Books-Management: 2004年10月アーカイブ

・スナップ・ジャッジメント瞬間読心術
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「パワープレイ」などの小手先心理操作術で名をはせた著者が、今度は瞬間読心術を新書で出している。心理学の論文や統計データをもとに、ジェスチャーや口癖、体型や服装から、相手の心理を読んだり、類型に分類するための診断リスト集。

・丸顔の人→迷信的
・まぶたが厚ぼったい→嫉妬深い
・耳が小さい→臆病で粘り強さに欠ける
・あごの先がほっそりしている→創造力豊かなアイデアマン
・「でも」が口ぐせ→超保守的

実用性はあるのかどうかはさっぱり分からない。当たることもあれば外れることも多そうなものばかり。ただ、読心術というのは相手の腹を読みきっているという自信が、交渉でイニシアチブを取るきっかけになるという面もありそうだ。交渉はスキルが同じなら、強気なほうが大抵は勝つわけだから、相手と状況を把握したと思い込めるのが大切なのだとも思う。
この本は文章を書く人にとって参考になるかもしれない。コラムや小説などの中で、人間を描写したいときに、動作や容貌描写で性格描写を行いたいことがある。だが、普段余程の人間観察家でない限り、何を書けば性格描写につながるか分かりにくいものだ。

例えば、次のように描写した場合、

A 彼は細く白い指で資料の数字を指差した。
B 彼は太く骨っぽい指で資料の数字を指差した

これだとだいぶ意味が違ってくるだろうし、

A うつむきがちに手を後ろに組んで彼は部屋に入ってきた
B 早足で手を大きく振りながら彼は部屋に入ってきた

やっぱりこれも印象が違うと思う。

性格と動作が一致するかどうかは分からないが、タイプAの方が繊細で、Bの方が自信家の印象を与えるだろう。文章を書く場合、どこに着眼して書くかが重要である。実際には、細く白い指でうつむきながら歩く自信家もいるのだろう。だが、そう書いたら性格描写としては伝わりにくい。スナップジャッジメントに登場する診断項目と性格分類にはこうした事例が多数含まれている。

個人的には後半の逆ジャッジメントの方が面白かった。こういう性格の人はこういう態度、容貌をしているというリスト。前半と逆である。

関連:

テレビの有名人の動きを分析した下記のサイトも面白かった。久米博のジェスチャーはそういう意味があったのか。

・人の動き研究室 人とお店のアクション分析
http://homepage2.nifty.com/ugoki/page/top.htm

記憶する技術―覚えたいことを忘れない
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記憶力を高めるためのノウハウ本。さまざまな研究をつまみぐい、エッセンスを読みやすくまとめていて、幾つか、気づきがあった。

「必要のないものは、ムリに覚えない」という章があって、アインシュタインは自宅の電話番号も、専門であるはずの光の速さも暗記していなかったという逸話が取り上げられている。必要としなければ天才でも覚えられないというのにほっとする。逆に言えば覚えようとしなくても覚えられることもある。動機づけが大切ということ。

面白かったのはかつてのエチオピアの国を上げての学習強化エピソード。90%の国民が文字が読めなかったので政府は、8歳以上の子供のいる家庭で文字が読めない家族がいる家には赤いステッカー、全員でできれば黒いステッカーを貼る運動を推進した。赤いステッカーが恥ずかしいので国民は必死に勉強し、識字率向上に成功したという。そういえば、私も講演など人前で話す直前に暗記力が良くなっている気がする。恥ずかしい思いをしたくないからで、やらないと恥を書く状況を作り出すのは手なのかもしれない。

瑣末な周辺情報やディテールを敢えて覚えることで、記憶が定着するというノウハウも心当たりがある。大学受験時に予備校で名物講師がいたのだが、この先生は試験には出ない世界史裏話をよく話してくれた。トルコのオスマン帝国では、王座を継ぐには兄弟を殺してからという法律があったこと、くらいまでは試験に出るのかもしれないが、具体的に絹の布で両方から従者が首を絞めて殺したんだよ、みたいな部分は出るわけがない。だが、実際にはこの生々しいシーンが記憶に残って、オスマン帝国のその他の事項が試験では思い出せた。

