著者の名前で開かれた講演会みたいなものだと思って買うべき本なのである。

タイトルの超並列読書とはありとあらゆる場所に本を置いて、それぞれの場所で読書するという方法。当たり前だが決して10冊を横に並べて読むわけではない。

「リビングにいるときはリビングに置いてある本を、トイレに入っている本はトイレに置いてある本を読む。1冊の本を持ち歩いて読むのではなく、それぞれの所定の場所でしか読まないのだ。」

実は私も長年、同じことをやっている。ソファアの下に数冊、枕元に数冊、会社の机に数十冊、自宅の机に数冊、実家に数冊、鞄に2冊、常に置いてある。気の向いたときに少しずつ読めるので、自然にたくさんの本を読める。

成毛氏が高所から言いたい放題の本だが、読書が人生を変革するという考え方や、既存の価値観に従って行列に並ぶような生き方をしていてはダメだというイノベーター精神には共感しまくりである。

「私は、3ヶ月に1度ぐらい大型書店に足を運ぶ。ただし、2,3冊を買うのではなく、「ここの端から端まで全部」という感じで大人買いをしている。たとえば、ジュンク堂では気がついたら100冊以上も買い込み、カートを用意してもらったぐらいだ。」

自宅と別荘に4万5000冊くらいの蔵書があるらしい。

「本は捨てない、借りない、貸さない」主義。私も同じ主義なのだが、このまま貯め込むと蔵書スペースが足りなくなる。もっと読んで、稼げということか。がんばろう。

・読書論
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/02/post-932.html

・読書について
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/01/post-913.html

・読書という体験
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/05/post-569.html

・世界の知で創る―日産のグローバル共創戦略
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グローバルな共創とはなにかを日産の海外R&Dセンターの事例で分析した本。ナレッジマネジメントの大家 野中 郁次郎氏と、人事戦略の専門家 徳岡 晃一郎氏による。日米欧における100人を超える関係者への取材を通してわかるグローバルビジネスチームの作り方。

日産が米国に研究開発の拠点を置いたとき、日本人とアメリカ人は仕事の進め方に大きな違いを発見した。「アメリカでは10人で一個の部品を担当するのが当たり前だったのに、日産では一人で10個の部品を担当している」という事実である。それは役割や責任の分担がまったく違うことに起因していた。

「一方、日本の会社では、どこをどう定義してよいかわからないぐらい、個々人の仕事の範囲や役割が入り組み、曖昧になっていることが多い。日産の開発部門も同様だ。アメリカ流が野球なら、日本流はサッカーのようなものである。それぞれのポジションと役割は決められているものの、一人が広い範囲を見ながら、個々を関連づけ、「察知力」を駆使して、仕事をするファジーなスタイルだ。状況によってはディフェンダーがゴールを決めることもある。自分の役割の範囲を超えて、時には他人の領域にも踏み込んで機転を利かすのが日本的なスタイルといえるだろう。」

個人の働き方だけでなく業界の生産方式も異なっている。自動車会社が作成した設計図で、自動車会社の責任で、部品メーカーに発注する「部品図方式」(アメリカの自動車業界)と、開発段階から自動車会社と部品メーカーが共同で試作と実験を繰り返し、満足できる段階になったら部品メーカーが設計図を提出し自動車会社がそれを承認する承認図方式(日本の自動車業界)という違いが両者の間には存在していた。

だが、日産では異なるやり方を乗り越えて、国際チームが協力して、売れるクルマを次々に生み出すことに成功してきた。そのノウハウを二人の著者は、

・グローバル知識綜合プロセス
・思いのある実践主義
・知を創造するグローバルチーム

と要約している。

日本のムラ社会のよいところを世界の言葉に翻訳したようなやり方かなと思った。

なるほどと感じた部分を抜きだすと、

1 すり合わせで柔軟に進める

「すり合わせと対比される「組み合わせ型」の開発では部品間の結合が標準化され、既存部品を組み合わせれば多様な製品ができる場合に効果的である。一方、「すり合わせ」は、制約条件が多く、部品の設計を相互調整し、製品ごとに最適な設計をしないと高い性能が出せない場合に効果的だ。パソコンが組み合わせ型の製品の代名詞である一方、自動車はすり合わせの典型であり、日本の自動車産業が強いのは、このすり合わせ型の仕事能力が日本人に適しているからだ。」

2 とことん議論して思いを共有する

「そのためには徹底した議論が必要であり、意志決定されたことは、誰かの意志決定ではなく、みなの意志決定になり、共有経験となる。「とことん議論して行き着いた先には『まぁ、こんなもんか』という一種の安堵感を込めた表現で決定がなされることが多い」(大久保)。これは単なる安易な妥協の表現ではない。互いの暗黙知が十分に発揮され、Best of bothの関係性が最高潮に達した状況だ。このようにお互いの関係性がきめ細かく織り込まれた「面」となってはじめて、表面的な関係を越えた、グローバルに共有できる日産開発陣のコミュニティ意識になっていく。それが思いのある実践主義の文化を支えている。」

点や線で合意するのではなく面や範囲で合意するということだ。

3 ウィキノミクスなものづくりへ

「...日本のオタクはモノづくりに夢中で、グローバル競争の視野はなく、自身のグローバル化へのモチベーションは低い。これはアニメのオタクに限ったことではなく、ハイテク大企業のエンジニアでも同じ状況だ。日本中がモノづくりへの「引きこもり」ですらある。モノづくりの強さが重要だった時代、それが勝ちパターンのすべてであった時代は問題なかったのだが、今後はソフト化、グローバル化、土俵作りの競争に乗り遅れると、モノづくりのチャンスまで失い、世界のローコストベンダーと化していきかねない。」

日本のクリエイターやエンジンニアはオタク部屋に閉じこもらずに、世界のオープンな協働の場でコラボレーションすべきという展望を述べている。

日本人や日本的大企業のよいところを踏まえた上で、グローバルな協同の場に活かす方法を提唱している内容の本だ。

・人事異動
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/03/post-947.html
徳岡 晃一郎氏の著書。


ところで、著者の徳岡先生らと私は昨年、多摩大学知識リーダーシップ綜合研究所を設立しました。知識創造型の企業を、「人材マネジメント」と「リーダーシップ開発」に焦点を当てて研究する機関です。セミナーや研修も請け負っています。お問い合わせ下さい。

・多摩大学知識リーダーシップ綜合研究所
http://www.ikls.org/

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