Books-Management: 2006年5月アーカイブ

・ストレスフリーの仕事術―仕事と人生をコントロールする52の法則
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百式管理人 田口元監訳。日本語版解説で田口さんは「知識社会で生き残りたいなら、作業や時間を管理するだけの手法は役立たない。必要なのはアイディアとエネルギーを管理する手法である。」と書いている。知識社会の仕事とは、部品組み立て作業のようには明確な終わりが見えないものだ。いいアイデアが生まれるまで終わらない企画の仕事だとか、複雑に絡み合う複数プロジェクトの同時進行のような仕事では、現時点の達成度が何パーセントとはわからないことが多い。

終わりの見えない仕事群を相手にする知識労働では、単なる進行管理だけだと、ストレスで仕事の質すなわち創造性が落ちてしまう。すっきりした気分でワクワクしながら仕事をすることが大切になる。著者のデビッド・アレンは、GTD(Getting Things Done、邦訳「仕事を成し遂げる技術」)の中で、知識労働のための具体的なToDo管理技法を提案し、ベストセラーになった。

GTDとは、

1 頭の中の「やりかけの仕事」を全部書き出して意識的に把握しよう
2 書き出した「やりかけの仕事」に対して、次にとるべき行動を決めよう
3 次に取るべき行動を信頼できるシステムで管理し、定期的に見直そう

という3ステップを実践するための方法論である。

この本では、GTDの原理にもとづき、仕事と人生をコントロールするための心得とノウハウが、次の4つのカテゴリに分類されて、52個解説される。

・物事を片付けること
・集中すること
・枠組みを活用すること
・実際に行動を起こすこと

最後まで読んだら付箋を30枚もつけていた。日常の仕事で何が問題かずばり指摘してくれる箇所が多かった。例として3つほど付箋の箇所を引用してみる。


記憶というものは、保存したものを、最新(時間的に)かつ最も目立つ(感情的に)という基準で取り出す傾向がある。これはどう考えても効果的なファイル検索システムとはいえない。同じように、「やるべきこと」のリマインダーが行き当たりばったりのいい加減なものであれば(パソコンにポストイットを貼り付けたり、机に伝言メモを置いたり、椅子にメモを貼り付けたり)、忙しさにかまけて、ついついいちばん簡単なことにとびつき、忙しいふりを続けることになる。しかし、文字どおり目の前にあることをやるのは、今すべきことを選ぶ基準として適当ではないはずだ。

「プロジェクトは実行不可能」。プロジェクトリストとToDoリストには決定的な違いがある。ToDoリストにプロジェクトを入れないこと。

「システムが得意なのは、何かを覚えたり、思い出してくれる機能だ。一方、あなたの頭が得意なのは、次々に出現する情報をもとに、考えをまとめ、創造的に意思決定することだ」

そして本書のテーマであるストレスフリーというキーワードは、仕事と生活の境目が曖昧な知識労働を軽やかにこなすノウハウでもあるなと思った。生産性を創造性で測る時代には、作業効率化や能力開発よりも、ストレスフリー化こそ全体最適な方法論になるのだと思った。

・ Life Hacks PRESS デジタル世代の「カイゼン」術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004414.html

・百式2冊同時出版と管理人への7つの質問
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000872.html