著者は記憶術の専門家でない分、この本では、自説に固まらず、幅広く理論や経験則を提示してくれるので、これは私向きかも?というアイデアが見つかる本だった。記憶力は頭の基礎体力みたいなものなのだと思う。調べれば分かるで用が済むことが多いが、覚えていればもっとクリエイティブなことができるチャンスがある。会議で統計の数字や前期の売り上げを「後で調べておきます」で決定が次回回しになってしまうことなど、惜しいなあと思う。

以前、毎回感動しながら見ていたドラマ、(アート引越しセンターがモデルの大阪人情ベンチャー成り上がり物語、藤原紀香)があるのだけれど、

・あなたの人生お運びします
http://www.tbs.co.jp/ohakobi/contents.html

このドラマでは顧客名簿を盗まれたとき、記憶力の強い社員が顧客名簿を丸暗記しており危機が回避された。実話だったかどうかは知らないが、こういう人物が社内に一人いたら、会社では戦力になる気がする。

インドでは、九九の計算を、9*9ではなく22*20まで暗記させるそうだ。日本では詰め込み教育への批判で、暗記は軽視されているようだが、基礎体力不足に陥らないと良いのだが。

関連情報:

・Passion For The Future: なぜ、「あれ」が思い出せなくなるのか―記憶と脳の7つの謎
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000470.html
この本はとてもよかった。名著。

・Passion For The Future: 記憶力を高める50の方法
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000974.html
今日の本に似ている。

・Passion For The Future: 「3秒集中」記憶術―本番に強くなる、ストレスが消える、創造力がつく
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001014.html
円周率暗記、元世界チャンピオンの本。

・Passion For The Future: あたまのよくなる算数ゲーム「algo」
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001072.html
記憶力を鍛えるゲーム。

40字要約で仕事はどんどんうまくいく―1日15分で身につく習慣術
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「仕事は核心をつけばうまくいく」という発想から、何でも40文字に要約する習慣でビジネス力をパワーアップしましょうという趣旨の本。40文字の理由は短歌がヒント。歌人なら5・7・5・7・7=31文字に、通常文で数千字を要するであろう内容を圧縮できるから、だそうだ。40字ではひとつかふたつのことしか言えないということでもある。

第1部では、文章を短くする技術や、キーワードの見つけ方、電車吊り広告を使った要約の練習方法などが解説される。この本はビジネスマンのための要約術であって、国語の教科書とは違う。俗に言うホウレンソウ(報告・連絡・相談)に使うための要約が常に意識されている。単に短くまとめるだけでなく、要約の目的を明確にすべきという指摘に頷かされる。

要約の正解はひとつではないわけだ。事実の報告に使う場合と、交渉説得材料に使いたい場合では40文字に残す内容は違ったものになる。要約とは言葉を深くすることでもあるなと理解。深くするためには制約が必要なのだ。それがここでは40字という字数限定になっている。

要約ノウハウは、ノーレットランダーシュが「ユーザーイリュージョン」で語った外情報とコミュニケーション会話木を連想させる。相手に伝わるようにどれだけ意味を切り捨てることに努力したか、その手間こそ情報量なのだ。


最も為になったのは第2部の実践編。新聞雑誌記事、コラム、専門的文章、白書、審議会答申、セミナー、業務報告書、後輩からの相談メールなどの実例を使った要約練習問題が用意されている。ポイント解説と著者の回答例が示される。

練習問題のバラエティの豊かさを楽しみながら、私もひとつ問題を考えてみた。

「あなたのここまでの人生を40字で要約してください」

むむむ、自分で作った問題だが、答えられない。

参考:

受信したメールを携帯向けに自動で要約してくれるサービス。

約丸:製品紹介
http://www.infocom.co.jp/yakumaru/
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非常に使ってみたくて契約意欲ありで、


1ライセンスあたり 年間 3,780円 (消費税込)

月換算すると 315円!と大変リーズナブルです。

まではいいのだが、問題は「ご購入は10ライセンス単位とさせていただきます。」という縛りがあること。

10人集めるのはなかなか難しい。9人集まってもう一人というグループがあったら私を入れてください。


経験や行動履歴の漫画的要約表現
http://www2.mic.atr.co.jp/JSAI2001/papers/0087.pdf
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上記論文から画像引用。

漫画で要約する理由は、

a 親しみやすい
b 一覧性が高い
c 表現力が高い
d 時系列に沿った表現が可能

実際にユーザの展示会における行動を漫画に要約するシステムを開発した研究報告。すべてを漫画で読めたら面白すぎ。

・Passion For The Future: テキスト簡単化と図表化のテクノロジー
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000692.html