Books-Fiction: 2010年4月アーカイブ
文学好きの友人がTwitterで 「大也さんが薦めてたので読んでみた。恒川光太郎「雷の季節の終わりに」面白かった。よくこんな難しい設定をこんなに少ないコトバで語れるなと関心した。」とつぶやいていたのを見た。
恒川光太郎「雷の季節の終わりに」
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004801.html
私がこの本を紹介したのは2006年のことであり、今頃読んだのかよ遅すぎだよと思う反面、おすすめした小説がほめられるととてもうれしい。おすすめしたノンフィクションや実用書がほめられるよりも数倍うれしい感じだ。文学趣味をほめられると全人格を肯定されたような気持ちになれる(勝手にですがね)から、なのだろう。
で、私が彼に言いたいのは最近のファンタジー作品では「月桃夜」(遠田潤子)が素晴らしいから無条件に読んでくれたまえということである。絶対損はさせないはずである。
「想いは人知れず、この世の終わりまで滾り立つ―。死んでもいいと海を漂う茉莉香に、虚空を彷徨う大鷲が語りかける。熱く狂おしい兄の想いを、お前はなかったことにできるのか?かつて二百年前の奄美にも、許されぬ愛を望んだ兄妹がいた...。苛酷な階級社会で奴隷に生まれた少年は、やがて愛することを知り、運命に抗うことを決意する。第21回「日本ファンタジーノベル大賞」大賞受賞作。 」
海で生死の境を漂う女の前に、二百年前に生きた男の化身である大鷲が舞い降りる。現実世界の「海のはなし」と異世界「島のはなし」が交互に出てくる構成が巧妙な、境界線上のファンタジー。とても悲しくて、とても美しい物語。無条件に読んでくれと言った手前、あまり詳しく語りたくないのでこのへんにしときますが、大変おすすめ。