Books-Management: 2006年8月アーカイブ
叩きのめさず、叩きのめされずに、すがすがしく自己主張するのがアサーティブ交渉術。「話し上手」になるのではなく、「聞いてもらい上手」になりましょう、というのがこの本の趣旨。
相手が聞きたい話をして、YESをもらう方法として、
1 言い訳をしない
2 優先順位をつける
3 時間を区切る
4 きちんと言い切る
というポイントが挙げられている。
× 「今日はとりあえず、ごあいさつということで」
○ 「新製品のメリットをお伝えしたい」
というわけだ。
そして、相手が聞きたいことは何かを考えて、
× 「社運を賭けた新製品を、ご紹介したい」
○ 「御社のコスト削減に役立つ新製品の特徴をご理解いただきたい」
というように、最初の説明で、Win-Winの関係を作れば、言いたいことを言っても、YESがもらえる。
アサーティブ交渉のために、、
15秒のインパクトを与えるスピーチ
90秒の納得感を与えるスピーチ
の2つのスキルを強化せよ、と著者は説く。
・「昨今のビジネス環境」を語るべからず
・「自己アピール」と「自慢」をしっかり区別する
・「がんばります!」ですまさない
など、やってしまいがちなポイントの具体例と、こう直すとよくなるという模範例に、納得する。
90秒スピーチは、あいさつ、名乗り、アイスブレイク、予告、本論、結びの6パートで構成せよ、としている。いくつかの選択肢を選ぶだけで、自分版の90秒スピーチの台本ができあがる「プリフィックスメニュー」はとても参考になった。
・一瞬で信じこませる話術コールドリーディング
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003895.html
・人を10分ひきつける話す力
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003857.html
・ワルに学ぶ「実戦心理術」
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003180.html
・NYPD No.1ネゴシエーター最強の交渉術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003031.html
・トップに売り込む最強交渉術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000324.html
・心の動きが手にとるようにわかるNLP理論
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000609.html
・「できる人」の話し方、その見逃せない法則
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000445.html
・悪の対話術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002109.html
・ハーバード流「話す力」の伸ばし方!―仕事で120%の成果を出す最強の会話術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000228.html
・パワープレイ―気づかれずに相手を操る悪魔の心理術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000150.html
・ソリューション・セリング―賢い売り手になるための10の戦略
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000145.html
・外見だけで「品よく」見せる技術 ファッション、しぐさ、話し方
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003381.html
・話し方の技術が面白いほど身につく本
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001029.html
・人生を変える黄金のスピーチ〈上〉準備編―自信と勇気、魅力を引き出す「話し方」の極意
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001456.html
・人生を変える黄金のスピーチ〈下〉実践編―自信と勇気、魅力を引き出す「話し方」の極意
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002404.html
著者はグラフィック・ファシリテーションの専門家である。
「グラフィック・ファシリテーションの手法は「集団によるエネルギー」「学習のためのセオリー」「イメージマップ」という三つの要素の微妙なバランスによって成り立っています。これらの要素を組み合わせることによって、反対意見の応酬でちっとも意見がまとまりそうにない会議をアイデアを生み出す場に変えることができるのです。」
これは検討課題を絵図で表現することで、円滑に議論する方法論である。ホワイトボードや配布文書に描かれた絵図は、文章よりも、参加者の関心を確実に集める。効果的に絵図を活用できれば、具体イメージを喚起させたり、話をまとめやすい。
「ユーザー」や「電話」、「サーバ」や「データベース」を絵にする。☆や○など基本図形を使う。飾り文字を書く。図形をレイアウトしてクラスター図を描く。価値基準の軸を持つグリッドに図形を配置して整理する。らくがきをグループ思考ツールとして役立てるためのコツが紹介されている。
基本図形の例が、絵描き歌のような筆順付で、大量に収録されている。人や車やパソコンの簡単な図形。これをいくつか覚えるだけでも、ホワイトボード上手になれそうだ。上達のための訓練法が「やってみよう」演習として各章で用意されている。
たとえば「テレビを見て視覚的な比喩を書き取りましょう。まず、ほかのことは何もしないで聞いてください。次に、聞き取った視覚的な比喩を書き出します。その後、その言葉を絵にします」。傘下に入る、水に流す、雀の涙、峠を越す、話がどうどう巡りをする、話が飛躍する、などの比喩を絵図で表現するという練習だ。
直線や円のキレイな描き方、レタリング(文字)、水平に描く、高さをそろえる、フキダシやフレームなどのアイデア、系図やダイアグラム、遠近法など、初級者から上級者まで、ホワイトボードの達人への道が語られている。
わかりやすい図をスラスラと描く人は、創造的なアイデアマンに見えるし、紛糾した議論の内容をグリッドや系図、関係図で鮮やかに整理する人は、知的なリーダーに見える。らくがき思考のらくがきは、会議中でも独りで練習できるわけだから、ちょっと取り組んでみようと思った。練習中。
・パワーポイントは不要?ドローエディタ ディスカス
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003485.html
・ビジネス図解に強力なSVGcats
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000827.html
・フォント考、印象の良さ、強さ、周辺ビジネス
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000526.html
・最強の戦略は「図」で立てる
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000490.html
・デジタルとネットワークで会議は踊る?
