Books-Education: 2010年8月アーカイブ
・ホワイトハウス・フェロー―世界最高峰のリーダーシップ養成プログラムで学んだこと
「ホワイトハウス・フェロー制度は、アメリカに存在する研修制度のなかで明らかに最良のものだ。世界で最も優れた研修制度と言ってもいいかもしれない。この表現はまったく誇張でない。私たちフェローがどういう経験をするか考えてみてほしい。私たちはアメリカ政府の中枢で一年間過ごす。どこへでも好きな場所に出張し、誰でも好きな人物と会える。週に三日はアメリカの最重要人物たちと食事をし、質問したいことはなんでも質問できる。こんな制度は世界のどこにもない。まったくない。」元国務次官補、元ホワイトハウス・フェローのダニエル・サリバンの言葉
とてつもなく厳しい選考試験で選ばれたアメリカの若きエリート十数人が、一年間、政府の最高レベルの中枢で働く機会を得る。彼らは大統領や省庁のトップを補佐しながら、本物のリーダーシップを学ぶ。
研修期間終了後フェローたちは政府や民間から引く手あまたであり、多くが若くして要職についている。フェロー時代につくったVIP人脈とフェロー同士のつながりが、彼らの人生を強く後押しして行く。米国のエリート高速道路の最たるものだ。
ホワイトハウス・フェロー制度で、二十五年間、最終選考会「セレクション・ウィークエンド」に関わった委員によると、審査では、
第一に明晰な文章力、第二に協調性、第三に自己中心的でないこと
の三つの資質を注意してみていたそうだ。一つめは、明晰な文章を書く人間は明晰な思考能力を持っているからだそうだが、意外にも二つめと三つめは人間的な資質が問われている。能力の優秀さは選抜過程で十分に証明されているから、あとは人間性を、ということなのかもしれない。
コリン・パウエルを補佐したフェローは、「ワシントンには、頭のいい人間などいくらでもいる。大事なのは、人々にどういう感情をいだかせるか。リーダーが成功するかどうかのカギを握るのがその能力だ。自分の有能さを見せつける必要などない。リーダーに必要なのは、部下とコミュニケーションを取り、部下のやる気を引き出し、部下に気を配り、参加意識を持たせることだと、パウエル長官は教えてくれた。」と語っている。
元フェローたちが大統領や要人たちから学んだことが、彼らが体験した緊張と感動のエピソードとともに、たくさん紹介されている。やはりそこには非凡なリーダーがいるからなのだろうが、ホワイトハウスのオーラも関係がありそうだ。『教育力』で斉藤孝氏が「教育の根底にあるのはあこがれの伝染である」と書いていたが、学ぶ側の高揚感、緊張感というのはなににもまして教育効果を高めている気がする。
・教育力
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/04/i-1.html
・ホワイトハウスの職人たち
http://www.ringolab.com/note/daiya/2006/11/post-486.html
・ホワイトハウスの超仕事術―デキるアシスタントになる!
http://www.ringolab.com/note/daiya/2006/08/post-432.html