Books-Education: 2005年1月アーカイブ

・アメリカ 最強のエリート教育
4062722925.09.MZZZZZZZ.jpg

■少数エリートの米国、まだまだ横並びの日本

日本経済新聞が発表した2004年3月期の日米上場企業報酬調査が紹介されていた。結果は「主要百社の従業員の平均給与は年間で八00万円、役員報酬はその4倍。米有力企業の経営トップの報酬は平均で九億円とされている」であるとのこと。だいたい日本の一般労働者と大企業社長の給与格差は20倍程度であるのに対して、アメリカでは200倍以上の格差になるという。

米国でのこの大きな収入格差は人生の早い時期にだいたい決まってしまうという。

それには、

・名門の家柄出身である
・私立のプレップスクールに通う
・アイビーリーグなど一流大学を卒業する
・トップクラスの専門職大学院を卒業する

といったことが強い条件となる。

米国というと自由競争、能力主義の国という印象が強いが、エリート中のエリートについては、実態は必ずしもそうなっていないようだ。年間2万ドル、3万ドルの私立校の学費を支払える家庭から、生え抜きのエリートが登場している。

アメリカの公立中学、高校は学区制であるが、教育レベルの差は地域によって歴然とした差があるらしい。これは学校運営の財源が学校区の固定資産税でまかなわれるためで、裕福層の住む学区は財源が豊かで質の高い教育が提供される。これに対して低所得者層の多い地域では日常的にドラッグや学校内犯罪が蔓延しているとのこと。

頂点と底辺の格差が早い段階で決まってしまうため、一部の極めて優秀な例外を除いて、ふたつのグループが競うことはない。これに対して日本では、特に高度成長期には大学を出ていると大抵は課長に昇進できだし、50代くらいまでは誰が部長や役員になるかが完全には分からず、出世競争が長く続くということが指摘される。

米国人のいう平等は「機会平等」でチャンスは誰にでもあることを意味するが、日本人にとっては「結果平等」であるという違いがある。だが、結果の格差の大きさを見ると、米国の機会平等はかなり過酷なものであることがうかがえる。

■アイビーリーグ、ザ・テン・スクールズ、専門職大学院

「アイビーリーグ」という言葉はよく聞くが具体的には以下の8大学を指している。この本には私立の名門高校「ザ・テン・スクールズ」もリストが掲載されていた。

アイビーリーグ
 ・ハーバード大学
 ・イエール大学
 ・ペンシルバニア大学
 ・コロンビア大学
 ・プリンストン大学
 ・ブラウン大学
 ・ダートマス大学
 ・コーネル大学

ザ・テン・スクールズ(7,8割は寄宿舎生活)

 ・チョート・ローズマリー・ホール
 ・ディアフィールド・アカデミー
 ・ヒル・スクール
 ・ホッチキス・スクール
 ・ローレンスビル・スクール
 ・ルーミス・シャフィー・スクール
 ・フィリップ・アンドーバー・アカデミー
 ・フィリップス・エグゼクター・アカデミー
 ・セント・ポールズ・スクール
 ・タフト・スクール

これにビジネススクール、ロースクール、メディカルスクールの専門職大学院のトップクラス数校が、エリート養成装置として機能しているという。

この超エリート層には、自分たちが社会の各分野をリードしなければならないという責任感と、ノーブレスオブリージュ(高い地位や身分に伴う義務を果たす意識)という価値観を持ち、決して威張らず謙虚に振る舞い、社会に貢献する活動に情熱的に取り組む人たちも多いという。

この本で著者はエリート層との華麗なつきあいを次々にと披露して実体験に基づく話をたくさん提示している。関係があるが故に、米国の最強エリート層は抜群に頭がよくて、人柄も優れている、非の打ち所がないと、美化しすぎな部分を感じるが、日米の寄付金の比較や、トップ大学のノーベル賞受賞者の在籍率などを見ると、確かにそうした面はあるのかもしれないと思った。日本のエリートというのは高い地位を約束した社会に対して、責任を果たしていない。

ただ、日本の場合、米国のような本物のエリートが誰なのか分かりにくいという面がありそうだ。名門高校と東京大学くらいは、ああ、エリートだなと分かるわけだが、決定打ではないし、米国ほどのバリエーションもない気がする。また、日本の場合、エリートは官僚や大企業の幹部候補になるわけだが、トップに到達するまでにはかなり長い時間がかかる。組織の頂点として目立つ期間が短いせいか、あまり目立っていないイメージだ。

この本は米国のエリートが受けている教育について、ちょっとミーハー視点で総括する。著者の思い入れが偏っているような気もするが、情報としては結構、面白い本だ。米国人が自己紹介したときに、ちゃんと反応してあげるべき?キーワードが参考になった。

このアーカイブについて

このページには、2005年1月以降に書かれたブログ記事のうちBooks-Educationカテゴリに属しているものが含まれています。

前のアーカイブはBooks-Education: 2004年9月です。

次のアーカイブはBooks-Education: 2005年2月です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

Powered by Movable Type 4.1