Books-Culture: 2013年5月アーカイブ

・バートン版 カーマ・スートラ
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古代インドの性愛の聖典カーマ・スートラ。高尚な文学作品から怪しげな大衆誌まで、広く引用されるカーマスートラであるが、実際に原典を読む人は少ないのではないかと思って読んでみた。大変面白い刺激に満ちていた。

「人間は、人生百年のさまざまな時期に、ダルマ、アルタ、カーマを実践すべきだが、この三つは調和を保って、おたがいに衝突しないようにしなければならない。幼少時代には学問を身につけ、青年期と中年期にはアルタとカーマに専念し、老年期にはダルマを成就すべきで、こうしたモタシャの獲得に、いいかえれば、輪廻から解放されるように努力しなければならない。」

ダルマ(法)、アルタ(利)、カーマ(愛)。カーマの真髄がこのカーマスートラに書かれているという。どんなことが書いてあるのか?

まず最初に性器の大きさと欲望と情熱の強さによる男女の組み合わせが定義される。男性器は大きさにより兎男、牛男、馬男の三階級に分類される。女性器は、鹿女、馬女、象女に分類される。性欲と情熱の強さは弱、普通、強がある。性器の大きさ別で9通りの組み合わせ、性欲と情熱の強さでも9通りができる。性器の大きさが一致する3種類を等結合、異なる6種類を不等結合と呼び、それぞれに性交時に持ちうるべき技巧が異なっている。

パターンに分類して語るというのが、カーマ・スートラの基本となっている。技巧として挿入の他に、抱擁(接触抱擁、貫通抱擁、摩擦抱擁、圧迫抱擁)、接吻(形式接吻、鼓動接吻、接触接吻、直線接吻、傾斜接吻、上向接吻、圧迫接吻)、口淫(男色の文脈が多い)があるのはわかるが、ひっかき、愛咬(噛むのだ)、愛打(叩く)、針で刺す、殴るなどもあって激しい。

個別の技巧が真面目なものもあるが、現代に読むと愉快なものも多い。たとえばキスのテクニックはこうだ。

「接吻するときには、どちらが先に相手の唇をとらえるかについて賭けるのもよい。女が負けた場合は、泣くふりをして手で恋人を払いのけ、彼に背を向けて「もう一度賭けましょう」とすねてみせるべきである。二度目も負けたら、さらに悲しそうな顔をし、恋人が警戒をゆるめるか眠るかしたら、彼の下唇をおさえて、逃がさないように歯で加える。」
実に楽しそうだ(笑)。

情事に際して男は女の出身地別に応じた喜ばせ方をしなければならない、として出身地別の女の悦ばせ方も挙げられている。

カーマ・スートラは実はモテ方、彼女(彼氏)の作り方指南書でもある。これが結構トンデモない。妻の獲得方法として、現代では明らかに違法な方法論も多数のべられている。たとえばお祭りの日に娘の乳母を買収してお目当ての娘に薬を飲ませてさらい、寝ている間に肉体を楽しめ、やってしまえばこちらのものだから、あとは結婚するだけ、なんて方法論が何十個も並べられていてびっくりする。

このGW中はまんがで読破シリーズで難解本の概要を楽しむことにした。

・純粋理性批判 (まんがで読破)
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カントの純粋理性批判は長年の積読書である。もう10年くらい書庫に放ってある。いつか必ず読むつもりなのだが、いつなのかは不明だ。とりあえずまんがで概要を読めたのはうれしい。西洋哲学の伝統をコペルニクス的に展開させた批判哲学。

まんがで読破シリーズ中でも、さすがに本書は難解になっている。本シリーズは古典の内容に忠実に漫画化するもの(小説に多い)と、古典を解説する現代を舞台にした漫画化との2パターンがある。純粋理性批判は後者である。哲学に詳しい女性教師が、生徒会の哲学好きな学生たちに教えるという形をとっている。

従来の「認識は対象に従って規定される」を「対象が認識に従って規定される」と想定してみたのがコペルニクス的転回なのよ、とか、カントは認識をア・プリオリな認識とア・ポステリオリな認識の二つにわけていたのよとか、先生が生徒にカントの基本を教えているコマが多い。本シリーズとしては、とにかく文章量が多いのが特徴だ。漫画のよさをあまり活かしきれなかったかもしれない。ただ説明文章はちゃんと選ばれていて、カントの哲学の要約にはなっていると思った。


・ツァラトゥストラかく語りき (まんがで読破)
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2冊目。うーん、しかし、これはダメだな。原作と違う。物語性を高めて原作に興味を持たせるというのはいい作戦なのだが、これでは違いすぎるので、物語的ではない散文の原作を読んだらうんざりしてしまうだろう。

・死に至る病 (まんがで読破)
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3冊目。キェルケゴール

「絶望とは、人間の精神のみが患う病である。時は19世紀のヨーロッパ。社会や個人への不安を抱え、自己疎外に陥った人々の魂の救済、精神の教化と覚醒のため、哲学者キェルケゴールの探求が始まる―。21世紀、今も私たちをとらえて離さない「死に至る病」を、現代の視点から綴ったオリジナルストーリーと絡めて漫画化。」

悩める現代の少年に哲学に詳しい叔母さんが死に至る病の内容を教えるという形でわかりやすく解説している。キェルケゴールの人生についても言及しており、なぜそうした哲学思想を持つにいたったかも知ることができてよかった。

というわけで、このシリーズは外れもあるが結構よいものも多い。また読んでみよう。

・まんがで読破『カーマ・スートラ』『死者の書』『我が闘争』
http://www.ringolab.com/note/daiya/2013/04/post-1792.html

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