Books-Education: 2006年5月アーカイブ
続出する企業の不祥事の中で、CSR=企業の社会的責任やコンプライアンス=法令順守という言葉が注目されている。
EUホワイトペーパーにおけるCSRの定義は以下の通り。
「
持続可能なビジネスの成功のためには、社会的責任ある行動が必要であるという認識を、企業が深め、事業活動やステーク・ホルダー(利害関係者)との相互関係に、社会、環境問題を自主的に取り入れる企業姿勢である。
」
ここで大切なのが自発性だと著者は述べている。企業の社会的責任は、法律で規制されているからだとか、守らないと企業イメージが悪くなって業績に響くから、などという受身の姿勢で果たす責任ではない。社会的責任を果たすために企業があると考えるべきなのだ。「ハンドブックを読んで気をつけましょう」という種類の問題ではなく、それはトップ経営者の自覚と倫理観にまでさかのぼるものであるはずだ。
この本は、江戸時代のアマチュア学者 石田梅岩の商人道の思想から、現代の企業経営の在り方を問い直す。石田梅岩とその門弟の著書を現代語訳して、著者が平易な解説をつけている。原文は問答形式だから考えながら読みやすい。
石田梅岩の教えは、倹約や誠実さが大切だとする。長い眼で見るとそうした企業が繁栄し、世の中全体が良くなるというもの。当時の商人に人気があったのは、企業は正しいやり方でどんどん儲けて社会にそれを還元していきなさいという利益の正当性をうたっていたからである。何のための金儲けかという問いに明確な答えを出し、上位階級の武士に対して、商人にプライドをもたせる道であった。
資本の論理と倫理のバランスをどうとるか。江戸時代に既に考え抜いた学者がいた。とてもシンプルでわかりやすい。会社は誰のものか、経営者はどうあるべきか、のそもそも論を根底から考えてみたい人におすすめ。
・会社は誰のものか
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003567.html
・お金に「正しさ」はあるのか
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003807.html