Books-Fiction: 2009年6月アーカイブ

・やんごとなき読者
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凄く面白い。

やんごとなきエリザベス女王陛下が、読書にハマってしまったことに始まる王室の大騒動を描く。もちろんフィクション。著者は有名な劇作家のアラン・ベネット。英国では30万部のベストセラーとなった話題作。英国流の上質なウィットとユーモアを堪能できる喜劇である。

宮殿を訪れた移動図書館に女王陛下が入り込んでしまう。

「「陛下はどんな本がお好きですか?」女王は躊躇した。実を言うと、何が好きなのか自分でもよくわからなかったからだ。昔から読書にはあまり興味がなかった。もちろん人並みに呼んではきたが、本を好むなどということは他の人にまかせてきた。それは趣味の範疇であり、趣味をもつのは彼女の性質にふさわしくなかった。」

しかし女王陛下は趣味の読書に公務そっちのけでのめり込む。その内容について首相や訪問者に意見を求めはじめる。王室と上流階級は女王の真意を測りかねて大混乱。こんな事態になった責任は誰が取るのか、進退問題にも発展したりする。それでも平然と女王の読書三昧は続く。

「読書の魅力とは、分け隔てをしない点にあるのではないかと女王は考えた。文学にはどこか高尚なところがある。本は読者がだれであるかも、人がそれを読むかどうかも気にしない。すべての読者は彼女も含めて平等である。文学とはひとつの共和国なのだと女王は思った。」

高位の人間が知的であることの弊害をユーモラスに描いている。偉い人から自分が知らない高尚な趣味の世界の話題を振られると、どう答えてよいものか戸惑うことが最近あったが、やんごとなき御方は何事もほどほどにしておくのが周囲のためなのだという教訓を学べる。

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