Books-Management: 2003年9月アーカイブ
最近こんな本を読んで、気になる情報があったのでメモに残していた。
会議の運営方法についてのベストセラー本であるが、こんな一節がある。
『
社会心理学者のジェイ・ホールが行った実験に「月で遭難したら」というものがある。彼はさまざまな状況下でグループはどのような決断を下すのかを研究して、「グループが協力して導き出す結論は、各人が考える方法の平均値を上回る。もっとも優れた個別のアイデアと比べても、はるかに優れた結果になることが多い」(PsycologyToday1971年11月号51ページ)と結論づけた。
』
この実験は、「宇宙船が月に緊急着陸し、320キロ向こうにある母船まで月面を移動しなければならない、船内にあるもの(酸素ボンベ、ロープ、水、コンパスなど多数)のうち、何を持っていくべきかを優先順位つきで選べ」という問題を被験者に一人で、そしてチームで考えさせ、NASAの正解と、単独時及びチーム時の回答の差を正しさとして計算する、というものであった。
つまり、一人で考えるより、皆で考えた方が良いアイデアがでる、という実験結果が示されたわけだ。つまり「三人寄れば文殊の知恵」を実験が証明したことになる。
マウスやハイパーテキストを発明したダグラス・エンゲルバート博士は、近年、「Bootstrap Alliance」という知識コミュニティによる知の相乗効果を研究している。彼流に「三人寄れば文殊の知恵」を表現すると「CollectiveIQ」という言葉になるらしい。ネットでデータを集めることはできるようになった。次は、各自が集めたデータを、「集合知」として企業組織や個人が、情報に、知識に、そして知恵に変えていくかが重要な問題だ。Bootstrap Allianceのサイトには博士の知見の詰まったペーパーが多数公開されている。
・【INTERVIEW】マウスの誕生から30年、ダグラス・エンゲルバート博士に聞く
http://ascii24.com/news/i/keyp/article/1998/12/08/614412-000.html
・ダグラスエンゲルバートのBootstrap Alliance
http://www.bootstrap.org/
今日の私のコラムは、日経先端技術情報センターへの寄稿記事を途中から改編したものです。オリジナルのフル記事に関心のある方はこちらへどうぞ。
・第1回■ひとりで考える、皆で考える、どちらが有益な結果が出る?
http://sentan.nikkeibp.co.jp/mt/20030805-01.htm
・第2回■成功する会議の条件
http://sentan.nikkeibp.co.jp/mt/20030812-02.htm
・第3回■オンライン会議ツールとコラボレーション効果
http://sentan.nikkeibp.co.jp/mt/20030819-01.htm
60分間・企業ダントツ化プロジェクト 顧客感情をベースにした戦略構築法
時代の寵児。出す本が次々にベストセラーの実践マーケッター神田昌典氏の集大成的な作品。文章がうまい。いや、とにかくうまい。中小企業のマーケティングのツボを芸術的なまでにコンパクトにまとめあげている。彼の本を読むと、そこで公開されるノウハウを、明日からちょっと試してみようかなと思ってしまう。
この本が扱っているのは一般的で応用の広い、商品ライフサイクルのS字カーブ理論や、市場分析手法、お金をかけないでも有効なゲリラマーケティング戦略、戦略的意思決定といったマーケティングと経営の基本テーマだ。
神田氏はMBAをお持ちだが学者というわけでもないし、純粋に現役のマーケッターだとも思えない。その「スター戦略理論」というのも、古典的なマーケティング手法やMBAコースの内容、中小企業のよくある経験則を集大成したものであると言うこともできる。独自性はあまり感じない。しかし、それでもなお、彼の本は経営に悩む経営者にとって読む価値があるものであり、一流の中小経営コンサルであると私は感じる。
彼の本はわかりやすく、読者を楽しませながら、やる気にさせるからだ。一般向けのマーケティング書籍の役割はつまるところ、そんなものだろう、と思う。これから起業しようと思っている人、経営を志す学生には特におすすめ。
