Books-Internet: 2012年12月アーカイブ
週刊アスキー 2013年 1/29増刊号 は、指に着ける「ウルトラマウス」が付録としてついてくる。580円。オマケのマウスなんてたぶんロクなモノではないだろうなとわかっていながら、こういうガジェットをコスト的に無理してでも、年末号の付録にする出版社の心意気が大好きなので、即購入してみた。
質感としてはそれほど安っぽくはない。
雑誌の表紙イメージだけ見ているとまるでワイアレスみたいだが、さすがにこの値段でそれは無理だったみたいで普通にUSBケーブルでPCに接続する。人差し指にマウスを装着して、光学読み取り面を下を向けてマウス操作を行う。人差し指でマウスパッドの上をなぞる感覚。
これはジェスチャー操作がやりやすいからウェブブラウジングと相性いいんじゃない?と思ったが読み取りが雑なために、カーソルを思うように動かすのが難しい。それに比べると左右のクリックボタンとマウスホイール部分は操作性が良い。
クリックとホイールだけで操作するアプリを、寝転がりながら行うのによいと思うのだが、それってどういうアプリだろうかが不明。
結局、実用性としては大変な疑問符がつくシロモノだったが、質感が悪くないし用途を考えるのが楽しいのでかなり気に入っている。2週間くらいは遊べそうだ。
・LINE なぜ若者たちは無料通話&メールに飛びついたのか?
コグレマサトさんとまつもとあつしさんがタイムリーにLINEの人気分析本を出版した。
初期のLINEは面白さがわかる人とわからない人が明確に分かれたサービスだったと思う。かつてSkypeに飛びついたコンピュータのアーリーアダプター層とは異なる、ビギナーというかほんわかミクシイを楽しんでいる若者がよく使い、逆に大人たちは何が面白いんだろうと首をかしげていたように思う。それがあっという間にユーザー数8000万人。いまやフェイスブックやツイッターよりも成長スピードが速い。
この本ではLINEのメインユーザーとは、
・スマートフォン中心でパソコンを使わないような若者が中心
・スタンプを使ったカジュアルでエモーショナルなコミュニケーションを好む
・「アドレス帳のマッチング」を通じて毎月500万人以上の増加を続けている
だと簡潔に総括されていた。この勢いはフェイスブックが似たようなメッセンジャーを出しても衰えることがない。チャットの王者だったSkypeも大きく水をあけられた格好だ。LINEがこれまでのグループチャットと違うのは一目瞭然だ。会話よりもスタンプが目立つ。ビジュアルでエモーショナルな会話ができること。
本書のインタビューではLINEのプロジェクトを率いるNHN JAPANの舛田淳氏は、LINEの重要なポイントとなった大きなキャラクターのスタンプの開発経緯についてこう語っている。
「そういった「スマートコミュニケーション」に何が求められるのか?というと、スピード、リアルタイム性はもちろんですが、もう一つは、いかに感情をインスタントに、シンプルに伝えられるかということに腐心したんです。」
ソーシャルネットワークが発達したことで、私たちは互いの背景情報を共有することが簡単にできるようになった。だから交わされるメッセージは絵文字のように短くなっていく。互いの文脈を共有できているので、長々と説明をしなくても、短いつぶやきで、微妙なニュアンスまで伝達してしまうのだ。そして電話番号を知っている親密な関係性では、会話の内容よりも、つながっていること、会話をしていること自体が主なメッセージであることも多い。LINEのエモーショナルなスタンプによる会話は、SNSとスマホの時代のニーズを絶妙にとらえている。だから流行しているのだと思う。
もちろんエモーショナルなコミュニケーションはエモーショナルな関係性を産む。ケータイiモードの立役者だった夏野剛氏が、本書のインタビューの中で、LINEが出会い系になってしまうのでは?という懸念に対して「出会い系がいけないと言われているのは日本だけなんです。よく考えたら何でいけないのかわからないんです。渋谷でナンパするのと、mixiで出会うのと何がいけないのか分からないんですけれど、日本だけが特別倫理上の話をするんですね」と答えているのが面白い。そうかグローバルでは出会い系は問題なしか。
LINEの使い方ではなく人気の理由を考える材料がいろいろ入っているタイムリーな新書。