Books-Management: 2008年12月アーカイブ
・Subject To Change -予測不可能な世界で最高の製品とサービスを作る
ユーザーエクスペリエンス重視のコンサルティング会社として有名なAdaptive Path社のメンバーが執筆した製品開発の方法論集。イノベーション創造型ベンチャーの経営指針として有益なヒントになりそう。
「マーケティングの世界では、顧客が事実上ヒツジとして見られている。多数意見と宣伝文句という卓越風によってあっちこっちへと流される従順でのろまな生き物だ。人間に対するこうした見方が、何百万というフォーカスグループや市場調査を生み、追跡に熱中し、またポジショニングやパッケージ、広告などによって嗜好に影響を与えようという試みを引き起こした。」
多くの企業がユーザー調査から導かれる答えにばかり頼ってしまうのは、自分の考えで冒険するよりもリスクが少なくて、提案を通しやすいからという事情もありそうだ。調査結果に基づく提案は妥当のように思えるがエッジが立っていないものが多い。改善には役だってもイノベーションを引き起こす新製品にはなりえない。長年の経験に基づく勘や、極度に高いモチベーションに基づく試行錯誤の方が、市場創造型の新製品を生み出す方法論のような気がする。
「探究に行き詰ることが無駄な出費とみなされる環境では、真のイノベーションは生まれない。」と著者は書いている。冒険を奨励する環境づくりこそ経営者の課題なのだろう。そして、敢えてけものみちを行く会社は、的を得た質問からすばらしい新体験を生み出すという話も面白い。問題解決ではなく問題作りが凄い新製品を生むのだ。
「時として束縛がすばらしいアイデアのきっかけになることがある。かつての解決法(ライバルの現在の解決法でもよい)が避けて通ろうとした束縛に、正面から取り組むアイディアでは特にそうだ。簡単な例をいくつか。翌朝までに配達できたら?(Fedex)。持っている音楽を全部持ち歩けたら?(iPod)。レンタルビデオの延滞料がなくなったら?(Netflix)。ノートパソコンが誰でも買えるほど安くなったら?(「世界の子どもたちに1台ずつノートパソコンを」プロジェクト)。好きなときにテレビが見られたら?(Tivo)。的を得た質問はすばらしい新体験を生み出す。」
まとめ的な意味合いでアジャイル開発の手法が紹介されている。
・人と人との対話を、プロセスとツール、より優先する
・動作するソフトウェアを、包括的なドキュメント、より優先する
・顧客との協調を、契約交渉、より優先する
・変化への対応を、計画の遂行、より優先する
こうした手法は、組織がある程度デキル人の集団であることが前提にあるなとリストを眺めていて感じる。