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003244.html
・「物語力」で人を動かせ!―ビジネスを必ず成功に導く画期的な手法
人を論理で説得する。その難しさは誰だってわかっている。実際には人は論理だけでは納得しないのだ。この本はビジネスのコミュニケーションやマーケティングにおいて、物語の力を活用せよと説く。
「モノを売り込むには、論理で攻めるよりも、相手を共感させ、感情移入させる「物語」のほうが効果的」。従来の「ロジカル・シンキング」の落とし穴は、人間が純粋にロジカルな存在ではなく、感情を持った非ロジカルな存在だという事実を見落としていることにある。
物語には、単なる論理の理解ではなく、共感、感情移入、想起、想像というプロセスがあるから強いと著者はいう。人類史上最大の説得力を持った聖書は、事実や論理ではなく、物語という形式をとっているではないかという。
「現在」から入り、いったん「過去」にさかのぼり、再び「現在」に戻ってくる「V字型のストーリー」が効果的だとする。失敗や挫折を乗り越え、主人公が出発点からどこまで到達できたのかの遠近感に人は感動するのだという。誘因、紛糾、危機、山場、解決の構造。NHKの番組「プロジェクトX」など成功物語のほとんどは確かにこの形式を取っているなと思う。具体的なV字型ストーリーの構成法が語られる。
物語法は製品開発においても効果があるという。従来の製品開発形式には、明確な市場ニーズを満たす製品を作る「需要プル型」と、明確な技術シーズを適用するための市場を探す「技術プッシュ型」の2種類があるが、近年、どちらでもない「芸術型製品開発」が増えているのだという。消費者のニーズも、技術シーズもはっきりせず、両者を対話させながら、開発が進行していくケースのこと。
多くのインターネットの「Web2.0」なものの開発がその例だと思う。市場ニーズも技術シーズもはっきりしないが、断片的な情報に予兆を読み取り、こうしたサービスを消費者は使うようになるに違いないという「意味」をみつけていく。まさに物語をみつけるプロセスである。
物語は組織を率いるリーダーの言葉としても効果を発揮する。リーダーシップとは、チームで物語を作り、共有することでもあるからだ。
「
リーダーは自分の物語を追及するだけではダメ。チーム内のひとりひとりを主人公に見立てた物語を本人たちと共有し、つねにプロジェクト全体に目配りできることが大切です。」
利点を図や箇条書きにしただけではダメで、相手を主人公にした利用シーンを語ったら、わかってもらえた、ということはビジネスシーンでよく経験する。過去の成功を伝説や神話にすることで長く繁栄している企業もある。論理で戦略を立てて、物語で人を動かす方法について、とても参考になる一冊だった。
大学で担当している前期授業が終了。今年は有能な学生アシスタントのM君に毎回とても助けてもらった。彼はまだ2年生だが放送部部長で、FMラジオ局で番組制作のアシスタントのアルバイトもしたりしているらしい。道理で現場アシスタントの役割を熟知しているなあと感心し、仕事のイベント業務も手伝ってもらったが完璧な動きをしてくれる。若いけれども、プロだと思った。
彼がいると、授業というフライトの「自動操縦」ができる。
「前列から席が埋まってほしいんだよね」とぼやくと、私に代わって「前から座ってね」と授業前に学生に呼びかけをしてくれる。それでも効果がないとわかると、次回から、入場時に教室の後列の照明を消しておく手法を編み出した。自然と前列からの着席になり、効果があった。
私の授業はパワーポイント資料を大きなプロジェクタースクリーンと、後列のモニターに投影して進める。ワーキンググループ活動の時間には課題内容を画面に投影している。このときに、私がプレゼン用PCで他の作業をしようとすると、「画面をフリーズさせますね」と確認してくる。最初、何のことかわからなかったのだが、プロジェクターの画面固定機能のことだった。これは便利だ。
ゲスト講師のいるときは、私がゲスト紹介を始めている後ろで、ゲストのPCの機器設定を手早く進めている。紹介が終わる頃には、ゲストがスムーズにプレゼンを開始できるようになっている。マイクの音量や照明、ドアの開閉に常に気を配っており、頼まないでも最適化してくれる。
こうしたことを、彼は、私を質問攻めにしないで遂行する。目で合図できるアシスタントは珍しい。私にはない機材知識や現場経験からの提案は有効なことが多い。授業やイベントの最初から最後までをイメージしている人間が、私以外にももう一人いるというのは、大変な安心感があり、自分の仕事に集中できる。
信頼関係ができて、いろいろな問題を話しかけたり、相談を受けたりするようになった。私が彼の主張に異論を唱えることもあるが、その場では反論しないで、いったん飲み込んでくれる。そういう彼の態度から、逆に自分が間違えたかもしれないと、私の方が内心気になり始める。アシスタントとしての彼の「飲み込み」は、私に対して反論以上の効果をあげている。
さて、この本は、大統領補佐官のアシスタントとして働いた後、クリントン大統領再選時のテキサス州選挙対策事務局長、ポロ・ラルフローレンIR担当役員などを歴任した女性アシスタントの仕事術である。
・ボスのためにどんな情報リストを管理すべきなのか
・書類整理、電話対応、スケジュール管理、出張手配などの技術
・ホワイトハウスで使われているブリーフィングメモの実物公開
・アシスタントのキャリア(いつかボスになるために)
・ボスとのコミュニケーション術
など、アシスタントの仕事について現場の経験をベースにたっぷり書いている。学生や新入社員はまずアシスタント業務につくことが多いはず。経営トップのマネジメント論も大切だけれど、アシスタントとしてプロになることが、トップへの近道であったりするかもしれないと思った。