Books-Management: 2007年7月アーカイブ

・仕事を100倍楽しくするプロジェクト攻略本
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著者は「バロック」「キングオブワンズ」「ぷよぷよ」「トレジャーハンターG」「魔導物語」等のゲームを監督/脚本/企画した米光一氏。仕事のプロジェクトをロールプレイングゲームの冒険に見立てて、その攻略法を説く。

米光さんはプロジェクトに対する観察眼が鋭いなあと何度も感心した。

「 根本の部分で冒険をデザインできていないと、必要のない苦労をすることになる。そうすると、人は「あのリーダーは人望がない」なんて言う。「人望がない」なんて言われると、簡単にはどうにもならない気がしちゃうけど、そんなことはない。
 ぐらぐらした土台の上で、ふらふらしながら、怒鳴ったり、愚痴を言ったり、言い訳しているから「人望がない」と思われる。
 冒険の土台をしっかり作れば、それだけで「人望がある」状態になる。かんたんだ。」
これは、自分の経験でも、その通りだよなあと、しみじみ共感する。

いいリーダーになれるかどうかは、能力や性格がどうだという以前に、ちゃんとした土台に立っているか、が問題なのだ。みんなが楽しめる、しっかりした土台の上にいるなら、ちょっとくらい優柔不断だったり横暴だったりしても、愛されるリーダーになったりするものだ。だからプロジェクトのデザインができる人こそ、いいリーダーなのである。

それから、”王様”とのつきあい方。これは他のプロジェクトマネジメントの本にはあまり書かれていない重要な事柄だと思った。若い勇者の冒険には”王様”という存在がつきものだ。会社という王国を率いてきた上司であったり、スポンサー、プロデューサーという人たちのことである。彼らは自分たちの方法論で成功した時代があった。

「新しい冒険では「旧A」という方法は使わない。別の「新B」という方法で行う。
勇者たちは「新B」という方法のよさをわかっている。逆に「旧A」については現場的な知識はないことが多い。古いよな「旧A」は、と思っている(そして実際に古くなっている)。
 だけど、「旧A」という方法でがんばってきた人たちにとっては、とても愛着のある方法だ。だから、勇者が「新B」の良さを言えば言うほど、勇者にその気がなくても「旧A」が否定されたように思えてしまう。」

王様の「旧A」に敬意を見せつつ、「新B」をやらせてもらう関係づくりが必要であるという話。この本のノウハウは、昔の言葉でいえば、空気を読み、根回しを怠るな、ということでもあるようなのだが、現代の勇者の気質向けにアップデートされている。

「ギラギラと競争するより、仲間と一緒にレベルアップしたい!
あくせく出世を狙うより、仕事を楽しく、充実させたい!
「オレについてこい!」と言われるより、自分で動きたい!

こう思っている人には、きっと最強の攻略本になります。 」

「ついてこい」式ではない、リーダーシップ論とも言えそう。

それから「ダメな会議の座席表」にバカ受けした。本のデザインやサイズもゲームの攻略本風で、最初から最後まで楽しく読める。

思考の整理学

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・思考の整理学
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初版は1983年。日本に”マイコン”が登場したころだ。著者は既にコンピュータ普及の影響を見通していた。

「これまでの学校教育は、記憶と再生を中心とした知的訓練を行ってきた。コンピュータがなかったからこそ、コンピュータ的人間が社会で有用であった。記憶と再生がほとんど教育のすべてであるかのようになっているのを、おかしいと言う人はまれであった。コンピュータの普及が始まっている現在においては、この教育観は根本から検討されなくてはならないはずである。」

人間らしい思考法を追求している。たとえば、まず寝かせるのである。

「思考の整理法としては、寝させるほど大切なことはない。」

大作映画の宣伝などで「構想ウン十年」というフレーズがある。あれはたぶん原作者がウン十年前に思いついたには違いないが、ほとんどの間は放っていたもののはずである。それでも、長く寝かされたテーマは発酵して力を持つことがある。人間の記憶とコンピュータの記録の違いだ。

小説などでも子供のころをテーマにした作品に名作が多いのは、それが理由なのではないかと著者はこう述べている。「素材が充分、寝させてあるからだろう。結晶になっているからである。余計なものは時の流れに洗われて風化してしまっている。長い間、心の中であたためられていたものには不思議な力がある。寝させていたテーマは、目をさますと、たいへんな活動をする。人間には意思の力だけではどうにもならないことがある。それは時間が自然のうちに、意識を超えたところで、おちつくところへおちつかせてくれるのである。」

寝かせるということは完全には忘れないようにほどほどに忘れるということだ。それでも強化されていくテーマは本物のテーマなのだ。「これはその人の深部の興味、関心とつながっているからである。忘れてよいと思いながら、忘れられなかった知見によって、ひとりひとりの知的個性は形成される。」

忘れないようにしながら、いったん忘れるために、紙に書き出して記録するのがよいと著者はすすめている。手帳→ノート→メタ・ノートというユニークな著者のメモ術が紹介されている。日常のメモは手帳に、重要なことはノートに転記し、さらに重要に思うことはメタ・ノートへ転記せよ、という手法である。

転記がすすむにつれ、重要度とともに抽象度も上がっていくわけで、究極のメタ・ノートというのは、座右の銘やことわざのようなものになっていくのかもしれない。そうやってメタに上がってくるものを常に見直すことが、思考の整理術として最重要なのだろう。

考えるということについて、本質的な考察がエッセイとして楽しく読める古典。

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