内容の高度さから考えて、マーケティング本のマニア層、大企業の経営者、研究者には物足りなかったり、ピンとこないかもしれない。そういう人であっても一般に広く売れる経営書籍というのがどういうものなのかをこれを読んで勉強することはできる。
ちょっと穿った見方で評論をしちゃいましたけど、純粋にいい本だと思います。
評価:★★★☆☆
営業するときに、フィーチャー(特徴)、アドバンテージ(利点)、ベネフィット(利益)を区別して話すべき、という部分には納得。
例えば、コーヒーカップを売るのであれば、
フィーチャー :特徴
このコーヒーカップには取っ手があります
アドバンテージ:利点
それがあなたの指を火傷から守るでしょう
ベネフィット :利益
それはあなたが避けたいと思っていたことですよね
という分け方になる、と。特徴の利点を顧客の利益として説得しないといけないわけだが、売り手は結構これら3つの違いを混同してしまうので気をつけようとのこと。確かに営業は特徴や利点を夢中になって説明しても、お客さんの立場から見た利益が明確にならないと販売って難しいですねえ。ソリューション(問題解決)を売ることはモノが見えないソフトウェアビジネスではとても重要そうです。
翻訳がもっと、こなれていれば面白い本のような気がしました。
というわけで1時間後に本日最後の営業アポ。上記ポイントに気をつけて、行って参ります。
評価:★★☆☆☆
数学で身につける柔らかい思考力−ビジネスと日常の疑問が解ける!−
目次をまず紹介。
・どうすれば理想の結婚相手を選べるか?―順次決定における37%ルール
・なぜスポーツの世界では番狂わせが起こるのか?―劇的逆転を演出する数学
・賭けるべきか?降りるべきか?―クイズ番組と決定理論
・なぜエレベータにいつも待たされるのか?―待ち時間削減のロジック
・なぜタクシーメーターは降りる直前に上がるのか?―料金
世の中はいろいろな数字と方程式に支配されていて、それを知ると賢くなった気がします。
「どうすれば理想の結婚相手を選べるか?」。あなたが男性で、順次10人の女性とお見合いできるとして、一度断ったら、前の子の方が良かったなあと思っても、その人とは結婚できない。そういう状況にいる場合、何人目でプロポーズするというのが確率的にベストの相手と結婚できる方法でしょうか?
数学的な答えは「初めの3人とデートして、その後、その3人よりも高得点だと思う人がみつかったらすぐにプロポーズせよ」という戦略だそうです。
「エレベーターはなぜ待たされるのか?」。エレベータは15秒待つとイライラしはじめ、25-30秒で何人かがこれはダメなエレベータと思い始め、40秒経過してしまうとみながそう思うそうです。いいエレベータを設計する方法論などが数学的に語られています。
ちなみに機械の速度は変わらないのに、エレベータの前に鏡を置いたら、待ちを感じさせなくなって、誰からもクレームがつかなくなったという実際の事例もあるそうで、現実の問題の解はさらに複雑ですな。
こんな日常の数字やロジックが語られていて、コーヒーブレイクの時間に知ったかぶりで語れば、周囲からへえー、へえー言われることは間違いないでしょう。(経験者は語る)
評価: ★★☆☆☆
著者の五十棲 剛史氏は、船井総研で、会長、社長に続いて一人で利益1億円を稼ぐカリスマコンサルタント。同社で4期連続ナンバー1、しかも1963年生まれと比較的若い。そういう人というのは日々どういうことを考えて仕事をしているのか気になって読んでみた。
即時処理が成功の秘訣、お客様に紹介を意識させれば紹介は増える、ブレイクスルーは常識を変えることから、など、朝礼のお話チックなテーマが多いが、文章が分かりやすく、身近な例を引くことで、自然に受け入れられるようなアドバイスになっている。当たり前のことを気がつかせてあげる、やる気にさせてあげる、というのがこの人のコンサルとしてのうまさのような気がした。
この本はメールマガジンの内容の再編集のため、ひとつのアドバイスが3,4ページで読みきれる。電車で読むのに適している。
評価: ★★★☆☆
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