Books-Education: 2008年6月アーカイブ
面白かった。
「レールのない時代である現代をサバイバルするには、一生学びつづけることが必要だ。では、自分の志向性に合った学びの場をどこに見つけていったらいいのか? 本書は、志ある若者が集った幕末維新期の「私塾」を手がかりに、人を育て、伸ばしていくにはどうしたらいいのかを徹底討論する。過去の偉大な人への「私淑」を可能にするものとして、「本」の役割をとらえなおし、「ブログ空間」を、時空を超えて集うことのできる現代の私塾と位置づける。ウェブ技術を駆使した、数万人が共に学べる近未来の私塾にも言及し、新しい学びの可能性を提示する。 」
尊敬する人物を人生の師匠として設定するのが好きであると同時に、情報発信の結果として自身も塾長的な存在になってしまうという点でも「私塾体質」という点が共通する二人のダイアログ。
共通点が多い二人だが、読者とのつきあい方の部分で意見が大きく分かれて、二人の心理構造の違いが明確になった。有名ブロガーである梅田氏は丁寧にウェブ上の読者のコメントを読み、ときに反論する。一方の齋藤氏はフィードバックに対して積極的ではない。
「
梅田 本に対する反応、たとえば読者はがきなども読まないですか?
齋藤 はがきは読みます。ただし、編集部に、あらかじめ、悪意のある批判などが書かれたものはカットしておいてくださいと言ってあります。ブログだとそうした声が満載でしょう。
梅田 ブログだと、誰かがすすめていたからと、リンクをたどってやってきた人が見ます。だから、「あなたに向けて書いたんじゃない」という人も反応してきます。「出会い頭の言いがかり」に遭ったりする(笑)。そこが面白い。その面白さにはまっています。」
齋藤氏は批判に対して、とても敏感で怖がりだ。一方、ネットで耐性を持っている梅田氏は余裕がある。こんなコメントもしている。
「梅田 こちらは、ある程度名前も知られていて自分の名前で仕事をしている人間だけど、そこにコメントしてくる人というのは、まだ何ものにもなれていない一人の人である可能性が高いでしょう。僕がその人に対して、非常に強く戦いを挑んだら、勝つかもしれないけど、相手は本当にダメージを受けてしまうかもしれない。だからそれは絶対にしません。」
しかし、次々に同時代的にウケる本を生み出してきた齋藤氏が、読者の反応を無視しているとは思えない。そうではなくて、齋藤氏の心の中には、とても厳しいバーチャル読者が無数に住んでいるように思える。怖がるのは強く意識していることの裏返しである。だから、現実の批判的コメントを読むまでもなく、フィードバックを自己完結できるのじゃないかと思った。
二人とも「不遇の20代」を告白している。そのまだ固まっていない時期に、ある種世間からイジめられたことで、批判に対する敏感な感性が養われたのだろう。そして、そのルサンチマンを社会に向けた創造性に昇華した。新しい話のようでいながら、実はかなり普遍的な人生論だ。
二人がこの本で追求しているのは、自分が成長できるフィードバック環境をいかにつくるか、現代において何を励みやプレッシャーにして生きていくべきか、である。それを二人が自身の成功体験ベースで語っている。
生き方を考える上で非常に勉強になった。20代の人に強くおすすめ。