Books-Internet: 2007年2月アーカイブ
KNNの神田敏晶氏が、Web2.0の次にくる変化を先読みした本。
神田氏はネットの黎明期から、Webを舞台にメディア(ビデオ配信、メールマガジン、ブログ)を立ち上げたり、コミュニティを運営したり、会社を経営したり、事件を起こしたりしてきた。だから、このままいけば未来はこうなると予想するだけでなく、こうあるべきだ、こういうのが面白いんだ、ということが書いてある。
個人的に、これからはプロとアマの垣根が一層なくなっていくという話が面白かった。人間の消費行動が変わるだけでなく、生き方が変わろうとしているということだから。
「ブロガーがプロにも対抗できるのは、「今言うべきことを今言っている」という、ジャーナリズムの基本定義を満たしていることに加えて、「独自に調べた一次情報」、「これまでになかった新しい見方」という、他人が読む価値のある文章の基本だと思われる二つの要素が含まれていることにあると思う。そして、アマにできてプロにできないことを「継続」するアマが出てきた時点で、プロの付け入るスキはなくなるのかもしれない。」
「今までは機会が与えられなかったアマチュアに比べて、組織に所属しているだけで機会を与えられていただけのプロというのは、徐々に食い扶持が減るかもしれない。真のクリエイティブを目指して実行してきた人には関係ないが、道具を持っているだけとか、コネがあっただけという人は、困るようになるだろう。」
これは学生時代にアマチュアとしてネットの世界に出てきて、今はプロをやっている(つもりの)私自身のこの10年間の意識と重なって強く共感した。所属しているだけのプロたちとの競争では負けたくなかった。アマチュアが活躍しやすい状況になってきているのはいいことだと思う。
プロかアマかと同じように、ウェブかリアルかという視点もある。
「しかし、次のウェブ3.0型社会においては、ウェブだけではなく、リアルな社会との相互の歩み寄りが非常に重要だl。単にデリバリーや効率化だけのネットワーク利用ではなく、ネットワークやウェブで構築された文化や社会を、リアルな社会へとリプレースする必要があるのではないだろうか。」
オンラインコミュニティのオフ会に行くと、ネット上のハンドルネームや人間関係をそのままリアルに持ち込んでいる状況がよくある。このときに普段の会社の名刺を交換して、その現実社会の関係性や階層性を反映させたら興ざめである。仮想世界の人間関係だって本物の関係であるという意味ではリアルなのだから。
ネット上で築いた人気や信用を使ってリアルの世界にステップアップするというのが、1.0的世界だったような気がしている。たとえば、ネットで書いていたライターであれば、雑誌ライターになる、本を書く、テレビに出演する、リアルなビジネスとして成功するというのが、アガリとされていた。つまりバーチャルで一旗あげてリアルに錦を飾るモデルである。
ここでいう3.0型社会というのは、そういう古い価値観を打ち破って、リアルとバーチャルがシームレスにつながって、区別の意味がなくなる状況を指しているのかなと思った。