Books-Internet: 2011年9月アーカイブ
・ドラゴンフライ エフェクト ソーシャルメディアで世界を変える
スタンフォード大学の人気講義の書籍化。
ソーシャルメディアを使って個人や企業が社会的にインパクトのある活動をするための戦略を具体的なケースを挙げながら解説する本。同じ翔泳社刊の『グランズウェル』のアップデート版みたいな内容である。
ドラゴンフライエフェクトとは、日本語に訳すとトンボ効果である。トンボは4枚の羽を連動させて飛んでいる。私たちがソーシャルメディアを使って上空に飛翔するには、
1 焦点 目標を絞る
2 注目 目立つことをする
3 魅了 感情に訴える
4 行動 行動を支援する
という4枚の羽をうまく連動させなければいけないという意味である。
インターネットでお金を使わずに、個人や企業の活動を広く知らしめたいと思った時のノウハウ集である。たとえば、ネットの世界で目立つには、
私的さ 相手に私的関心を抱いてもらう
意外性 相手の好奇心を刺激する意外性を示す
視覚 写真や動画で視覚的に訴求しよう
感覚 視覚以外にも五感に訴えるキャンペーンを展開しよう
が大事であるとか、相手を魅了するには、
ストーリーを語る 言葉を尽くすよりシンプルで感動的な物語は効果が高い
共感する 相手の重大事に関心を寄せよう
信頼を得る 情熱的に、自分の価値観、信念をはっきり打ち出す
適切なメディアを使う 発信するメディアを適宜選ぶ
なんてことが大事だよ、という。それぞれのノウハウに主に欧米でのソーシャルメディアの企業活用例、成功例が紹介されている。
「バイラルの方程式」はクチコミの連鎖をとらえた広報戦略の考え方
(話をほかの人に伝えてくれた人の割合%)
×
(それらの人からの誘いが承諾された割合%)
×
(それらの人が誘いをかけた平均人数)=?
この計算で答えが1より大きければその話はバイラルに伝わる、という公式があるそうだが、具体的にそれがどういうものかというと、このニューヨークタイムズの7500記事を分析した研究者の論文の話がわかりやすい。感情を刺激する記事である。
・Social Transmission and Viral Cultur
http://opim.wharton.upenn.edu/~kmilkman/Virality_Feb_2010.pdf
畏敬の念、驚かせる記事、ポジティブな記事。そしてそれらについて人々がクチコミをしているのをみると、それをみたひとが一層興味が増して行動するものだという事実が、心理学的に証明されたそうである。
当たり前といえば当たり前だが、なかなかこれまでの企業組織内ではこういう面白い話をする人材が育たない。文章を書く能力があまり評価されていないからじゃないかという気がしてならない。ソーシャルメディアの時代には、デザイナーの地位とともに、ライターの地位ってもっと引き上げるべきだと思うなあ。重要なのだから。