Books-Education: 2010年10月アーカイブ

・iPadで教育が変わる
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中学受験進学塾の経営者でカリスマ講師の著者が、iPadを早速教育現場で実践してみましたというレポート。自分はITに詳しい人間ではないと最初に白状しているが、実践した経験を生徒の感想と合わせて、良い点も悪い点もオープンにしているところがよかった。仮説や予想ではなく迅速のフィードバック第一波なのだ。

実際にやってみた経験から、

・授業が紙の資料を使った時より早く終わってしまう
・画像や動画で子供たちの理解が進んだ
・子供たちが「紙に書かないとおぼえられない」という意見を出した
・小学校低学年には向かない
・見る、聴くに優れるiPad、書く、読むは課題
・重い紙の教科書を持ち歩かないで済む

などたくさんの事実や判断がでてくる。こどもたちの授業後のアンケート結果も公開されている。教員たちはデジタル教科書導入による負担の増加を不安に思っていたり、それらを使った理想的な授業を思い描けないでいることなどが明かされている。

本書でも紹介されているが、有識者が組織するデジタル教科書教材協議会では、次のような目標を掲げているそうだ。

デジタル教科書・教材の3つの目標と 10 の条件(試案)16
http://ditt.jp/about/aim

■デジタル教科書・教材で実現する3つの目標

全ての子どもに与えよう。
1 どこに住んでいても世界中の知識に触れる機会を。
2 創造力、表現力、コミュニケーション力を育む最高の環境を。
3 友人、先生、家族とつながる手段を。

■デジタル教科書・教材の機材が備えるべき 10 の条件

1 小学一年生が持ち運べるほど軽く、濡らしても、落としても壊れにくい。
2 タッチパネル。
3 8ポイントの文字がしっかり読めて、カラー動画と音楽が楽しめる。
4 無線でインターネットにアクセスできる。
5 学年別に全ての教科書が納まる。
6 作文、計算、お絵かき、動画制作、作曲・演奏ができる。
7 学校でも家庭でも使える。
8 学校でも家庭でも手に入れやすい価格。
9 電池が長持ちする。
10 セキュリティ・プライバシー面で安心して使える。

試案としてだいたいよいのではないかと思うが、本書の内容のように、今は実践とフィードバックで、方向性を探っていくことが大切なように思った。

デジタルハリウッドも参加する

電子書籍を活用した教育スタイル創造研究会
http://blog.study.jp/digitalbook/

という団体もあって、実践とフィードバックで研究している。

・ウェブで学ぶ ――オープンエデュケーションと知の革命
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梅田望夫氏とMIT教育イノベーション局シニアストラテジストの飯吉透氏によるウエブを使った開かれた教育=オープンエデュケーションの可能性に関する論考と対談。教育者が必読なのはもちろんだが、ITビジネスに関心のある人にもおすすめ。

梅田氏の本はよく読んできたし、進化論の信奉者なのだが、この本で遂に梅田3.0への進化を感じたのが次の一節である。米国で起きたことが日本に時間遅れで波及するという原則について語った部分。

ちょっと長く引用すると、

「しかし最近になって思うのは、「経済のゲーム」で牽引される娯楽(エンタテイメント)、メディア、ビジネス、コミュニケーション、生活の利便性向上(ショッピングなど)といった分野おおむねそうだと考えてよいのですが、どうも「知と情報のゲーム」については、これまで抱いていたアメリカ発「時間遅れ」普及仮説が働きにくい、ということなのです。

そしてそれは、「知と情報のゲーム」のけん引力となっている信念が、欧米の「表現の自由」「学問の自由」「教育を受ける権利」といった人権思想や民主主義思想、特にアメリカ建国以来の思想を強く踏まえてのものだからです。普遍を身にまとってはいても、この信念は欧米近代以来のイデオロギーそのものと言えます。ですから、「知と情報のゲーム」については、「アメリカで起きることは「時間遅れ」で他の国々でも起こるだろう」という仮説から離れなければならないと、いまは考えるようになりました。」

梅田氏は、かつて「ウェブ進化論」で自らが予言したような2.0化が日本で起きないことに「日本のウェブは残念」といって、日本のネットコミュニティで顰蹙を買ってしまった事件があった。その残念だと嘆いたのが、まさに例外の分野だったのだと思う。

オープンコースウェアの実態、教育向けのマネジメントシステム(しかもオープンソース)、オンラインの高等教育機関、メタユニバーシティとクラウドカレッジ構想、iPadの活用状況、など、多くが初耳の米国の教育の最新動向がびっしり詰まっていた。

オープンエデュケーションとは、オープンテクノロジー、オープンコンテンツ、オープンナレッジの3つの要素からなる。ウェブで教育資源を誰もが使えるようにすることで、いま起きつつある変革について書かれている。

世界の一流大学と同じシステムやコンテンツ、ノウハウが誰でも自由に使えるというのは、凄いチャンスだと思った。つまり誰でもウェブ上で大学のようなものを作れるということではないか(入学者がいるかどうかはともかく)。メーリングリストやSNSのグループを作る感覚で、個人が大学をボコボコつくりだしたら、ブログと一緒で珠玉混交だろうが、中には凄いのも現れるのではないか。

たとえばこの著者の二人による梅田・飯吉教育大学とかあったら入学してみたいなあ。

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