Books-Economy: 2012年11月アーカイブ
日本のメーカーの人たちはこれを読んで何を思うだろうか?。
『フリー』『ロングテール』のクリス・アンダーソンが書いた次世代のトレンドは21世紀のメーカー革命。コンピュータと3Dプリンターによって製造手段が民主化し、クリエイティブな人々が、これまで大企業でなければ生産できなかったような"モノ"をつくり始めると予言する。
「有能な少数の人々がインターネット接続とアイデアだけで世界を変えるというイメージは、製造業にも当てはまるようになってきた。」
ネットによって需要のロングテールが実現された次は、供給のロングテールへと向かうという点で著者のビジョンは前著からちゃんとつながっている。
「これまでの10年は、ウェブ上で創作し、協力する方法を発見した時代。これからの10年は、その教訓をリアルワールドに当てはめる時代。」
製造手段を支配するものが権力を持つ時代が終わったという。本書に紹介される3Dプリンターやソフトウェアを使えば、数十万円程度の予算で、自分が思い描く家電や家具、さまざまなガジェットを製造してネットで販売できてしまう。
そして数百万人というマスマーケットではなく、目の肥えた数千人のニッチ市場に提供される製品が工業経済を根本から変えていく。ビット経済よりもアトム経済のほうがはるかに大きい(アメリカではビット経済が20%くらい)。ソフトウェアと情報産業の雇用は人口のほんの数パーセントに過ぎない。デジタル革命に続くこのメイカーズの革命が起きるならば、世界の経済へのインパクトはとてつもなく大きい。もちろんこれまでの製造業者は考え方を変えなければならない。
「本当のウェブ革命は、豊富な品ぞろえから品物が選べるようになったことではなく、僕たちが自分のためにものを製造し、それをほかの人たちにも利用できるようになったことにある」
テクノロジーの進歩によって、私たちが制作可能になるのはモノだけではない。ナノとバイオの技術によって、臓器や器官、生物までをも創造できるようになるかもしれないという。
設計図を入れてボタンを押せば万物を生み出す"レプリケーター"のビジョンはミチオ・カクの『2100年の科学ライフ』にも出てきた。この分野は進歩が激しいみたいだ。
2100年の科学ライフ
http://www.ringolab.com/note/daiya/2012/11/2100.html
もちろんマスプロダクションの世界が消えるとは思えない。私たちは多様だけれども共通する部分だってとても大きい。大量生産で低価格の生産ニーズは相変わらず大きいはずだと思う。だから、すべてがロングテールでパブリックでフリーにシェアされる、わけではないのと同様、すべてがメイカーズにはならないと思うが、他の著作と同様にグローバルのベクトルを今回もわかりやすく語っている。クリス・アンダーソン、すごい人だなと改めて思った。
kindleで読書。