Books-Fiction: 2011年3月アーカイブ
「ぼくが ラーメン たべてるとき
となりで ミケが あくびした
となりで ミケが あくびしたとき...」
前にこのブログで絵本「どんなかんじかなあ」を紹介したら、「感動しました」というレスポンスを多数いただきましたが、この絵本も大人の心に刺さってくる名作です。大震災後の危機の真っ最中の今、特に深く考えさせられるメッセージを持っています。
読み聞かせに使うと、大人の方が物語に引き込まれて黙ってしまい、子供に「どうしたの?」と聞かれるかもしれません。
ぼくがラーメンをたべてるとき、となりのまちの子供は何をしている?という語りのパターンで、同時刻の個の視点を並べていくことで、世界の本質を浮かび上がらせます。何気ない日常がいかに貴重なものか、こどもにも大人にも納得させる展開が見事です。
大人が読める子供向けの絵本ってよいですね。大人向けの絵本というジャンルもありますが、あざといものが多い気がする。本来は子供向けでありながら、大人にしか分からない深みを持つ作品こそ、大人の絵本の最高峰だと思います。
これはそういう稀な一冊です。
・どんなかんじかなあ
http://www.ringolab.com/note/daiya/2011/01/post-1364.html
「臨時の措置、と通知には書いてあった。五日間だけ、午後八時から一時間の停電になるという。天候が落ちついてきたので、吹雪でやられた箇所の復旧作業をするらしい。停電といっても、この道筋だけのこと。静かな並木道になっていて、ちょっと歩けばレンガの店先が何軒かならび、市電の停留所もある。夫婦が暮らして三年になる。」
アメリカの計画停電の話。
若い夫婦ショーバとシュクマールの住むマンションで、午後8時から1時間の停電が5日間続くという知らせが届いた。大学の研究者である夫と教育図書の校正をする妻。二人の関係は、子供の死産以来、冷めきっていて、家の中でも顔を合わせることが稀だった。
停電を機会に二人はロウソクを灯して向かい合い、一夜に一つずつ、お互いの秘密の打ち明け話をすることにした。夫婦の関係を修復するはずだった夜の会話の試みは、しだいにきわどい部分へと立ち入っていく。
上質な大人の海外文学Liteという味わいで楽しめる短編集。アメリカに住むインド人女性の視点で語る作品が多い。デビュー作にしてO・ヘンリー賞、PEN/ヘミングウェイ賞受賞作。
ジュンパ・ラヒリが気に入ったら映画『その名にちなんで』がおすすめ。
「ニューヨークとインドを舞台に、異文化で生まれ育った子供に、親から与えられた"名前"にまつわる涙と感動の物語」傑作ですよ。